ペット可賃貸の需要は本当に高い?空室対策・家賃アップ・リスク対策まで徹底解説

自身の物件をペット可賃貸に転換することを検討するオーナーが増えています。需要の実態、収益改善の可能性、リスクと向き合うルール設計、さらにIoTを活用した管理効率化まで、判断に必要な情報を本記事にまとめました。
ペット可にすると空室対策として有効なのか
ペット可物件が空室対策として有効とされる背景には、国内の犬・猫の飼育数の多さがあります。一般社団法人ペットフード協会の「令和7年(2025年)全国犬猫飼育実態調査」によると、2025年時点で犬の飼育頭数は約682万頭、猫は約884万頭と推計されており、合計で約1,566万頭にのぼります。
さらに、同調査では犬の飼育世帯率は約8.5%、猫は約8.4%となっており、単純合算はできないものの、一定数の世帯がペットと暮らしている実態が確認されています。
このように、賃貸住宅においても無視できない規模の需要が存在していることが、ペット可の有効性の根拠となります。
空室が長引く物件ほど検討価値が高い理由
空室期間が長期化している物件は、すでに立地や築年数といった基本条件で競争力が弱まっている可能性が高く、通常の募集条件では改善が難しい状態にあります。こうした場合、ターゲット層そのものを広げる施策が必要です。
ペット可に変更することで、これまで対象外だったペット飼育世帯を取り込めるようになります。前述の通り、犬・猫だけでも合計1,500万頭規模の市場が存在しており、潜在的な入居希望者層は決して小さくありません。条件変更のみで新たな需要にリーチできる点は、リフォームなどと比較してコスト効率の高い施策といえます。
駅距離や築年数の弱みをカバーしやすいケース
駅からの距離が遠い、築年数が古いといった物件は、一般的には競争力が低くなりがちです。しかし、ペット飼育者の住まい選びでは、駅距離や築年数よりも「広さ」や「周辺環境(散歩しやすさ)」が重視される傾向があります。
そのため、従来は弱点とされていた条件が必ずしもマイナスに働かず、比較検討の土俵に乗りやすくなります。結果として、これまで埋まりにくかった物件でも入居検討の対象となり、空室解消につながる可能性があります。
募集条件の見直しだけで効果が出る物件・出にくい物件
ペット可にする際には、一定の条件設定も重要です。例えば、原状回復費用のリスクを踏まえ、「敷金を1カ月分追加する」といった対応が一般的に行われています。こうした条件を設定することで、オーナー側のリスクを抑えつつ募集が可能になります。
ただし、すべての物件で効果が出るわけではありません。専有面積が極端に狭い物件や、防音性が低い構造では、騒音や臭いに関するトラブルが発生しやすく、結果的に入居者満足度の低下や早期退去につながるリスクがあります。
ペット可賃貸で見込める収益改善
ペット可への転換は、単なる「空室を埋める手段」ではなく、収益構造を改善するオプションでもあります。家賃の引き上げ、敷金の積み増し、そして空室損失の圧縮という三つの軸から考えると、効果をより正確に見積もれます。
家賃を上乗せしやすい理由
ペット可物件は供給が限られている一方で一定の需要があるため、家賃を上乗せしやすい傾向にあります。ペットを飼育している、もしくは飼育を希望している入居者にとっては「ペット可」であること自体が物件選びの前提条件となるため、多少の賃料差があっても選ばれやすい傾向があります。
また、ペット可物件は原状回復費用や設備劣化のリスクが相対的に高くなるため、そのリスクを賃料や初期費用でカバーするという考え方も一般的です。実務上は、通常賃料に対して数%〜10%前後の上乗せ、もしくは敷金を追加するといった条件設定が多く見られます。
さらに、ペット可物件は「代替が効きにくい」という特徴もあります。駅距離や築年数といった条件は多少妥協できても、「ペット可かどうか」は入居可否に直結するため、競合物件が限られる分、価格競争に巻き込まれにくいでしょう。
そのため、エリア内でペット可物件が少ない場合や、ファミリー向け・広めの住戸などペット飼育ニーズと相性の良い物件では、相場よりも強気の賃料設定でも成約に至るケースがあります。こうした需給バランスを踏まえれば、ペット可は単なる条件変更にとどまらず、収益改善にもつながる施策です。
敷金積み増し・クリーニング費設定の考え方
先述のとおり、ペット可物件では、通常の敷金に加えて家賃1〜2カ月分の積み増しを設定するケースが標準的です。「ペット保証金」として別途預かるケースもあります。
