熱中症の見守りはどうする?高齢者や子どもを守る方法とIoTを活用した対策

夏の熱中症は屋内での発生が最も多く、離れて暮らす家族が室内の状況に気づけないことが被害の拡大につながります。見守りが必要な対象者、家族による見守り方法、IoT・スマートホームを活用した対策を具体的に解説します。
熱中症対策で「見守り」が重要な理由
熱中症による救急搬送は住居内で発生する割合が最も高く、家族による日常的な見守りが被害を防ぐ鍵になります。総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、令和7年(2025年)5月から9月の全国の熱中症救急搬送人員は10万510人に達し、調査を開始した平成20年以降で最多となりました。発生場所別では住居が3万8,292人(38.1%)で最も多く、道路(19.7%)や屋外の公衆の場所(12.1%)を上回っています。

同資料では、令和7年の夏は気象庁の統計開始以降最も早い梅雨明けとなった地方が多く、熱中症警戒アラートの発表回数も過去最多となったことが報告されています。屋外での対策が意識されやすい傾向があるものの、実際の被害は住まいの中で起きているという事実が、見守りの重要性を裏づけています。
熱中症は屋外だけでなく室内でも起こる
室内は屋外に比べて危険性が低いと捉えられがちですが、締め切った空間では気温や湿度が上昇しやすく、体から熱が逃げにくい状態になります。冷房を使わずに過ごしていると、風通しの悪さや日射による輻射熱の影響で室温が体温を上回ることもあり、じっとしていても熱中症を発症するリスクがあります。
気象条件だけでなく、建物の断熱性能や日当たり、階数によっても室内の暑さは変わり、同じ地域でも住戸ごとに危険度が異なります。屋内で発生する熱中症は、外出時と違って発症の兆候が周囲から見えにくい点が特徴です。
本人が暑さや体調の変化に気づかないことがある
高齢になると暑さを感じ取る感覚や発汗機能が低下し、暑さそのものを感じにくくなります。喉の渇きを自覚しにくくなることも重なり、水分摂取が遅れて脱水が進行しやすくなります。
東京都監察医務院と東京大学大学院医学系研究科が令和7年に公表した共同調査では、東京23区内の屋内熱中症死亡例1,295件のうち、44.9%にあたる581例でエアコンがオフの状態、29.4%にあたる381例でエアコンが設置されていない状態だったことが報告されています。
冷房が稼働していた84例でも、設定温度の誤りや故障など、機器を適切に使いこなせていなかった事例が確認されています。本人の自覚や操作に頼るだけでは対策が間に合わない場合があるため、周囲からの気づきが必要です。
離れて暮らす家族は室内環境を把握しにくい
同居していない家族は、電話やメッセージのやり取りだけでは相手の室温や湿度、冷房の稼働状況を知ることができません。本人から連絡がない場合でも、実際には室温が危険な水準まで上昇していることがあります。声の様子や会話の内容から体調の異変を推測することはできても、部屋の温度そのものは電話越しに確認できません。訪問の頻度が限られる家庭ほど、室内環境を継続的に確認できる仕組みが必要になります。
特に熱中症の見守りが必要なケース
熱中症のリスクは年齢や生活状況によって差があり、特に注意すべき対象を把握しておくことで見守りの優先順位が明確になります。同じ室温の環境にいても、体温調節機能や生活習慣の違いによって発症のしやすさは変わるため、家族構成や日中の過ごし方を踏まえて対象を整理しておくことが重要です。
一人暮らし・高齢者世帯
前出の総務省消防庁の統計では、令和7年5月から9月の救急搬送者のうち65歳以上の高齢者が5万7,433人と全体の57.1%を占め、年齢区分別で最多となっています。

高齢者の搬送人員は2021年の2万6,942人から2025年には5万7,433人へと4年間で約2.1倍に増加しており、搬送者全体に占める割合が横ばいで推移する一方、絶対数は大きく伸びています。厚生労働省の人口動態統計によると、令和5年に熱中症で死亡した1,651人のうち75歳以上が6割超の1,057人を占めており、後期高齢者の割合が高い状況です。一人暮らしや高齢者のみの世帯は、体調の異変が起きても発見が遅れやすいため、日常的な見守りの対象として優先度が高くなります。
留守番をしている子ども
子どもは体温調節機能が発達途上にあり、体重に対する体表面積が大きいことから、大人よりも短時間で体温が上昇しやすい特性があります。留守番中は自分でエアコンの操作や水分補給の判断をすることが難しく、遊びに夢中になって体調の変化を見逃すこともあります。
