IT補助金を徹底解説。手続きの方法や導入できるツールとは?

IT導入補助金とはどういった制度?
IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)は、中小企業や小規模事業者を対象とした、業務効率化を目的としたITツール導入のコストを一部支援してくれる制度です。
この場合の「ITツール」とは、勤怠管理や業務効率の向上を推進するシステムやソフトウェアを指します。費用・コストの問題でITツールの導入に踏み切ることができなかった企業にとっては、社内のIT化を推進する追い風となる制度です。
詳細は後ほど紹介しますが、補助の金額と補助率を下記にまとめました。
通常枠 | 低感染リスクビジネス枠(特別枠) | ||||
種類 | A類型 | B類型 | C類型-1 | C類型-2 | D類型 |
補助金申請額 | 30万~150万円未満 | 30万~450万円以下 | 30万~300万円未満 | 300万~450万円以下 | 30万~150万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | 2/3以内 |
管轄は経済産業省で、補助金のため返済不要の資金ですが、支給要件を満たしていても審査に通過する必要があります。
IT導入補助金制度はいつから始まった?申込みのスケジュール
IT導入補助金は2017年から始まった制度で、2021年で5回目です。
申請スケジュールは複数段階の締め切りが設定されています。
交付申請のスケジュール通常枠と特別枠ともに、2次締切で7月30日(金)の予定になっています。3次締め切り以降の予定については2021年5月現在で、9月中と発表されているだけで詳細な日程は決まっていません。通常枠と特別枠があり、それぞれ「交付決定日」「事業実施期間」「報告期間」が異なります。
IT導入補助金の通常枠・特別枠とは
IT導入補助金には通常枠と特別枠があります。
それは、導入するITサービスがどういった目的のもであるかで分類されます。
IT導入補助金の対象となるITツールは、下記のように3つの大分類と、9つの小分類にカテゴライズされます。
(図1)
大分類Ⅰソフトウェア | 大分類Ⅱオプション | 大分類Ⅲ役務 | |
小分類 | カテゴリー1:単体ソフトウェアカテゴリー2:連携型ソフトウェア※C類型申請用 | カテゴリー3:拡張機能カテゴリー4:データ連携ツールカテゴリー5:セキュリティ | カテゴリー6:導入コンサルティングカテゴリー7:導入設定・マニュアル作成・導入研修カテゴリー8:保守サポートカテゴリー9:ハードウェアレンタル※C・D類型申請用 |
また、大分類Ⅰ「ソフトフェア」内のカテゴリー1「単体ソフトフェア」、カテゴリー2「連携型ソフトウェア」には下記の図のようにプロセスが設定されており、申請するサービスによって必要なプロセス数が異なっています。
(図2)
種別 | Pコード | プロセス名 | |
業務プロセス | 共通プロセス | 共通P-01 | 顧客対応・販売支援 |
共通P-02 | 決済・債権債務・資金回収管理 | ||
共通P-03 | 調達・供給・在庫・物流 | ||
共通P-04 | 会計・財務・経営 | ||
共通P-05 | 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス | ||
業界特化型プロセス | 各業種P-06 | 業種固有プロセス | |
汎用プロセス | 汎P-07 | 汎用・自動化・分析ツール | |
(業種・業務が限定されないが生産性向上への寄与が認められる業務プロセスに付随しない専用のソフトウェア) |
これらの前提条件を踏まえて通常枠(A類型・B類型)・特別枠(C類型・D類型)について解説します。
通常枠・A類型
A類型は、(図2)の共通プロセスのうち共P-01~各業種P-06から必ず1つ以上の業務プロセスを担うITツール・ソフトウェアである必要があります。補助金額が30万円以上150万未満であることが条件です。
通常枠・B類型
B類型は、(図2)の共通プロセスのうち共P-01~各業種P-06から必ず4つ以上の業務プロセスを担うITツール・ソフトウェアである必要があります。補助金額が150万円以上450万円以内であることが条件です。
特別枠・C類型
特別枠とは、コロナウイルスによる影響を鑑み、ビジネスの非対面化やテレワーク環境の整備に関するクラウド対応ツールなどを導入する際に利用することができます。
C類型は、業務上の非対面化を前提とした情報共有や連携を行うことで労働生産性の向上を目的とするもので、連携型のソフトウェアやITツールを導入する際に選択されます。
(図2)の共通プロセスのうち共P-01~汎 P-07から必ず2つ以上のプロセスを保有するソフトウェアであることが必要です。
C-1型が30万円以上300万円未満、C-2類型が300万円以上450万円以内であることが条件です。
特別枠・D類型
