変わる不動産会社のマーケティング。求められているテクノロジーや集客方法とは
IoTやAI、ビッグデータ、ブロックチェーン、5Gなど、「100年に一度の技術革新」と呼ばれている現在、不動産会社に求められる営業スタイルやマーケティング手法も大きく変化しています。今回は、不動産会社を取り巻く営業やマーケティングの現状と課題を整理し、求められるテクノロジーとマーケティングや集客方法を紹介します。

不動産業界のマーケティングとは
不動産業界の集客を目的とした広告・マーケティングは、アナログ的な手法と、Webなど活用したデジタル的な手法の2つがあります。具体的にはどのような手法が活用されているのか、またその現状について考えてみましょう。
不動産業界の広告宣伝比率
不動産会社と顧客と繋がる手法において、広告は欠かせません。
不動産業界の広告宣伝比率はどのくらいなのでしょうか。
広告宣伝費率とは、売上に対する広告宣伝費の比率・割合のことで、不動産業界全体では約4%です。2019年11月期時点の、大手不動産会社4社の広告宣伝費率を見ると、野村不動産ホールディングスが3.21%、住友不動産が2.10%、三井不動産が1.14%、三菱地所が0.88%となっています。
<参照ページ>
販促の大学「業種別・業界別広告宣伝費(販促費)の売上比率・割合の平均は?最適な広告予算を立てよう」
リビンマガジンBiz「不動産業界 広告宣伝費ランキング2020」
不動産業界では四大媒体の広告費が減少している?
大手広告代理店の電通が発表している「2020年 日本の広告費|業種別広告費」を見ると、不動産業界における四大媒体を活用した広告費は年々減少傾向にあることが分かります。
四大媒体とは、新聞・雑誌・ラジオ・テレビを指します。

不動産業界での四大媒体の広告比を前年比の推移でみると、2019年度は93%、2020年度は87%となっています。かつては広告媒体として大きなシェアを持っていた四大媒体ですが、新聞購読世帯の減少や、テレビの視聴者がインターネットやYouTubeなどに流れることで、従来の媒体の広告は苦戦しているようです。
アナログな不動産業界の広告・マーケティング手法
不動産業界でも四大媒体の広告比が減少している一方で、未だにアナログな広告・マーケティング手法を取っている企業はたくさんあります。
・ポスティング
昔からあり、未だに活用されている集客方法です。営業担当や外部委託のスタッフがマンションやアパートなどの複数世帯の集合住宅をメインにチラシをポストに投函します。
しかし、営業担当者の労力や時間的コスト、印刷代などのコスト面がネックであり、何枚ポスティングすればどれぐらいの反響があるのかなど、見込みも立ちづらい手法と評価されることもあります。また、近年ではポスティング禁止を謳ったマンションも増えており、そういったところにもポスティングを行うことで、クレームに繋がるケースも多いことから、ポスティング活動を止める不動産会社も増えてきています。
・新聞折込チラシ
こちらも昔ながらの集客方法で、新聞読者向けにチラシを入れる方法です。ただし、インターネットが普及した昨今、新聞読者は減少し続けている状況では、昔ほどの有効な広告方法ではなくなりつつあります。

・雑誌の掲載
コンビニやスーパーマーケットなどに置いている、無料の住宅情報誌で集客する方法です。物件が掲載されるまでにタイムラグが生じることと、掲載費用などのコスト面の問題があります。
・DM(ダイレクトメール)
過去に接客した顧客やリストに記載された住所に、郵送でDMし集客する方法です。DMでは物件の購入客だけではなく、売却客を発掘する効果も狙っているチラシなども多く、不動産売買が比較的活発な分譲マンションをターゲットにしている事例も多いです。
不動産で求められるWeb集客・マーケティング
一般の消費者がニュースや情報と触れる機会は、テレビや新聞から手元のスマートフォンへと移り変わっています。
そのため、これからの集客・広告手法はインターネットに対応することはもちろん、スマートフォンへの対応が必須であり、スマートフォン画面でいかに情報がわかりやすく伝えるかが重要となっています。Web集客についても、スマートフォン対応が必須です。