総務省消防庁の統計では、少年(7歳以上18歳未満)も熱中症による救急搬送の対象となっています。特に夏休みなど、子どもだけで自宅にいる時間が長くなる時期は、室内での過ごし方にも注意が必要です。
子どもは遊びや動画視聴に集中すると外気温の変化や室内の暑さへの意識が薄れやすく、水分補給のタイミングを自分から求めないことも珍しくありません。共働き世帯など日中に子どもだけで過ごす時間がある家庭では、室内環境の確認が欠かせません。
自宅で過ごす時間が長い人
在宅勤務者や体調管理のため外出を控えている人は、屋外にいる時間が短い分、熱中症のリスクが低いと考えられがちです。しかし在宅時間が長いほど、室温上昇に気づかないまま長時間過ごしてしまう可能性も高まります。
持病があり定期的な体調確認が必要な人も、在宅中の環境変化を把握しておく対象に含まれます。日中の在宅時間が長い世帯では、冷房を使う時間帯や設定温度が習慣的に固定されがちで、外気温が急上昇した日でも従来どおりの設定のまま過ごしてしまうことがあります。仕事や作業に集中していると室温の変化に意識が向きにくく、気づいたときには体調に影響が出ている場合もあるため、時間帯を問わず環境を把握できる仕組みが役立ちます。
留守番中の犬や猫などのペット
犬や猫は人間のように全身の発汗で体温を調節することが難しく、人間よりも熱中症になりやすい体の構造をしています。飼い主が外出している間に室温が上昇すると、ペット自身が冷房を操作したり水を補給したりすることはできません。
夏場の車内や締め切った室内は高温になりやすいため、留守番中のペットについても室内環境の見守りが重要です。犬や猫は室温だけでなく、直射日光が当たるケージやカーテンのない窓際に長時間いることでも体温が上昇するため、日中の日差しの入り方まで含めて確認しておくことが望まれます。
家族ができる熱中症の見守り方法
日常的にできる見守り方法には複数の手段があり、対象者の生活スタイルや家族の関わり方に応じて組み合わせることが有効です。それぞれの方法には得られる情報の種類と限界があるため、特徴を整理したうえで選ぶことが求められます。
| 見守り方法 | 把握できる内容 | 限界 |
|---|---|---|
| 電話・メッセージ | 声の様子、本人の申告内容 | 室温など客観的な数値は分からない |
| 訪問 | 室温・体調・部屋の状態を直接確認 | 頻度に限りがある |
| 温湿度計の設置 | 室内の数値を本人・家族が確認可能 | 定期的に見る習慣がないと活用されない |
| 熱中症警戒アラートの確認 | 地域全体の危険度 | 個々の住戸内の実際の室温は分からない |
電話やメッセージで定期的に連絡する
決まった時間に電話やメッセージで連絡を取り合う方法は、特別な機器を使わない見守り手段です。声の調子や返信の反応から体調の変化を察知できることもあります。ただし連絡が取れた時点で本人が異常に気づいていない場合、室内の危険な状態が見過ごされる可能性があります。返信がない場合に安否を確認する手段をあらかじめ決めておくことも、電話やメッセージによる見守りを機能させるうえで必要です。
訪問して室温や体調を確認する
直接訪問すれば、室温や湿度、換気の状態、冷房の稼働状況を目視で確認できます。会話だけでは分からない顔色や汗の状態、部屋の空気のこもり具合も把握できるため、他の見守り手段より確実性が高い方法です。
ただし、訪問できる頻度は家族の居住地や仕事の都合に左右されるため、毎日の見守りを訪問だけでまかなうことは現実的ではありません。訪問時にはエアコンのリモコン設定が誤っていないか、フィルターの汚れで冷房効率が落ちていないかも合わせて確認しておくと、次に訪問するまでの間の安全性を高められます。
温度計・湿度計を見やすい場所に設置する
本人が室内の環境を数値で把握できるよう、リビングや寝室など長時間過ごす場所に温度計・湿度計を置くことは基本的な対策です。目盛りが大きく見やすいタイプを選ぶと、視力が低下している高齢者でも確認しやすくなります。
ただし数値を見る習慣がなければ効果は限定的なため、朝晩の決まったタイミングで確認するなど、定期的に見る仕組みと組み合わせることが望まれます。危険な水準を色で示す機能付きの温湿度計であれば、数値を読み取る負担を減らし、一目で状況を判断できるようになります。
熱中症警戒アラートや暑さ指数を確認する
環境省と気象庁は、暑さ指数(WBGT)が危険な水準に達すると予測される場合に熱中症警戒アラートを発表しています。暑さ指数は気温だけでなく湿度や日射・輻射熱を加味した指標で、熱中症患者の発生率との相関が気温単体よりも高いとされています。
