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スマートホーム業界の課題とは。市場の推移やスマートホームの未来を考える

AmazonやAppleなど、様々な企業がスマートホーム製品を販売しており、TVCMやネット広告などにおいても、目につく機会が増えてきました。 日本でも、若者を中心にスマートホーム製品の注目度が年々上がってきており、今後拡大傾向にある市場であるのは間違いありませんが、日本と海外ではスマートホーム製品の普及率に大きな差があることは意外に知られていません。 日本は他国と比較して、スマートホーム製品の普及率と成長性が低く、あまり普及していない国です。 なぜ、日本ではスマートホーム製品の普及率及び、市場が拡大しにくいのでしょうか。 今回はスマートホームが抱える課題と、これからの将来について解説します。

日本ではまだまだスマートホームの普及率が低い

近年、スマートホーム家電の展示会が頻繁に行われているなど、日本においてスマートホーム家電が徐々に一般に浸透している傾向にあります。 しかし、海外と比較すると日本の普及率は低く、様々な調査結果もそれを裏付けているのが現状です。 そこで最初に、日本と海外のスマートホームの普及率について詳しく見ていきましょう。

日本の普及率について

ICT総研が消費者に対して、「スマートホーム家電の利用同に関する調査」を行った結果、スマートホームの認知度のわりに導入している人の割合が低いという結果が出ました。  スマートホームという言葉を聞いたことがある人が68%いる中、実際にスマートホーム家電を利用している人は3,226人中、426人と全体の約13%に留まっています。 さらに、スマートホーム家電を利用している人のうち、スマートスピーカーの利用が最も高く、それ以外の製品の利用率が非常に低く、音声操作で簡単に操作ができるスマートスピーカー以外の家電を利用している人は少数であることが分かっています。

海外と日本の差

日本国内においても、スマートホーム家電の市場は年々成長しており、今後も拡大が続くと予測がされているのですが、海外と比較すると日本のスマートホーム市場の成長率は低いようです。 野村総合研究所が発表している「ITナビゲーター2021年版」では、2021年の日本におけるスマートスピーカーの普及率は約13.5%です。一方、アメリカでは成人の普及率が25%を超えているなど、アメリカといった他国と大きく差があるといわざるを得ません。

アメリカのスマートホームの普及率

不動産テックの情報発信メディアSUMAVE(スマーブ)の記事によれば、アメリカではスマートホーム製品の所有者の約4割が32際以下の若い世代であると言われています(「2030年には今の7倍に!?スマートホームの世界市場規模とは」)。 しかし、それ以上に注目したいところが高齢者の普及率です。スマートホーム製品所有者のうち、55歳以上の年齢層が約25%と高く、高齢者世代にも普及しているようです。 さらに、アメリカでは高齢者向けのスマートホームのモデルルームを2017年に開いており、高齢者に対してのスマートホーム普及に対しても積極的に動いていると言えるでしょう。 このような現状、日本においては高齢者どころか、若年層ですらスマートホーム製品を積極的に活用しているとは言えず、アメリカと比較してスマートホーム製品の普及が遅れています。 なぜ、日本が他国と比較してスマートホーム製品の普及が遅れているのでしょうか。 その背景には日本が抱えている、様々な問題が壁となっているからです。

スマートホームにおける課題

日本においてスマートホーム製品の普及を妨げる要因は様々あります。 これはスマートホーム製品のみならず、IoT機器関連の製品の普及を妨げる要因と重なってます。 この問題をクリアしない限り、スマートホーム製品を普及させるのは難しいでしょう。 それでは、普及を妨げる要因について、詳しく解説していきましょう。

人材不足の問題

スマートホーム製品やIoT機器関連は専門の技術や知識が求められますが、専門の知識の勉強や技術の取得には時間がかかります。そのため、システムの構築などができる優秀な人材の絶対数が少なく、雇うための人件費が高いなどの問題があるでしょう。 人材を育てるためにも、日本は少子高齢化が問題になっているため、育てる人材の確保も難しいなども考えられます。 スマートホーム製品は精密機器のため、ヒューマンエラーに対応できる人材を確保する必要があるなど、日本において人材不足の問題は非常に大きい問題になっています。

