賃貸住宅のIoT化。スマート賃貸は空室対策や利回り改善に繋がる?

集合住宅にもスマートホーム化のトレンドが来ている?
IoTによるスマートホーム化とは?
IoT技術によって住環境を向上させる、いわゆるスマートホーム化は、2017年頃にスマートスピーカーが発売されたことから、日本でも急速に進展してきています。
IoTとは「Internet of Things」の意味。直訳すれば「モノのインターネット」で、家電などのモノがインターネット接続されることで、ネットを通じた操作や運用ができるようになる技術です。これを活用することで、
- 音声による操作
- 遠隔での操作
- 人の動きに合わせた自動操作
ができるようになり、結果として、住環境がより便利で快適なものになるほか、防犯や事故防止にも効果があります。
IoTによるスマートホーム化は、専用のデバイスが必要なことや、複数のデバイスを連携させることでよりメリットが生まれやすいと言われ、一定の費用がかかることから、普及については戸建てのマイホームが先行してきました。
しかし、最近は集合住宅をスマートホーム化するケースも珍しくなくなりました。
賃貸の居住者にもスマートホーム化のニーズが高い
賃貸の居住者が、住んでいる部屋をスマートホーム化しようと思うなら、対応デバイスを導入し、自力でホームネットワークを構築する必要があります。
それなりに手間もかかることから、近年は、賃貸の居住者向けに、対応デバイスをシステムごと提供するサービスも登場してきています。
スマートホーム化は単に便利・快適というだけでなく、住まいのセキュリティを高められることから、都市部での生活や、一人暮らしにこそメリットが大きい側面もあります。その意味で、賃貸の居住者にとってのスマートホーム化のニーズは大きいと言えるでしょう。
そこで、近年、大手の不動産会社が、あらかじめIoTデバイスを導入し、スマートホーム化した賃貸物件を提供するというケースも見られるようになっています。
物件をスマートホーム化するには
賃貸物件でも導入しやすいIoT機器
賃貸物件に、どのようなIoT機器・設備が導入できるでしょうか。代表的なものを見ていきましょう。
スマートロック
スマートロックとは、部屋の錠をネットワークに接続し、通信によって施錠・開錠等の操作や管理を行う仕組みです。
2015年頃から国内でも普及し始めており、遠隔での操作が可能なため、まずは民泊や貸会議室などのビジネス用途で利用が増えました。
一般の生活者にとっては、自身のスマホを使って施錠・開錠ができるため、物理的に鍵を持ち歩く必要がなくなり、わずらわしさや鍵の紛失リスクから解放されるのがメリットです。また、外出先から施錠状態を確認できるため、鍵の閉め忘れにも簡単に対応できます。
錠そのものをスマートロック対応の製品に交換するのが一般的ですが、室内のサムターンにかぶせるような形で後付けできるものもあります。
高度なものでは、顔認証や指紋などの生体認証をシステムに組み込んだものもあり、建物のオートロックと連携してセキュリティ化に貢献するものもあるようです。
ワイヤレスドアホン、ネットワークカメラ

ドアホンのカメラをネットワーク接続し、外出先から来訪者に対応できる製品があります。
急な来客や宅配便の対応をするほか、スマートロックと組み合わせて、帰宅した子どもと会話をしつつ迎え入れるといったこともできます。
リアルタイムで対応しなくても、来訪者の姿を録画することで防犯性を高めるといった使い方も可能です。ドアホンだけでなく、各所の防犯カメラをネットワーク接続して利用することで、どこにいても自宅周辺の様子を確認できます。
また、室内に設置したカメラで、子どもやペットの様子を見るといった使い方もできるでしょう。
スマートスピーカー、家電リモコン
スマートスピーカーとそれに連動した家電リモコンはスマートホーム化の代表的なものでしょう。
音声を認識して、対応するさまざまな家電を声で操作することができます。
照明を点けたり消したり、エアコンの温度を設定したりすることや、スマホやパソコンと連携して、声だけで家族や友人に電話をかける操作をする、メッセージを送るといった使い方もできます。スマートスピーカー自身がインターネット上のコンテンツにアクセスできるので、音楽やニュースを流すこともできます。
スマートスピーカーの音声認識の精度が年々向上し、連携できる製品も増えてきています。スマートスピーカーによる家電操作を軸としたスマートホーム化が主流になるという意見も多いようです。
近年は声で操作をしなくても、AIによる自動の運用も実用的になりました。起床時間に合わせて自動でカーテンを開けたり、誰かがテレビの前に来たら自動でテレビのスイッチを入れるといったことが可能なシステムもあります。
しかも、あらかじめカーテンを開ける時刻を設定しなくても、AIが、毎日の起床時間を記録して「いつもの時間」に動作するようになっているのです。
また、住居内の家電がネットワークに接続されたことで、遠隔での操作ができるようになったのも革新的です。
帰宅する前にあらかじめエアコンを入れて室温を快適にしておいたり、お風呂を沸かしておくといったこともできるようになっています。
賃貸物件の管理面から見たメリット
オーナーにとってはセキュリティ面の向上が大きい
ここまで、IoT機器によるスマートホーム化のメリットなどを見てきました。居住者にとって、スマートホーム化が魅力的であることは間違いありませんが、では、賃貸物件のオーナーから見るとどうでしょうか。
スマートホーム化された賃貸物件は、それ自体が人気ということに加え、高度なセキュリティを施すことができるという点で、賃貸オーナーにとってもメリットがあります。
スマートロックを導入することにより、物件のセキュリティが飛躍的に向上します。
建物エントランスのオートロックだけでなく、各部屋のドアもオートロックにすることができます。
また、防犯カメラなど、ほかのセキュリティ設備をIoT化することもできます。
カメラをネットワークに接続すれば、リアルタイムに物件の様子を確認できますし、窓にとりつけて開閉や振動を感知する装置を導入すれば侵入対策にもなります。
ネットワークカメラは1万円前後で導入できる安価なものもあります。防犯カメラは数十万円することもあった、防犯カメラに比べて格段に安く、防犯性を高めることができる点は大きなメリットでしょう。
今後はスマートホーム化されていないことがリスクになる可能性も
賃貸物件においては、陳腐化を防ぐために入居者に好まれる設備を導入する必要があります。しかしながら、高価な設備を導入するのはかなりの負担になります。
賃貸住宅のスマートホーム化は、一般的な住宅設備よりも安価で、快適で便利な生活を提供しているイメージをつけることができます。
また、セキュリティという強みを打ち出すことで、空室対策にも大きく寄与するでしょう。
スマートホームに関連した機器はたくさん開発されており、技術革新が進んでいます。今後、スマートホーム化がより一般的になっていけば、スマートホーム化されていないことで大きく後れを取るという可能性もあるでしょう。そうなるまえに、スマートホーム化への対応を準備しておくのは、ムダにはならないはずです。