
業務の幅が広く、煩雑な作業も多い賃貸管理業務をサポートする存在として物件管理ソフトがあります。
今では賃貸業界の常識となっている賃貸管理ソフトですが、その基本的な仕組みや選び方のポイントなどについて改めて紹介します。
物件管理ソフトとは
物件管理ソフトとは、不動産会社の賃貸管理業務を効率化するために開発されたソフトです。
賃貸管理業務は、物件管理、入居者の管理、入出金の管理と広い範囲にわたっており、それらの業務を効率よく統合してくれるソフトです。
物件管理ソフトの種類
物件管理ソフトの提供方式から、クラウド型、オンプレミス(インストール)型、フリーソフトに大別できます。
クラウド型はオンライン上にサーバーを設け、サーバーでソフト管理を行ないます。
オンプレミス型は自社側にインストールして利用します。社内LANを利用すれば社内で情報共有することが可能です。フリーソフトは文字通り無料で提供されるソフトです。
管理ソフトの基本的な標準機能
クラウド型もオンプレミス型も共通して次のような機能を持っており、フリーソフトではいずれかの機能に照準を合わせた機能を提供しています。
- 物件管理
- 入出金管理
- 契約管理
- 各種帳票出力
- 修繕情報管理
- 請求書作成
管理ソフトを導入するメリット
管理ソフトを導入するメリットは下記のようなものが挙げられます。
賃貸管理に関するあらゆる情報を統合して他の業務に利用できるようになります。
入居時の契約書などの書類作成、家賃の入金管理、物件オーナーへの収支報告書作成などで入力したデータは相互に他の管理業務で活用でき、重複して入力する手間がなくなります。
To Do管理も可能になり、更新や連絡忘れがなくなります。
管理ソフトによって、あらゆる情報が一元化されており、必要な情報に簡単にアクセスできるようになります。
そのため担当者が不在でも、クレーム履歴などの顧客情報を素早く探し出せるので応対でとまどうことがなく、対応ミスを防ぐことができます。
管理ソフトを利用すれば入力をシステムが誘導してくれるため入力ミスを軽減できます。
Excelの数式を誤って消去したり、パソコン上のファイルを消去したりすることもなくなります。
登録した不動産ポータルサイトに一括して掲載や変更ができるようになります。
これにより、1つずつポータルサイトへの情報を入力していた手間が大幅に削減できます。
そのため情報の更新が頻繁にでき、常に新しい情報を掲載できるようになり、より多くのポータルサイトを利用できることになります。
AIを利用して効果的なポータルサイトの運営ができるソフトもあります。
どのような広告に反響が大きいのか、利用者が興味をもっている物件を分析してくれて利用者が関心をよせる物件を自動的に利用者に発信してくれたり、訪問してくれた顧客にお礼のメールを自動で発信してくれたりするサービスがあります。
物件管理ソフトを利用することによって、業務が効率化されることで、見込み顧客のフォローや新規顧客への営業活動により多くの時間を割くことが可能になります。
物件管理ソフト選びのポイント