C類型と同様に、業務の非対面化やクラウド対応を前提として、遠隔地などでの業務を可能とすることで生産性の向上を目的とするものです。補助金額が、30万円以上150万円以内であることが条件です。
詳しい分類や各条件に関してはIT導入補助金の公式ページをご確認ください。
IT導入補助金が補助するITツールの条件
IT導入補助金の対象となるサービスは、IT導入補助金制度において、経済産業省が「IT導入支援事業者」として採択された事業者が提供するサービスに限られます。
IT導入支援者とITツールは随時追加されていくため、後半に申請する方が、ITツールの選択は広がります。具体的にどんなツールを導入し、どのように業務改善を行っていくか決まっている場合は、後半に申請する必要はありません。
IT導入補助金の申請方法

IT導入補助金の申請は、導入する企業と選択されたIT導入支援事業者が共同で行います。
交付申請を行う前に準備が必要です。
①IT導入支援者とITツールを選択する
まずは、ITツールを導入する目的に従って、IT導入支援事業者とITツールを選択します。
下記ページから確認することができます。
IT導入支援事業者・ITツール検索 | 中小企業・小規模事業者のみなさま | IT導入補助金
②申請に必要なアカウント取得
申請には「GビズID(gBizID)プライムアカウント」の取得が必要です。
GビズIDとは、補助金や行政手続きの電子申請において必要となるアカウントです。
gBizIDのホームページより取得が可能ですが、発行までは2週間程度の時間がかかるため、早めに申請することをおすすめします。
また、IT導入補助金の交付申請には、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要です。「SECURITY ACTION」とは、中小企業・小規模事業者が自らセキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言することが要件です。
詳しくは、SECURITY ACTIONのホームページをご確認ください。
③交付申請
IT導入支援事業者との間で打ち合わせを、交付申請に必要な事業計画を策定します。
- IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け、申請者基本情報を入力
- 交付申請に必要となる情報入力・書類添付する
- IT導入支援事業者が導入するITツール情報、事業計画値を入力
- 「申請マイページ」上で入力内容の最終確認後、申請に対する宣誓を行い事務局へ提出
詳しくは、公開されている「交付申請の手引き」をご確認ください。
④ITツールの発注・契約・支払い
事務局から交付決定が通知されれば、ITツールの発注・契約・支払いが可能となります。
交付決定の連絡が届く前に発注・契約・支払いなどを行ってしまうと、補助金の交付を受けることができないため、注意しましょう。
ただし、特別枠においては、交付前の発注・契約・支払いを行ったものでも適用される可能性があるため、詳細は公募要領を確認してください。
⑤事業実績報告
交付決定を受けた後に、ITツールの発注・契約・支払いを行ったことがわかる証明を提出します。
⑥補助金交付手続き
事業実績報告が完了し、補助金額が確定すると、「申請マイページ」で補助額を確認し、補助金が交付されます。
⑦IT導入補助金 効果報告
IT導入補助金を活用してITツールを導入した場合は、生産性向上等に関する情報の報告が義務付けられています。方法は申請で使用した「マイページ」上で入力をします。
IT導入事支援業者は補助事業の終了後もサポートを行います。効果報告の回数は2022年4月から3回です。具体的な内容として、売上や従業員数、就業時間などがあります。また、社内の機密情報を一部開示することにもなりますので事前に社内で検討を行う必要があります。
IT導入補助金申請における必要書類
必要な書類は3点あります。
- 直近2期分の決算書等
- 事業計画書
- 法人の場合、履歴事項全部証明書(3ヶ月以内)、法人税の納税証明書
- 個人の場合、本人確認書類(運転免許証など)、納税証明書、確定申告書
以上がIT導入補助金を申請するにあたり必要な書類になります。
補助金導入により労働生産性が一定の伸び率になるように作成しなければなりません。
IT導入補助金の採択率はどれぐらい?
IT導入補助金の採択率について、明確な数字が公表されているわけではありませんが、過去4年の平均採択率は50%程度だといわれています。
採択されない理由の多くは「形式要件」の誤りです。形式要件に不足があったり、公募要件にあったり記入ができていないことが原因です。基本的なことになりますが、IT導入補助金がどのような補助金で、なんのための補助金なのかをよく考えましょう。
自社のどのような業務を効率化したいのか、その目的にあったITツールを選択できているのか、をしっかり検討した上で補助金の申請に臨みましょう。補助金をもらうことではなく、業務の効率化に主眼をおいて考える必要があります。