暑さ指数(WBGT)は、日常生活に関する指針では主に「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の4段階に区分され、熱中症予防の目安として活用されています。
アラートが発表された日は、外出を控えるだけでなく、室内でも冷房の使用を強化するよう家族から声をかけることが有効です。環境省のサイトでは地域ごとの暑さ指数の実況・予測が公開されているため、離れて暮らす家族が本人の居住地の危険度を事前に把握しておく手段としても活用できます。
熱中症の見守りにIoT・スマートホームを活用する方法
電話や訪問による見守りには限界があるため、センサーや通信機能を備えたIoT機器を組み合わせることで、室内環境を継続的に把握できるようになります。人が確認する頻度に依存しない仕組みを取り入れることが、屋内での熱中症被害を防ぐうえで有効です。
温度・湿度センサーで室内環境を見える化する
小型の温湿度センサーを部屋に設置すると、室温と湿度の推移を数値として記録できます。人の感覚に頼らず環境を客観的に把握できるため、本人が暑さを自覚しにくい状態でも危険な水準を検知できます。
センサーで取得したデータはアプリなどに蓄積され、時間帯ごとの傾向や、特定の部屋だけ室温が上がりやすいといった住まいの特性を確認する材料にもなります。日当たりの強い西向きの部屋や、風通しの悪い部屋など、住戸によって危険度が異なる場所を把握しておくと、扇風機や遮光カーテンなどの補助的な対策も検討しやすくなります。
スマートフォンから離れた場所の室温を確認する
センサーが通信機能を備えていれば、家族は自宅にいながら離れた場所に住む本人の室温をスマートフォンで確認できます。訪問や電話をしなくても環境の異変に気づけるため、日常的な見守りの負担を減らせます。仕事や育児で頻繁な連絡が難しい家族でも、外出先や休憩時間などの隙間時間に状況を確認する運用が可能です。
室温が高くなった際に通知を受け取る
設定した温度や湿度を超えた場合に通知が届く機能を使えば、常時アプリを確認していなくても異変にすぐ気づけます。
夜間や外出中でも通知を受け取れるため、異変を早期に把握しやすくなります。また、複数の家族で通知を共有できる製品を選べば、特定の人に負担が偏らない見守り体制を整えられます。
通知の内容を室温だけでなく湿度や不快指数まで含めて設定できる製品であれば、体感的な暑さに近い形で異変を捉えられます。
外出先からエアコンを遠隔操作する
通信機能付きのエアコンや専用のコントローラーを使うと、外出先から冷房の運転開始や温度設定の変更ができます。本人がリモコンの操作を忘れていたり、設定を誤っていたりする場合でも、家族側から是正できる点が利点です。
実際の死亡事例の分析でも、設定温度を暖房のまま操作していた、送風モードのまま冷房と勘違いしていたといった誤操作が要因になったケースが確認されています(出典:東京都監察医務院・東京大学大学院医学系研究科、前掲資料)。遠隔操作の機能は、こうした操作ミスを家族側から補正する手段になります。
一定の室温を超えたらエアコンを自動で動かす
室温が設定した基準を超えた際に、人の操作を介さず自動でエアコンが作動する仕組みを導入すれば、本人が気づかない間にも冷房が稼働します。
外出中や就寝中など、家族が室温を確認しづらい時間帯の対策として有効です。自動制御に対応した機器を選ぶ際は、設定した室温の範囲や動作条件、対応するエアコンの機種をあらかじめ確認しておく必要があります。
センサーや家電を連携させて見守りを自動化する
温湿度センサー、エアコン、通知機能を組み合わせることで、環境の検知から冷房の稼働、家族への連絡までを一連の流れとして自動化できます。
個別の機器を都度確認する手間が減り、見守る側の負担を継続的に軽減できます。導入する際は、対象者の生活リズムに合わせて通知のタイミングや自動動作の条件を調整することが望まれます。人による確認とIoTによる自動検知を組み合わせておくことで、家族が気づけない時間帯や、本人が体調不良で助けを求められない状況でも一定の対処が働き続けます。
スマートホームなら熱中症対策以外の見守りにも活用できる

IoT機器を用いた見守りは熱中症対策にとどまらず、住まい全体の安全確認にも応用できます。一つの仕組みを複数の目的に活用できる点は、導入コストに対する効果を高める要素になります。
センサーを使って住まいの異変を把握する
人感センサーやドアの開閉センサーを設置すると、普段の生活パターンから外れた動きがあった際に把握できます。長時間動きが検知されない場合や、決まった時間に開くはずのドアが開いていない場合など、普段とは異なる生活状況に気づくきっかけになります。
