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スマート内見で内見業務の負担削減は実現するのか。内見をスマート化させるポイント

不動産会社にとってモデルハウスや賃貸物件の内見は欠かせない重要な業務ですが、慢性的な人手不足や必要な手順・工数が多いことから大きな負担になっていることも事実です。

不動産会社がかかえる課題について検討してみます。

不動産業は慢性的な人手不足

不動産業では1つの事業所に勤務する従業者数が減少傾向にあり、慢性的な人手不足になっています。

東京都中小企業診断士協会城南支部財務診断研究会が発表している「令和4年業種別形成指標」のデータを参照してみましょう。

下のグラフは、一事業所ごとの従業者数の変移をグラフ化したものです。

不動産取引業、不動産賃貸管理業ともに平成16年以降上下の波はあるものの全体として従業者数が減少傾向にあることがわかります。

特に不動産賃貸管理業は平成20年の7.5人をピークに令和4年は4.0人と大きく従業者数が減っています。

不動産取引業従業者数の変移

「令和4年業種別形成指標」より

不動産賃貸管理業従業者数の変移

「令和4年業種別形成指標」より

限られた従業者数で行う業務の課題

このように減少傾向にある従業者が行う業務は多肢にわたっています。

限られた従業者で行う業務の課題はなにかをみてみましょう。

CHINTAIがアンケート調査を行った結果を同社のHP(2022.03.28)「賃貸仲介業務の課題感を調査!経営者は今何を考えている?」で公表しているので、こちらを引用して紹介します。

なお調査概要は下記のとおりです。

インターネット調査(2020年2月27日(木)~3月10日(火))

調査対象者条件

  • 全国20歳以上の男女
  • 個人向け賃貸物件の仲介をメイン業務としている
  • 課⾧クラス以上の方/経営者層の方

有効回答数:180件

CHINTAI「賃貸仲介業務の課題感を調査!経営者は今何を考えている?」より

空室状態を確認するための電話や電話をかけても相手が電話に対応しないため何度もかけなおさなければならないために多くの時間がとられていることが課題になっているようです。

また、サイトの情報は更新しなければならないものの更新に手間がかかったり初稿を考えたりするために時間をとられることも課題になっています。

FAXなど紙ベースで受け取った情報では入力しなおす必要があるので、こちらも手間に感じる方が多いようです。

物件管理をする会社では、自動で物件確認ができるサービスの導入などが進んでいますが、賃貸仲介店舗では自動化は難しいようです。

CHINTAI「賃貸仲介業務の課題感を調査!経営者は今何を考えている?」より

反響は多いものの実際の来店につながっていないこと、反響数が多いものの質問されることが多いため回答や対応に時間がとられることが課題になっています。

また、反響がどのような経路(電話やメールなど)からされているか、どの媒体からの反響が多いのかなどの分析・管理が十分できていないことも課題にあがっています。

CHINTAI「賃貸仲介業務の課題感を調査!経営者は今何を考えている?」より

追客は従業者ごとの経験値によって左右される性質がつよく、社内で統一した基準をつくるマニュアル化やルール化が難しいようです。顧客にあった物件を紹介する物件選びも課題になっています。

負担が大きい内見業務

不動産業務の現場では、従業者数が減少している中でいろいろな課題を抱えていることがわかりましたが、不動産業務の中でも特に内見業務は大きな負担になっているようです。

内見業務では、物件確認、追客、予約調整、現地での鍵の受け渡し、現地での内見案内など時間がとられる業務が多いためです。

一例として鍵の受け渡しについてみてみましょう。

現状一般的に行われている内見のための鍵開け方法は以下の3つです。

  1. 管理会社が仲介業者の連絡を受けて現地で鍵を開ける
  2. 仲介業者が管理会社に行って鍵を預かり現地の鍵を開ける
  3. 現地のキーボックスなどに鍵を保管しておき仲介業者が鍵を開ける

仲介業者や管理会社のそれぞれの視点から次のような課題がうかがえます。

仲介業者の場合

いずれの方法でも仲介業者は現地に行くことになるので、遠隔地であれば内見だけでも半日とられてしまうこともあります。

内見では時間がとられるので1日に内見案内できる数も限定されます。

さらに管理会社が鍵を保管していれば現地だけでなく管理会社にも行かなければならず、他の内見希望者との日程調整も必要になります。

管理業者の場合

管理している会社では、複数の内見希望があった場合の日程調整や鍵のスムーズな受け渡しに時間をとられます。

多くの管理物件を扱っていて鍵を保管していれば、内見希望が多い土日や祝祭日には仲介業者がひっきりなしに訪問するので対応が大変であり、現地での案内が必要な場合にはさらに時間がとられてしまいます。

現地に鍵を保管する方法をとっている場合には、鍵の不正使用を防ぐために頻繁に暗証番号を変更しに現地に行くことになります。

消費者は、現地の物件を見たいと思っている

不動産業者からすれば負担が大きい内見ですが、消費者は実際に現地を訪問し内見したいと思っています。

MMD研究所が2021年7月14日公開している「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」の結果を引用して紹介します。

