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IoTでリフォーム業界が変わる?リフォーム現場でのIoT活用や事例を紹介

家電や自動車など、今までインターネットとは無縁だった物にインターネットを繋げて利便性を上げる試みのことを「Internet of Thing(モノのインターネット)」、略してIoTといいます。

パソコンやスマートフォンなど、インターネットと接続できる端末と連携することで遠隔操作が可能になり、様々な業界や分野において急速に発展が進んでいる技術です。

そして、IoT活用の流れは建築業界にも浸透してきており、実際の現場での活用する企業が増えてきました。しかし、このIoT活用という言葉の意味だけを知っていても、具体的にどのように活用しているのかが分からない人も少なくないでしょう。

今回はリフォーム業界に焦点を絞って、実際の現場でのIoT活用の事例や利点について解説していきましょう。

リフォーム・リノベーション市場拡大と注目されるIoT活用

2020年初頭から流行の兆しを見せた新型コロナウィルスによって、リフォーム業界は一時的に経済活動が落ち込みました。しかし、消費者側の在宅時間の増加によってリフォーム工事の需要が高まり、市場は持ち直し、これから堅調に推移していくと予想されています。

そして、住宅市場のIoT活用には政府も注目しており、住宅にIoT活用を組み込んだ「スマートホーム」の浸透を勧めています。もちろんリフォーム住宅に関するIoT活用についても言及しており、国を挙げてバックアップする態勢が整いつつあるといえるでしょう。

そこでリフォーム市場に関するIoT活用の現状と、これからの動きついて紹介していきます。

リフォーム市場の現状

リフォーム・リノベーション市場の推移を矢野経済研究所が発表する「住宅リフォーム市場に関する調査を実施(2021年)」をもとに見てみましょう。

リフォーム市場の市場規模は2011年から2020年の間、6.2兆円から6.9兆円の範囲を美増減を繰り返しながら、ほぼ横ばいに推移しています。一見すると安定しているかのように思えますが、少子高齢化によって今後の住宅市場全体が落ち込む可能性を考慮すると、このままではリフォーム市場は右下下がりに縮小していくと考えられます。

政府が掲げた政策目標は、2025年までにリフォーム市場を12兆円市場にすることを目指しており、次世代省エネ建材支援事業についての補助金制度を設けるなどの方法でバックアップをしています。

経済産業省の「経済産業省における住宅関連施策の動向」によれば、リフォーム工事の9割近くが1件あたり100万円未満であることを考慮すると、補助金があるとはいえ100万円を超えるリフォーム工事の件数が急速に伸びる可能性は少ないかもしれません。

そこで、工事費を安価にするためのIoT活用がリフォーム市場において注目を集めています。

政府の掲げる住宅に関するIoT活用

近年の住宅市場では、音声デバイスを活用したスマートホームの動きが活発になってきています。

わざわざ家電のスイッチを押すことなく、音声などの遠隔操作が生活利便性を高めるといった観点から、導入を始めている消費者が増えてきているのです。

先述の「経済産業省における住宅関連施策の動向」では、政府はIoT活用をした住宅での生活、「スマートライフ」の世界観について、自宅にいながらサービス事業者や行政と接続することによる自宅内での生活の向上を掲げています。

政府が掲げる「スマートライフ」の世界観

例えば、高齢の方が起こしやすい自宅内での浴槽事故を防ぐための「浴槽見守りソリューション」の導入や家電使用時の事故を防ぐための異常検知やアラート通知のモニタリング、子どもの帰宅が遠隔地でもすぐ分かる入退出ソリューションなど、生活をしていく上で起こりえる事故を、未然に防ぐことができる住宅を目指しています。

将来的には行政などのサービスなどについてもIoT活用を組み込むことを視野に入れており、今後も新たなIoT活用についての詳細な内容が決められていくでしょう。

リフォーム工事の現場でも活用が始めるIoT

リフォーム業界は、「クレーム産業」と呼ばれるほど、施工主とリフォーム会社とのトラブルが多い業界です。「住宅相談統計年報2019」によると、2018年に寄せられたリフォームに関する電話相談は1万件以上ありました。

2001年からの調査開始から相談件数が右肩上がりに推移しており、消費者と事業者の紛争はこれからも増えていく可能性が高いでしょう。

このような現状を打破するべく、東急不動産ホールディングスはIoT活用による「安心リフォームサービス」の試験運用を2019年に始めました。リフォーム現場において、どのようなIoT活用が行われているのでしょうか。実際のリフォーム工事の活用の仕方について解説していきましょう。

「安心リフォームサービス」とは

東急不動産ホールディングスが試験運用した「安心リフォームサービス」とは、工事現場にウェブカメラを設置することにより、施工主が不在な場合でも遠隔地でカメラを見ながら現場の状況を把握することができるサービスです。

「仕事があるから、リフォーム現場に足を運ぶのが難しい」「不在時に作業されるのは心配」といった消費者の不安を解消できる仕組みになっています。スマートフォンなどで工事現場を見ることができ、さらに不明点などを現場担当者に直接聞くことが可能なので、工事後に起こりやすい消費者と依頼者とのトラブルを防ぐことができます。

また、IoT活用によって工事現場の情報が事務所にリアルタイムで共有されるため、工事の進捗状況の確認作業の軽減、Webカメラによる現場管理が可能になり、品質向上及び工期短縮が見込めます。

一般消費者のIoTニーズも高まっている

日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会が公表した「消費者の AI・IoT 機器利用に関する意識・実態調査」によると、家事の負担軽減や子供・高齢者見守りなどを理由にIoT機器の活用を考えている人が増えています。

住宅設備に関わる機器として、玄関ドアなどに設置する見守りセンサーや防犯カメラについては、「いずれ利用したい」と回答した人の割合が6割を超えるなど、高い関心を集めています。

このように、様々な角度から注目を集めているIoT活用ですが、リフォーム業界は今後どのように動いていくのでしょうか。

これからのリフォーム業界とIoT機器について

消費者や事業者問わず注目を浴びているIoT機器の開発は目覚ましいものがあります。これからの時代、リフォームやリノベーションにおいて様々なIoT機器が増えていくことが予想され、消費者にとってもリフォーム時のIoT機器導入という選択をする方が増えていくことでしょう。

IoT活用がさらに広まっていけば、近い将来には生活の一部としてIoT機器が使われるような時代に入る可能性があります。今後のリフォームやリノベーションにおいては家屋の改築などの他にも、IoT機器導入の提案で消費者のニーズに応えるとともに、消費者の抱えるリフォームに対する不安の解消にも繋がることでしょう。

既に建設現場や土木工事などの現場においてIoT活用を試験的に行っている業者が増えつつあります。新型コロナウィルスの影響により、非対面での業務が推奨されるようになった結果、遠隔地での業務のやり取りが急速に増えてきました。そのため様々な業界で急速にIoT活用が進められており、リフォーム業界も変わり始めています。

今後さらなる利便性と効率性の向上のために、IoT活用が進められると予想されるので、その波に乗り遅れないようにリフォームに関わるIoT活用やIoT機器については最新の情報を入手しておく必要があります。

リフォーム業界は消費者との紛争が多い業界ではありますが、IoT活用が広まることで消費者の不満を解消し、安全な現場づくりを実現できるようになるでしょう。

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