不動産業界の「AI」活用事例。営業や管理など仕事は失くなるのか?【不動産×テクノロジー】
今や一般的な言葉としても定着しつつある「AI」。日本語では人工知能ともよばれていますが、ビジネス業界を中心にさまざまな分野で活用が進んできています。しかし、不動産業界においては親和性があるとイメージしづらい方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、不動産業界においてAIはどのように活用できるのか詳しく解説するとともに、不動産業界における今後の展望なども併せて紹介していきます。
AIとは?

まずは、そもそもAIとは何なのかということから詳しく解説していきましょう。
AIとは「artificial intelligence」の頭文字をとった略称であり、日本語では人工知能と直訳されます。コンピュータの進化とともに処理能力が向上し、高度な情報処理が可能になってきた背景があります。
一口にAIといってもさまざまな用途があり、言葉を理解する自然言語処理、画像を読み取る画像認識など、その種類は多岐に及びます。なかでももっとも象徴的なのは、人間の思考回路のような役割を果たす“推論”です。一定の条件のもとでそれに合致する事柄を選択したり、判断したりすることが可能で、これは従来のコンピュータでは実現が難しかったものといえるでしょう。
現在、世の中にはAIのテクノロジーを使ったさまざまなサービスや商品がありますが、いずれも上記で挙げた役割を複数組み合わせて作られています。また、不動産業界においてもAIは多様な用途に活用できると考えられます。
不動産業界にAIは活用できる?

AIの特徴的な機能として「推論」というものがあります。その名の通り、人間のようにある一定の手がかりをもとに物事を推測していくことを指しているのですが、これには「ディープラーニング」という技術が欠かせません。
ディープラーニングとは、大量のサンプルデータをもとに傾向を分析して推論し、それを繰り返しながらコンピュータ自らが学んでいくというものです。まるで人間の赤ちゃんが成長過程において言葉を見聞きしながら覚えていくのと似ています。
ここで、この推論という機能を不動産業界に置き換えて考えてみましょう。不動産業を営むなかでもっとも多いのは、来店した顧客に対して賃貸物件の希望をヒアリングし、それにマッチする物件を提示することです。予算やエリア、駅からの距離、駐車場の有無など、さまざまなリクエストがあると思います。これらの条件を一つずつヒアリングしていき、それらの条件を兼ね備えた物件を提示するという意味では、AIの推論は大いに役立つのではないでしょうか。
また、物件の売買などにおいても、過去に類似した条件のもとで見積もり価格を提示したりする際にもAIは大いに活躍できるはずです。
不動産業界は特に春にかけて多くの顧客が訪れます。なかには店内が混雑して長時間待たせてしまうこともあるでしょう。そのような場合であっても、AIによって物件の希望条件をヒアリングしたり候補物件を提示できるシステムがあれば、人手が足りなくてさばききれないということもなくなるのではないでしょうか。
AIを活用した不動産業者の事例

実際にAIを不動産業に活用した事例をいくつか挙げてみましょう。
AIチャットによる物件紹介
インターネットで事前に候補物件を探してから来店する方も多いですが、不動産事業者によってはインターネットに掲載していない物件もあります。その場合は、やはり店頭に来店してもらう必要がありますが、人手不足を解消するためにAIチャットの活用が有効です。
まるで人と会話しているかのような自然なやり取りが可能であり、さらには会話のやり取りの内容を記憶しておくことによって、その後の提案精度も向上していきます。
ちなみに、物件紹介のシステムそのものはAIの推論機能を使って提供されますが、口頭での会話による案内を実現する場合は自然言語処理の機能が必要不可欠です。
物件価格のシミュレーション
所有している不動産を売却したいという方が来店した場合、物件価格のシミュレーションにAIを活用する事例もあります。
不動産の物件査定は他の物件から推測したうえで、今後どのように資産価値が変動していくかを見極めなければなりません。今後の予測という意味においてはAIのディープラーニングを活用すれば精度の高い結果が導き出されるのではないかといわれています。
顔認証システムによるロックで内見の効率化

不動産業者にとって大きな業務負担となるのが内見です。賃貸物件を借りる側にとっても、いくつか複数の物件をまわったうえで判断したいものです。そのため、せっかく時間をかけて内見を案内したにもかかわらず、結果的に成約に至ることはなかったというケースは珍しくありません。
そこで、顔認証システムを活用した施錠システムをうまく活用することで効率化に貢献できるかもしれません。大きなマンションなどにおいては暗証番号またはカギによる施錠をしていますが、今後本人でなければ解錠できない顔認証システムも登場してくると言われています。賃貸物件の内見の際には、事前に顔写真を登録し、本人が行くだけで内見が可能なシステムに活用することも考えられます。
不動産業界のAI活用で仕事の仕方が変わる?

不動産業界はこれまで、賃貸物件の候補を案内したり、不動産価格の査定、内見の案内など属人的な業務が多い傾向にありました。現在はインターネットが普及して事前に候補物件を絞ったうえで来店する方も多いですが、それでも属人的な業務は減っておらず、従業員の負担は依然として大きい状態です。
今回紹介してきたように、AIを活用することによって不動産業界の業務は劇的に改善し、働き方改革を実現できるようになります。たしかに有資格者でなければできない業務も多いですが、「どうせできない」と諦めるのではなく、どうしたら働き方を変えていけるかという考え方にシフトしていく必要があるはずです。
不動産業界に限らず、日本国内のあらゆる業界において進められている働き方改革。時代に取り残されることなく旧態依然とした働き方を変えるためにも、ぜひAIをはじめとしたテクノロジーを積極的に活用していくことを前向きに考えてみましょう。