セキュリティの問題がある

スマートホーム製品はインターネットに接続して操作を行いますが、インターネットに接続している以上、クラッキング(不正アクセス)される危険性は常に付きまといます。 現在においてもスマートフォンの普及により、ネットワークにかかる負荷が以前よりも増大しており、時間帯によってはインターネットが繋がりにくいことも問題視されています。 このような現状において、ネットワークにさらなる負荷が生じるスマートホーム製品が急激に普及してしまうと、ネットワークのセキュリティリスクが増大し、クラッキングによる情報漏洩というリスクが増えてしまうでしょう。 仮にスマートホーム製品がクラッキングされてしまうと、玄関ドアの鍵を遠隔操作で開閉される、監視カメラの映像を盗まれるなど、様々な犯罪行為を可能にしてしまいます。 そのため、セキュリティ問題を解決するまではスマートホーム製品の急激な普及させることはリスクがあり、安全なネットワークを構築することも課題となっています。

各メーカーの規格の違い

AmazonやApple、Googleなど、様々なメーカーがスマートホーム製品を開発、販売していますが、各メーカーごとに異なる規格を所持しているのも普及の妨げになっています。 たとえば、異なるスマートホーム製品を揃えてしまうと、メーカーごとに専門のアプリをスマホで管理する必要が出てくるため、操作が面倒だと感じてしまうでしょう。 そのため、購入するメーカーを統一した方がアプリが統一できるので便利にはなりますが、製品性の違いなどから、全ての製品のメーカーを統一して利用するのは現実的ではありません。 現在では、一部の製品に関しては共通規格になっている製品もありますが、現在でもメーカーごとの規格の違いはあるので、全てを共通規格にするのはまだまだ時間がかかるでしょう。

スマートホーム市場の未来とは

様々な課題が日本のスマートホーム製品の普及を妨げているのは間違いありませんが、スマートホーム製品市場の拡大を止めるには至りません。 スマートホーム関連市場は2018年時点で約3兆円でしたが、2025年には4兆円を超えると見込まれており、市場の成長性は高いと予測されています。 さらに大手自動車メーカーであるトヨタが2020年に、家庭向けのロボットなどのスマートホーム製品や、AIがロボットから得たデータを解析して健康状態を確認できる機能を取り入れた、「Woven City(ウーブンシティ)」という実験都市を構築するプロジェクトを発表しています。 このようにスマートホームの普及は遅くはありますが、市場は将来に渡って拡大することが見えています。 それでは最後にスマートホーム市場の未来について紹介していきましょう。

これから普及が拡大することで、少子高齢者社会の助けにもなる

スマートホーム製品は、ただ生活を便利にするだけではなく、高齢者の多い日本において様々な有効活用が考えられています。 たとえば、一人暮らしの高齢者などの屋内での孤独死を防ぐために、一人暮らしの高齢者向きのIoT機器の販売が開始されています。 他にも高齢の親御さんの家にカメラを設置することによって、定期的に親御さんの様子を遠隔から見ることができ、もしもの時も迅速に対応することができるでしょう。 すでに企業の中には、スマートホーム製品を組み込んだ高齢者向け住宅を販売しているなど、高齢者に配慮したスマートホーム製品が数多く開発されています。 老々介護が危険視されている日本の少子高齢化問題ですが、スマートホーム製品が普及していくことで、介護の負担を軽減することに繋がるでしょう。 スマートホーム市場の拡大には問題が山積みではありますが、高齢な親御さんがいる中年層などが、親御さんのためにスマートホーム製品を導入することによって、若年層にも広がっていくという現象が起きるかもしれません。 少なくとも、成長性は他国よりも劣っていたとしても、市場の成長と拡大は止まることなく、今後の将来を左右するほどの市場になっていくと予想されています。 日本は他国と比較してスマートホーム製品の普及が遅れていることは事実です。しかし、確実にこれからの将来に渡って成長し続ける市場であることは間違いありません。 スマートホーム製品が普及するための課題は少なくありませんが、その課題すらクリアすることができれば、急激に普及していくことは確実です。 利便性と、今後増えていく高齢者に対する介護と安全性確保のためにもスマートホーム製品は注目されており、将来は海外と同じように高齢者世代にも普及していくでしょう。 もし、これからスマートホーム製品の導入を考えている人は、規格の違いなどを把握しておき、自分のライフスタイルに合った製品を購入するようにしましょう。
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