例えば下記のような手法は、これからは当然のように活用しなければなりません。
・ホームページ(HP)
企業の顔ともいえるHPは、消費者が企業を知るための重要な役割を担っています。例えば、ポータルサイトを使って企業に問い合わせした際、その後企業のHPにアクセスしてどういった会社なのかを知る、といった消費者も多いため、スマホに対応した綺麗なHPを用意しておくことをおすすめします。
また、ブログやコンテンツを発信することで、検索エンジンに特定のキーワードで上位表示することができれば、自社HPで集客することも可能です。
・ポータルサイト
SUUMOやホームズなど、不動産ポータルサイトを使用した集客方法です。20年ほど前からある方法ですが、未だにユーザー数も多く、効果的な集客方法です。その分、掲載物件数も多く、他社との差別化をどのように図るかが課題となります。
・SNS
近年、特に重要視されている情報発信型の集客方法です。Facebook、Twitter、Instagram、TikTokなどのSNSを使用し、投稿など、情報発信をすることで、ユーザーと相互コミュニケーションを図ることが可能です。
特に、Instagramをはじめとした画像や写真をメインとしたSNSと不動産の相性は良く、物件の内観写真や特徴的な風景などを発信することで、企業への関心も高まるでしょう。
不動産業界で求められる新しいマーケティング戦略
今後さらに、様々な広告・マーケティング手法や技術が世の中に生まれていくなかでは、不動産業界も常に変化を求められるようになります。
これからのマーケティング手法としてどういったものが求められていくのかを、不動産業界がこれから直面する課題とともに考えていきましょう。

不動産業界が抱える営業課題とは
・顧客となる人口の減少
日本経済の将来において、最重要課題は急激な人口減少です。それは、不動産業界も例外ではありません。
内閣府が発表した「内閣府令和3年版高齢社会白書」データでは、日本の人口は、令和2年10月1日現在、1億2,571万人でした。
これが、令和35年には1億人を割って9,924万人となり、さらに令和47年には8,808万人になると推計されています。当然、人口減少とともに不動産マーケット全体も縮小することになると懸念されています。人口から単純計算すると、30数年後には現在の約8割、40数年後には約7割に縮小することになるのです。
つまり、今後少なくなる顧客層に対して、いかに効率的で無駄のない集客や接客ができるかが重要なポイントになってくるのです。
・不動産業界の特有の営業課題
企業のブランディングやコンサルティングを提供するブランディングテクノロジーが行った「不動産売却の営業活動実態調査」では、不動産会社が抱える営業課題に関するアンケート結果を発表しています。
同調査において、中小不動産会社の最も多い営業課題として、「見込み管理と追客営業」が挙がりました。他の業界とは異なり、不動産業界は業者同士の競争が激しく、同じ物件を奪い合う構造となっており、そもそも案件数や物件の問い合わせ自体が少ないといった特徴があります。また、商品(物件)の単価が極めて高く、契約が成立するまでには長い月日を要します。
こういった背景から、集客した顧客を手間をかけずに長期的に追客する方法が求められているようです。
不動産業界のWebマーケティング戦略
競争が厳しい不動産マーケットで勝ち残る不動産会社を目指すには、戦略的な集客やマーケティングを行い、見込み客の管理と長期追客が可能な営業体制にしなければなりません。
具体的にはどのような方法があるのでしょうか。
①SNS
SUUMOなどの大手ポータルサイトも今やSNSの公式アカウントを取得し広告する時代です。下記の特徴の通り、不動産との相性も良く、SNSを継続的かつ有効に活用できれば、営業の武器となります。
・ビジュアルでユーザーを惹きつけることができる
ビジュアルで物件の内観や外観をアピールすることが可能です。ハッシュタグを活用すればさらに広告効果が上がります。特にInstagramは、写真や動画をベースにしたSNSですので、より広告効果の高い情報発信が期待できます。
・拡散力がある