退去時のクリーニング費については、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」においてペット飼育による汚損は借主負担とされているため、特約で明記することで費用回収の根拠を明確にできます。臭い専門のクリーニングは通常のハウスクリーニングより高額になる場合があり、初期の費用設計は実績ある業者に見積もりを取ったうえで行うのが賢明です。
ペット可物件のデメリットとリスク
ペット可への転換を躊躇させる最大の要因は、退去後のコスト増大と入居中のトラブルです。リスクの実態を正確に知ることが、過度な不安を取り除く第一歩になります。
傷・におい・抜け毛による原状回復費用
ペットを飼育していた物件の退去費用は、一般的に「家賃+10〜20万円」が相場とされています。1DKクラスであれば10〜20万円が目安ですが、壁・床全面の張り替えが必要になると50万円以上になることもあります。
ただし、これはペット可にしたからこそ「正式な費用回収」ができる状態です。ペット不可物件での無断飼育の場合、実際に発生した費用は同水準かそれ以上であるにもかかわらず、法的な回収が難しくなるケースもあります。あらかじめ敷金を適切に設定し、特約で負担割合を明記しておくことが、損失をコントロールするうえで最も有効な手段です。
鳴き声や共用部マナーによる近隣トラブル
ペット可物件で懸念されやすいのが、鳴き声や共用部でのマナーに関する近隣トラブルです。具体的には、犬の無駄吠えによる騒音、廊下やエントランスでの糞尿処理の不徹底、エレベーター内でのトラブルなどが代表的な例として挙げられます。こうした問題は入居者同士のストレスにつながりやすく、管理対応の負担が増える要因にもなります。
無断飼育や多頭飼いをどう防ぐか
条件を明確に定めないまま「ペット可」にすると、届け出なしの多頭飼いや、許可していない大型犬・爬虫類の持ち込みが起こりやすくなります。契約書・特約への明記と、定期的な状況確認(写真の提出要求など)を組み合わせることで、実態把握と早期対処が可能になります。
ペット可で失敗しないためのルール設計
需要を取り込みながらリスクをコントロールするには、「ペット可」という条件の解放と同時に、飼育ルールの明文化が欠かせません。後から追加しようとすると既存入居者との合意形成が難しくなるため、転換時に一括して整備することが重要です。
飼育できる種類・頭数・サイズを明確にする
「犬・猫可」としていても、大型犬まで含むかどうかで騒音・臭い・床への負担が大きく変わります。「小型犬1頭まで(成犬時体重10kg以内)」「猫1頭まで(多頭不可)」のように数値で定義することで、入居審査・トラブル発生時の判断基準が明確になります。
ペットの種類・品種・写真の提出を義務付けることも、子犬・子猫のうちは小さく見えるケースへの備えとして有効です。
契約書・特約で定めたい項目
口頭での確認だけでは後々の紛争リスクが残ります。以下の項目を特約として契約書に盛り込むことで、退去時の費用負担から日常のマナーまでを法的根拠のあfる形で管理できます。
退去時クリーニング費用の負担
ペット飼育による消臭クリーニングは、通常のハウスクリーニングと費用構造が異なります。国交省ガイドラインに基づき「ペット飼育が原因の場合は借主負担」と特約で明記したうえで、金額の目安または上限を記載することが望ましいです。
原状回復の範囲
爪痕・かみ痕・尿染みなどペット特有の損耗については、経年劣化の対象外として借主負担とする旨を明記します。修繕に至った原因がペットによるものかどうかが入居後の争点になりやすいため、入居時の現況写真もあわせて保管しておくことが重要です。
共用部の利用マナー
エントランス・廊下・エレベーターでの抱きかかえや、ふんの即座の処理・持ち帰りを義務化する文言を特約に加えます。違反時の対応手順(警告→措置)も記載しておくと、事後の対応が迅速になります。
ワクチン接種・しつけ・登録情報の確認
入居時に接種証明書の提出を求めることで、感染症リスクの低減と飼い主の意識水準の確認を兼ねられます。犬については自治体への登録(狂犬病予防法に基づく登録と年1回の予防接種)が義務であり、その証明書の提出を条件化することで管理の実効性が高まります。
入居審査で確認しておきたいポイント
ペット可物件での入居審査では、通常の与信確認に加えて、ペットの種類・頭数・年齢・飼育歴、以前の賃貸物件での飼育実績と退去時の対応、共用部での振る舞いに対する意識などを確認する機会を設けることが有効です。
