IoTの普及率。世界と比べて日本では普及しないと言われる理由

日本ではIoTの普及率はどれくらいなのでしょうか。
海外と比較として、日本はIoT・スマートホームの普及は進んでいるのでしょうか。IoTの普及が進まない理由についても考えてみましょう。
日本ではIoT家電の普及率はどれぐらい?
日本におけるIoT家電の市場は毎年成長しており、今後も拡大が続くと予測されています。
しかし、世界と比べると、日本におけるIoT家電の成長率と普及率は遅れをとっています。
ここからは、2019年~2023年までのIoT家電の動向とIoT家電が普及している背景について、詳しく解説していきます。また、2030年はIoTデバイスがどの程度増えているのかについても、紹介していきます。
世界と日本におけるIoT家電の販売実績と普及率
IT専門の調査会社であるIDCJapanによると、日本におけるIoT家電の予測出荷台数は、2023年で約1,353万台と発表しています。
2019~2023年の年間平均成長率は11.8%で、市場の拡大は続くと予想されています。
ただし、世界全体での年間平均成長率は16.9%なので、日本の市場成長は遅れているようです。
野村総合研究所の調べによると、2019年時点での日本のスマートスピーカーを保有している世帯は約7.6%で、2025年には約39%に上昇すると予測されています。
一方、アメリカでは成人における普及率が2019年時点で25%を超えているため、こちらも日本のIoT家電の普及率はまだまだ低いという結果でした。
日本でIoT家電の普及が遅い理由については後述しますが、今後日本でもIoT機器やスマートホームの需要は高まってくると考えられおり、市場も拡大していくと見られています。
日本でIoT家電の需要が高まっている背景
日本でIoT家電への需要が高まっている理由は、生活利便性や住環境の向上だけでなく社会的な問題も背景にあります。
男女共同参画白書(平成30年)によると、2017年の共働き世帯は1980年の約1.9倍に増加しています。夫婦のお互いが家にいる時間が減ることで、家事の負担を減らすためにスマート家電を導入するニーズが増えているのです。
また、総務省の「親族世帯数に占める核家族化世帯数の比率の推移」によると核家族世帯も将来的に増加していくとされています。
2015年時点では全世帯の85.4%が核家族であったのが、2035年には89.0%まで増加する見込みです。
遠隔地に住む両親の健康状態を把握するために、見守り型のIoT家電を導入するケースも増えています。
高まるIoT家電への需要には、日本が抱える社会的な課題も要因になっているのです。
2030年のIoTデバイス数
世界の金融市場データや情報サービスを提供するIHS Markitによると、全世界のネットワークに接続されたIoT機器の数は、2017年の約270億個から2030年には約1,250億個と、5倍近く増加すると予測しています。
また、2017年からの15年間で、全世界でやり取りされるデータ量の年平均成長率は約50%になる見通しです。
IoT化への急速な動きは、原材料から生産、流通、消費に至る全ての市場に影響を与えています。
これは、人間と機械や情報など相互にやり取りをする方法の変化が絶えず進化していることを示しています。
日本の住宅でIoTの普及が難しい理由
先述したように、日本の住宅でIoTの普及が送れていますが、その理由について考えてみましょう。
IoT製品の中には中古物件への導入が難しい場合や、そもそもIoT製品を導入するメリットが少ないケースもあります。
中古物件への導入が難しいIoT家電もある
IoT家電の中には、中古物件への導入が難しいものもあります。
IoT家電はインターネットに接続されている必要があるので、大前提としてインターネット環境が整備されていない物件では使用できません。
また、エアコンやインターホン、給湯器など自分では導入が難しいIoT家電もあります。
自分で取り付けられない場合は、専門の業者に取り付けをしてもらわなければなりません。中古物件では新築時とは違い、既存の製品を取り外す必要があるため、工賃は高くなる傾向があります。
その他にもスマートロックを取り付けるドアの型が古い場合は対応できないケースや機器を収納するスペースがないため不格好になってしまうといったこともあるため注意が必要です、
日本の賃貸物件でIoTが普及しない理由

賃貸物件の場合は、入居者の意向だけでは導入できないIoT製品があります。
エアコンや給湯器などの備え付けの設備や共用部のものなどは、オーナーや管理会社に決裁権があるからです。
IoT機器の導入するための費用は、物件のオーナーが負担するケースがほとんどです。そのため、導入に前向きではないオーナーも多いです。また、導入で負担したコストを回収するために家賃が上がる可能性もあります。
IoT製品が普及しているアメリカと比べると、日本は犯罪率が低く住宅の面積が狭い傾向にあります。
日本の狭い住宅事情や犯罪発生率を考慮すると、IoTの設備を導入しても入居者はあまりメリットを感じられません。日本の賃貸住宅ではIoT導入によるメリットが少ないので、不動産のオーナーや管理会社はIoT製品への設備投資に対して前向きな人は多くありません。
IoTが普及した社会像と政府の取り組み
IoTを普及させるために、日本政府は5Gの開発を進めています。
膨大なデータをやり取りして多数のIoT機器を同時接続することは、従来の4Gではできないからです。
ここからは、5Gの開発計画とIoTが社会に普及した将来像について解説していきます。
IoTを普及させるには5Gの展開が不可欠
IoTを普及させるには、5Gの展開が不可欠です。
今後ネットに接続される機器は、スマホなどの通信機器よりもIoT機器の方が圧倒的に多くなると予測されているからです。5Gとは「第5世代移動通信システム」のことで、4Gと比べると超高速・超低遅延・多数同時接続といった特徴があります。
従来の4Gでは、家電や自動車などが全てインターネットにつながったとすれば、接続数が上限を超えてしまいます。また、自動運転車などのリアルタイムな通信が不可欠な技術は、遅延による問題もあり実用化ができない状況でした。IoTの普及には、膨大な通信量をカバーできてリアルタイムな通信ができる5Gの整備が不可欠です。
日本政府が発表している5Gの普及に関する指針
令和2年版の「情報通信白書」によると、今後の5Gエリア展開について開発計画の審査基準が定められています。
具体的には2018年から5年以内に5G基盤展開率を50%以上とし、2年以内に全都道府県で5G高度特定基地局の運用を開始することとされています。
携帯電話事業者が提出した開設計画によると、4社の計画を合わせた全国5G基盤展開率は98.0%です。
これは、5年後には日本全国の事業可能性があるエリアほぼ全てに、5G基盤が展開される予定であることを示しています。
IoTが社会に普及した将来像

令和2年版の「情報通信白書」によると、今後の日本はデータ主導型の超スマート社会に移行していくとされています。
IoTから収集された膨大なデータをもとにサイバーフィジカルシステム(CSP)が進展し、様々な社会課題の解決と経済成長が期待されます。CSPとは現実(フィジカル)世界で収集された膨大なデータを、仮想(サイバー)空間で定量的に分析することで効率化を進めるシステムのことです。
自動運転に関してはドライバーの経験や勘ではなく、外的な数字を合わせた客観的なデータをもとに自動車を制御します。自動運転の技術が進歩していくことで、人間が運転するよりも安全な機能になるとも考えられています。
また、どこにいてもオフィスにいるのと同じ環境で仕事ができるようになります。
離れた場所にいる上司や同僚、取引先とリアルな体感でコミュニケーションができます。
居住地を問わずに業務を継続できるだけでなく、出張や旅行の移動時にも支障なく業務をこなせるようになります。デスクワークのみならず工場勤務やサービス業でも、ロボティクスやアバターを通して自宅にいながらの勤務が可能になるでしょう。