物件管理ソフトを選ぶ際のポイントとはどういったものがあるのでしょうか。
物件管理ソフトはほとんどの管理業務の入り口となります。
そのためメインメニューに目当ての情報が分かりやすく配置してあることが重要です。よく利用する機能に素早くアクセスできる工夫などもあると、うれしい機能です。
管理ソフトに慣れてくると不満なところがみえてきます。
求める機能をアップデートしてもらえるか、トラブルがあったときに素早く対応してくれるかがソフトの利便性に大きく影響します。
有料のソフトを利用するには、導入費用と月々継続した発生する費用は避けられません。クラウド型とオンプレミス型のランニングコストなどの違いを次に比較します。
クラウド、オンプレミスとフリーソフトの比較検討
管理ソフトを導入するうえでクラウド型がよいのかオンプレミス型がよいのか悩みますが、それぞれの特長を整理してみましょう。
|
クラウド |
オンプレミス |
導入時 |
少額 |
高い |
継続料金 |
あり |
少額(なし、別途サポート費用が必要な場合もあり) |
ソフト更新 |
あり |
なし(別料金) |
クラウド型は物件管理情報をクラウド上で管理します。
クラウドにあるソフトは提供会社が管理しているのでメンテナンスの手間がいりません。
クラウド上にデータがあるのでインターネットにアクセスできる環境であれば、どこからでもデータを確認・利用できます。
クラウド型であればソフトの利用料という概念であり、オンプレミス型で必要なソフトの購入費用である導入時の費用を安くおさえることが可能です。
オンプレミスとは利用者が管理する設備に直接ソフトをインストールして利用します。
従来から利用されている形態ですが、クラウド型と区別するためにオンプレミスという言葉を使用することが多くなりました。
オンプレミス型の場合はソフトを購入するため初期費用が高くなります。
サーバーを利用する場合は別途サーバーの費用が必要であり、インフラの整備に費用が必要な場合もあります。契約によりますが、ソフトは基本的に売りきりでアップデートは提供されません。
別途サポート契約の中でアップデートがあったり保守をしてくれたりします。
フリーソフトやエクセルを使った物件管理は可能か
フリーソフトやマイクロソフトのエクセル・アクセスを利用すればある程度のデータ作成ができ物件管理も可能です。他の社員と情報を共有したい場合は社内のサーバー上でファイルをおいてエクセルファイルを共有できますし、ウェブ上のフォルダにエクセルやGoogleスプレッドシートをおくことで共有できます。
フリーソフトは無料なのが利点ですが、次のようなデメリットがあります。
ソフトであれば導入後のサポートや故障時のトラブル対応が欲しい所ですが、フリーソフトの場合アフターサービスは期待できません。
また、ソフト自体の提供を中止したり、アップデートがされないまま放置さたりすることもあります。
使い方がわからなくても自分で解決しなければなりません。
一つのフリーソフトでできることは一つの業務だけのことが多いです。
不動産管理の多肢にわたる業務を一括管理することは難しく、データは日々増えていきますが、データが多くなりすぎてフリーソフトでは対応できなくなる(重くなる、固まる、落ちる)こともあります。
フリーソフトにバックアップ機能がなければ思いもかけずファイルが破損してしまい、今までのデータが全てなくなるおそれもあります。
アナログな不動産業界、テクノロジー化で脱却できるか
不動産業界はなかなかITが進まず、アナログだと言われていますが、その実体はどのようなものか、また、IT化によってどのようなことがおきるかを検討してみましょう。
低い不動産業界のIT資本投入と労働生産性
平成27年に厚生労働省が公表した産業別IT資本投入と産業別の労働生産性グラフでは以下のようになっています。
アメリカと比べて日本の不動産業界のIT資本投入は1割、労働生産性は4割に達していません。

平成27年版 労働経済の分析 -労働生産性と雇用・労働問題への対応-|厚生労働省

これまでは、不動産業界で最も重要な情報は「他の人が知らない情報」であり、その情報を「自分だけが知っている」ことが最も重要だと考えられていました。
そのため、他者よりも優位に立つために情報の囲い込みが生まれます。情報を囲い込むことによって、非効率や不透明な取引が横行することになっていました。
情報を他と共有することをしないので、不動産業界で使用するテクノロジーはせいぜいエクセルでの物件管理ぐらいで良かったようで、これが結果として業務全般への生産性低下を招いています。
今までは人海戦術で、顔がみえる範囲で業務をこなせばよかったのですが、人口が減少し始めている日本においては、効率化と労働生産性をあげるためにはITテクノロジーの活用が避けられなくなります。
不動産テックとは
不動産テックとは、SNSの活用、AIやVRなどのITテクノロジーを活用した不動産サービス(不動産+テクノロジーの造語)のことです。
不動産業界の成長を支える最新テクノロジーを4つ紹介します。
AI
これまでに蓄積されてきた不動産関連のビッグデータを集積しAIで解析すれば適切な市場分析をもとに、相場価格が可視化されます。
また、AI利用によって、双方向の物件検索が可能になり精度の高いマッチングが実現できます。
IoT
身の回りのいろいろなものをインターネットに接続すれば入り口の鍵や照明を遠隔操作できますから、内見時の手間を簡略化できます。
IoTを住宅に使用すれば住まいの利便性、セキュリティが向上し、不動産の価値もあがります。
VR・AR
VRを活用することで現地に行かなくても擬似内見ができます。
ARを活用すれば3D空間に再現した間取りに家具などを配置できますからレイアウトのシミュレーションを提供できます。
ブロックチェーン
ブロックチェーンとは複数のコンピューターをインターネットで接続し、コンピューター同士で互いに記録を共有する仕組みです。
コンピューター同士で記録をチェーンのようにつないで蓄積するため記録の改ざんが難しくなります。
ブロックチェーンの活用により、物件データを低コストで安全にしかも効率的に管理することができます。