書面での提出よりも、対面や電話での会話を通じて人柄と飼育に対する姿勢を見極めることが、長期的なトラブル防止につながります。
需要を取り込みながらリスクを抑える設備・仕様
ペット可転換を行う際の設備投資は、大規模なリノベーションでなくても、効果的な箇所に絞ることで費用対効果を高められます。
傷やにおいに配慮した床材・クロス・建具
床材はペット対応のフロアタイルやクッションフロアへの変更が有効です。爪が引っかかりにくく掃除がしやすい素材は、原状回復コストの削減にもつながります。
クロスは防汚・消臭機能付きの製品が各メーカーから展開されており、通常品と比較しても大きなコスト差なく導入できます。建具(ドア)については、ペットがかじりやすい箇所にステンレスプレートを貼るだけで傷の深刻化を防げるケースもあります。
防音対策と清掃しやすい共用部づくり
鳴き声の音漏れが気になる木造・軽量鉄骨造では、窓の防音フィルムや遮音カーテンの設置を推奨するなど、入居者側が自衛できる情報提供をセットにするだけでも苦情を減らせます。共用部については、床に滑り止めマットを敷く、清掃しやすい素材を選ぶといった工夫が、日常の維持管理コストを下げます。
足洗い場・リードフック・収納などの定番設備
玄関脇の足洗い場(シャワーヘッド付き水栓)、玄関外壁のリードフック、ペット用品を収納できる土間スペースの拡張などは、ペット可物件として選ばれるうえで費用対効果の高い定番設備です。
工事費の目安は足洗い場で10〜30万円程度(既存排水設備の位置次第で変動)であり、家賃を月数千円引き上げることで数年以内に回収できる投資規模です。
差別化につながるペット共生型の工夫
猫向けには、キャットウォークや窓際の棚設置が人気です。費用をかけずとも、DIYで設置可能な製品も普及しており、入居者に設置を任せる代わりに退去時の原状回復義務を特約で緩和するといった運用も選択肢になります。
ペット共生型物件としての設計・運営が整うと、エリア相場を2割超える家賃でも成約するケースが存在し、長期定着率の向上にも寄与します。
「ペット可」だけでなく管理しやすさも重要

ペット可物件の市場競争が激化するにつれ、「ペット可」という条件だけでの差別化は難しくなります。入居者が長く住み続けたいと感じる環境と、オーナー・管理会社が無理なく運営を続けられる仕組みの両立が、次の競争軸になっています。
スマートホームやIoT設備の導入は、その有力な手段です。
スマートロックで内見・入退去・鍵管理の負担を減らす
ペット可物件では、内見時に「においや傷の確認」を重視する入居希望者が多く、現地確認のニーズが高い傾向があります。スマートロックを活用すれば、空室時に内見専用のワンタイムパスワードを遠隔発行し、鍵の受け渡しなしで内見を完結させることができます。
内見から申し込みまでのスピードが速まるだけでなく、退去時の鍵返却・交換作業もオフィスからのリモート操作で完結するため、管理工数を大幅に削減できます。
センサーや見守り機能で室温管理や留守中の安心感を高める
ペットを室内に残して外出するオーナーや入居者にとって、留守中の室温・湿度管理と安全確認は切実な問題です。室内カメラや温度・湿度センサーを設置したスマートホームシステムは、スマートフォンからのリアルタイム確認や見守りの環境を作ることができます。
こうした見守り機能は入居者の安心感を高め、ペット可物件としての訴求力を底上げします。
来訪確認・遠隔対応で防犯性と入居者満足を両立する
スマートインターホンやクラウド録画対応の防犯カメラを共用部に設置することで、宅配業者や不審者の動向を管理画面からリアルタイムで確認できます。
ペット可物件の入居者は長期定着率が高い傾向がある反面、荷物(ペット用品・ペットフードなど)の宅配頻度が高く、不在時の対応も増えます。こうした入居者特性に合ったセキュリティ環境の提供が、入居満足度の向上につながります。
設備の遠隔操作・自動化でペットとの暮らしやすさを訴求する
照明・エアコン・換気扇などをアプリ一つで操作・自動化できる環境は、ペットを飼う入居者にとって「帰宅前に部屋を適温にしておく」「外出先から換気を調整する」といった使い方で日常的なメリットを生みます。
管理会社側も、退去後のスマートホーム権限をシステム上でリセットするだけで済むため、入退去に伴う現地対応を省力化できます。こうしたスマートホーム機能の存在が、家賃の上乗せを正当化する訴求ポイントとして機能します。