SNSの投稿や情報は拡散され、多くのSNSユーザーの目にとまる効果が期待できます。フォロワーが増えれば、さらに拡散効果も高まります。その中でも特にTwitterの拡散力は高いといわれています。
・潜在ニーズ(ユーザー)を発掘できる。
SNS使用中のユーザーが、偶然にも物件の広告を目にしたことで、不動産会社に問い合わせをする事例もあります。潜在的な見込客を増やす効果が期待できるやり方です。
・相互のコミュニケーションが可能
SNSで定期的に情報発信することで、フォロワーができることや、メッセージ機能でユーザーと直接やりとりすることも可能です。またユーザー同士の新しいつながりが生まれる効果もあります。
➁運用型広告
運用型広告は、広告枠を買う「純広告」とは異なり、ターゲットや広告単価などが最適化されたネット広告の配信方法です。Googleの検索連動型広告(リスティング広告)やディスプレイ広告、YouTube広告、各SNS広告などがあります。現在のネット社会では、Googleなどの検索エンジンを使用し、「わからない情報を調べる」ことが当たり前の時代ですので、ユーザーが検索エンジンを使用した際、画面上部に表示される広告は、ユーザーにとってインパクトのある広告です。
③マーケティングオートメーション(MA)ツール
顧客管理や長期追客を行う方法として、マーケティングオートメーション(MA)ツールの活用も注目されています。MAツールとは、新規や既存顧客の集客から自動的な追客、顧客管理などを自動で行うことができるツールです。
最近では、不動産業界に特化したMAツールなども登場し、徐々に業界で普及しつつあります。
これからの不動産業界にはブランディングも必要
リビン・テクノロジーズが2018年に実施した「不動産事業者のイメージ」調査では、一般消費者が不動産会社に対して持つイメージについてアンケートし、発表しています。
同調査では、1位が「口が達者」(46.5%)、2位「しつこい」(35.5%)、3位「強引」(28.5%)と続き、不動産事業者のイメージはあまり良くない結果であることがわかります。
今後、不動産業界ではマーケティングに力を入れていくとともに、ブランディングマーケティングにも注力しなければならないかもしれません。
イメージ低下は不動産業界の人手不足につながる
不動産業界のイメージをこのまま放置すると、日本の人口減少や少子高齢化とともに、不動産業界の人手不足はより深刻になる可能性が極めて高まります。また後継者不足が話題となっている状況からも、各不動産会社は人手不足に対して具体的対策をとらなければ、事業廃業の事態に発展しかねません。
不動産業界でのブランディング方法とは
今後、現在の不動産業界のイメージを払拭するためには、業界全体でブランディング戦略をしっかり推進することが必要です。また、各不動産会社では、他社とは異なる付加価値を追求し、自社のブランド価値を上げて、他社との差別化を図らなければなりません。自社の強みを生み出すことが重要でしょう。
ここ数年の不動産業界を見ても、不正融資や違法建築、地面師事件、囲い込みなど、様々な報道やニュースが不動産業界のイメージダウンに繋がっています。
不動産業界にある旧態依然とした商慣習から見直して、業界イメージを払拭していくことが重要なのです、
不動産業界のDX活用
イメージダウンの要因として、他の業界に比べて不動産業界がDX(デジタルトランスフォーメーション)が遅れ、アナログ業界だといわれいる点もあります。
近年、IT重説が可能となったように、DXに向けた動きは活発化してきている一方で、実際に活用している不動産会社がまだまだ少ないのが現状です。
IoTを活用したスマートロックやVRを利用した物件の内覧、AIを活用した物件査定など、従来営業マンが担っていた役割を、最先端のデジタル技術に置き換えるといった動きも普及していれば、業界に対するアナログなイメージもなくなっていくでしょう。
DXはこれまでの業務を効率化し、少人数でも業務を進めることができるメリットもあり、人手不足への対応も可能です。また、オンライン接客やオンライン内覧により、遠隔地のユーザーを取り込むことが可能で、営業面のチャンスも増えています。不動産業界のDXの流れに乗り遅れずに、DXを活用したビジネスモデルを模索することも、大切なブランディングマーケティングなのです。