調査概要は下記の通りです。

調査期間:2021年6月11日~6月25日

有効回答:予備調査6,540人、本調査430人

調査方法:インターネット調査

調査対象:<予備調査>18歳~69歳の男女・<本調査>オンライン内見経験者

設問数  :予備調査5問、本調査5問

コロナ下で物件探しは減少したが持ち直し

調査の結果、新型コロナウィルスが流行した2020年4月以降に物件を探した方は17.7%、物件探しをしていない方は82.3%となっています。

物件を探した時期では、2021年4月~6月が最多で35.6%、2021年1月~3月が27.6%と続いています。

2020年に物件を探した方は36.8%でしたが、2021年では63.2%となっています。

MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より

コロナ下でも物件を直接みたい

コロナが流行している時期であっても必要に迫られて物件を探さなければならない事情があるものですが、なるべく人と直接会うのは避けたい意向は強いようです。

物件を内見した方法を複数回答で求めたところ、実際に訪問して物件の内見をした方は63.0%でありオンラインでの内見は37.9%でした。

コロナ下であっても、住まいはできるだけ長く住み続けるやすらぎの場なので、実際に目で見て確認したいという欲求が強いのでしょう。

MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より

オンラインでは物件のアピールが足りていない

オンライン内見では実物の良さを十分に伝えきれていないようです。

オンライン内見で物件を決めた方を対象にして実際に物件をみたときのオンライン内見とのイメージの違いを尋ねたところ、実際の方がオンライン内見よりも良かったとこたえた方は54.2%となり、オンライン内見では実際の体験で感じる良さを十分に伝えきれていないことがうかがえます。

MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より

実際に内見をしてみたい方が多い

オンライン内見経験者にあっても実際に内見をしたいと希望する方が多いことが調査の結果わかりました。

オンライン内見経験者430人を対象にした、今後もオンライン内見を利用するかとの設問に対して、オンライン内見だけで物件を探すとした方は37.4%であったのに対して、実際の内見とオンライン内見の両方を利用するとした方は52.3%、オンライン内見はもう利用しないと回答した方は8.6%となっていました。

MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より

消費者が自ら内見する「スマート内見」の仕組み

ここでは、新型コロナウィルス流行下であっても不動産を探したい方、できるだけ実際に現物をみてから決めたいと思っている方にとってメリットが大きいスマート内見について解説します。

実はスマート内見は不動産会社にとっても大きなメリットがあります。

実物をみたいが対面形式には抵抗を感じている

消費者にとって、オンライン内見だけでなく実際に現物をみてみたいとの欲求が強いことが前章の調査でわかりましたが、対面形式の内見には抵抗感があるようです。

株式会社頼人が1年以内に戸建て住宅を購入または購入を検討した方に実施したアンケート調査の結果を引用して紹介します。

【コロナ時代の非対面サービス】無人モデルハウス見学システム「スマートモデルハウス」リリース

調査概要

調査方法:WEBアンケート

調査対象:1年以内に戸建住宅を購入・購入検討した男女

有効回答数:216

調査実施日:2021年1月26日

調査主体:株式会社頼人

こちらの調査によると98%の方が実際に実物を見ないと実感がわかないと回答している一方で、93%の方が対面形式では気軽に見学しづらいと感じているようです。

対面形式だと見学しづらく感じる理由は以下のようになっています。

  1. しつこく営業されそう〔50%〕
  2. 具体的に購入が決まっていないため申し訳ない〔40%〕
  3. コロナ禍で対面型が怖い〔37%〕

スマート内見がニーズにこたえてくれる

スマート内見なら、実際に実物をみてから決めたいものの対面形式の内見には抵抗を感じている消費者と、人手不足で内見工数を減らしたい不動産会社の双方のニーズにこたえてくれます。

新築のモデルハウスや内見対象の売却物件に最新のIoT機器を設置すればスマート内見が可能になります。

不動産会社にはスマート内見にすることで次のようなメリットがうまれます。

  1. 複数の現地案内が同時に可能
  2. 遠隔地でも管理が可能
  3. 祝祭日や夜間の現地案内も可能
  4. 動画提供などでトップセールスによる案内が可能
  5. 顧客情報を自動収集してくれるので追客の効率化が可能

また消費者には次のようなメリットがあります。

  1. 家族だけなので小さい子どもがいても気軽に内見できる
  2. 営業担当者に気を使わなくてよい
  3. 感染症の不安がない
  4. 休日や夜間でも内見できる
  5. 聞きたいことがあればスマートテレビなどで質問できる

スマート内見の手順

内見希望者は次のような手順でスマート内見を行います。

  1. 不動産会社のサイトで内見を予約する
    1. 内見希望日時を入力
    2. 個人情報を入力
  2. 登録したメールアドレスにスマートロックのアプリをダウンロードするよう案内が届く
  3. スマートロックアプリをインストール
  4. 予約した日時に現地に行く
  5. スマートロックアプリで玄関ドアを解錠
  6. 内見をする
  7. スマートロックアプリを使って施錠して帰宅

スマート内見ではスマートロックを利用するため現地に鍵を届けたり、現地のキーボックスに鍵を保管したりする必要がありません。

また、キーボックスの暗証番号を変えるために現地を訪問することもなくなります。

スマート内見導入は、スマートホーム提供会社に相談

以上のように、消費者・不動産会社双方にとってメリットが多いスマート内見です。

スマート内見に利用するスマートホーム機器は後付け可能で比較的安価に設置できます。

しかし、スマートホーム機器同士の相性などもあり、せっかく設置したIoT機器を十分に活用できないケースがあるので、スマート内見を検討するときにはスマートホームサービス提供会社に相談してください。

スマートホームサービス提供会社では、いろいろなスマートホームを提供している実績から現地に最適なスマートホームシステムを提案できます。

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