トイレや冷蔵庫の開閉といった生活動線上の場所にセンサーを配置すると、より生活実態に近い見守りが可能になります。
カメラを活用して外出先から室内の様子を確認する
見守りカメラを使えば、室内の様子を映像で確認できます。数値だけでは判断しにくい状況、例えば転倒や体調不良の兆候などを直接把握できる点が特徴です。常時映像を確認する運用が難しい場合でも、動きを検知した際にだけ通知や録画が行われるタイプを選べば、負担を抑えながら異変に気づける仕組みを作れます。設置場所やプライバシーへの配慮を事前に本人と相談したうえで導入することが望まれます。
照明や家電を遠隔操作・自動化する
照明や家電をスマートフォンから操作できるようにすると、消し忘れの確認や、就寝時間に合わせた自動消灯などが可能になります。生活パターンに応じた自動化は、日常のちょっとした異変に気づくきっかけにもなります。
スマートロックなどを組み合わせて住まいの安全性を高める
スマートロックを導入すると、鍵の閉め忘れを遠隔で確認できるほか、遠隔解錠に対応した製品であれば、緊急時に家族が解錠して駆けつけるといった使い方も可能です。
熱中症などで本人が動けなくなった場合でも、家族が速やかに室内へ入れる体制を整えておくことは重要です。合鍵の受け渡しが難しい遠方の家族でも、遠隔解錠の機能があれば緊急時の初動を早められます。
複数の住宅設備をアプリでまとめて管理する
温湿度センサー、エアコン、照明、スマートロックなど複数の機器を一つのアプリで管理できると、確認や操作の手間が減ります。機器ごとに別のアプリを使い分ける必要がなくなるため、日常的に使い続けやすい環境が整います。
熱中症見守りのためのIoT・スマートホーム機器を選ぶポイント
見守り機器は種類が多いため、対象者の生活状況に合わせて必要な機能を整理したうえで選ぶことが重要です。センサーのみのシンプルな製品から、家電連携や自動制御まで対応する製品まで幅があり、価格帯や導入の手間も異なります。導入前に確認しておきたい項目は次のとおりです。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 温度・湿度の計測精度と更新頻度 | 急激な環境変化を見逃さないため |
| 外出先からのスマートフォン確認 | 離れて暮らす家族が状況を把握するため |
| 異常時の通知機能と通知先の複数設定 | 見守りを一人に集中させないため |
| エアコンなど家電との連携 | 検知から対処までの時間を短縮するため |
| 自動操作のルール設定 | 生活リズムに合わせた運用をするため |
| 本人側の操作のしやすさ | 誤操作を防ぎ長く使い続けるため |
温度・湿度など必要な情報を確認できるか
見守りの基本となるのは、室内の温度と湿度を正確に把握できることです。表示や記録の頻度が少ない機器では急激な環境変化を見逃す可能性があるため、更新間隔や計測精度を確認しておく必要があります。
外出先からスマートフォンで確認できるか
自宅にいなくても状況を確認できることは、離れて暮らす家族にとって欠かせない条件です。通信方式や対応するアプリの操作性によって使い勝手が変わるため、実際の画面表示や操作手順を事前に確認しておくと導入後の負担を減らせます。
異常時に通知を受け取れるか
室温上昇などの異常が発生した際に、プッシュ通知やメールで知らせてくれる機能があるかどうかは重要な選定基準です。通知先を複数の家族に設定できる機器であれば、見守りを一人に集中させずに分担できます。
エアコンなどの家電と連携できるか
温湿度センサー単体では確認しかできず、対処は人の手に委ねられます。エアコンと連携し遠隔操作や自動運転ができる製品であれば、異常を検知してから対処するまでの時間を短縮できます。
導入前には、既存のエアコンが連携に対応しているかどうかを確認しておきましょう。
自動操作のルールを設定できるか
室温の基準値や動作時間帯など、自動操作の条件を細かく設定できる機器は、対象者の生活リズムに合わせた運用がしやすくなります。設定が複雑すぎると使いこなせない場合もあるため、必要な範囲でシンプルに設定できるかどうかも確認しておきましょう。
高齢者本人が複雑な操作をしなくても利用できるか
見守り機器は家族が管理する前提であっても、本人が誤って操作してしまう場面が想定されます。本人側の操作をできるだけ簡略化し、日常生活に支障が出ない設計になっているかを確認することが、長く使い続けるための条件になります。導入時には家族が設定を行い、本人には普段どおりの生活を続けてもらいながら見守りだけを裏側で機能させる形にすると、負担をかけずに運用しやすくなります。


