IoTの仕組みを図解。各機器の通信はどのようにして行われている?

IoTとは「Internet of Things」の略で、モノをインターネットにつなげて通信を可能にする技術全般を意味します。どのような仕組みのテクノロジーなのかを改めて考えてみましょう。

IoTの仕組みとは?
IoTはどんな仕組みでインターネット通信を実現しているのかを分かりやすく解説します。
インターネット通信を可能にする仕組み
インターネットを介した主な通信端末と言えば、パソコン、スマホやタブレットが挙げられます。これらはインターネットにつながることを前提として利用する人がほとんどでしょう。
しかし、近年注目を浴びているIoT家電はどうでしょう。家電がインターネットにつながると言われても、いまいちピンと来ない人もいるのではないでしょうか。
従来の家電には、インターネットは関係ありませんでした。冷蔵庫ならば飲食物を冷蔵保存する、テレビなら映像や音声を再生するといったように、家電本来の役割を遂行する機能を持ちあわせているだけで十分でした。
しかし、そうした生活を便利にする機能に加えて、インターネットを介して情報伝達や本体操作を可能にしたのが、IoT家電です。
IoTとAIの違いについてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:IoTとAIの違いは?定義と具体例を解説

◯IoT家電の例
冷蔵庫
在庫情報が確認できる、家庭に合わせた節電対策ができる
エアコン
遠隔操作で電源のON・OFFができる、好みに合わせた快適運転ができる
洗濯機
遠隔操作で選択完了を知らせる、選択履歴をもとに最適な選択コースを提案
テレビ
インターネット上のテレビ番組に参加できる、WEB動画配信サービスを利用できる
照明
遠隔操作で電源のON・OFFができる、天気などに合わせて明るさや色を自動調整できる
IoTサービスの技術要素(どんな技術が使われているか)
IoTサービスは、次の4つの技術から構成されています。
モノからデータを”取得する”技術
モノをネットワークに”接続する”技術
データを”収集する”技術
データを”活用する”技術
それぞれについてもう少し詳しみていきます。
モノからデータを”取得する”技術
IoT家電は、データを取得する技術が用いられます。
データ取得で重要な役割を担っているのが、センサー(IoTセンサー)です。人間で言えば目などの感覚器官に当たる部分で、見たり感じたりしたものを電気信号に変換します。
具体的には、以下のようなセンサーがあります。
GPS:現在位置を特定する
温度センサー:温度を測定する
湿度センサー:湿度を測定する
加速度センサー:傾き、動き、振動、衝動を検出する
光センサー:明るさを検知する
圧力センサー:圧力を計測する
音センサー:音圧振動を検出する
ジャイロセンサー:傾き、角度や角速度を検知する
IoT家電には、目的に応じた最適なセンサーが搭載されています。場合によっては複数のセンサーを組み合わせ、複雑な状態を検知することもあります。
また、センサーの他にも、自動認識機器により情報を取得することもあります。
バーコード
2次元コード
カメレオンコード
今後はセンサーや自動認識機器を組み合わせ、より複雑な情報を取得することができるIoT家電が増えていくことでしょう。
モノをネットワークに”接続する”技術

一般的なIoT家電は、通信手段に無線機能を用います。馴染みのあるWi-Fiを思い浮かべてもらえばいいでしょう。
なおIoT家電の場合、通信データ量は小さなものが大半ですが、同一エリア内で多数接続が可能な無線技術が求められます。アクセスが集中すると、通信速度が低下したりシステム自体がダウンしたりする可能性があるからです。
そのため一般的なIoT家電は、多数接続が可能なナローバンド無線という技術が使用されています。
データを”収集する”技術
機器から取得したデータを蓄積したり管理したりする技術も、IoT製品によっては重要です。デバイス内に保存したり、必要に応じてサーバーにデータを送信したりします。
データを”活用する”技術
そうして集められたデータは、さまざまなモノやサービスに活用されます。データを解析し、傾向を探ったり次に必要になりそうなものを予測したりします。
IoTサービスの構成要素(何で構成されているか)
IoTのサービスを実現させている構成要素は下記のように分類することができます。
- デバイス
- ネットワーク
- サーバー
- アプリ
これらが正常に稼働することで、下図のようにIoTサービスが利用可能になります。

大まかな流れは下記のとおりです。
- デバイスのセンサーがデータを取得
- ネットワークを介して取得データをサーバーに送信
- サーバー内のストレージにデータを蓄積
- アプリによる可視化、分析、予測
- PCやスマホで連携したデータ利用
デバイス、ネットワーク、サーバーについて、もう少し詳しく解説します。
デバイスの役割
デバイスは、IoT家電本体のことを指します。センサーにより取得したデータを電気信号に変換し、ネットワークを介してサーバーに送信します。
余談ですがスマホにはGPSをはじめとして、実に多くのセンサーが搭載されています。スマホの機能が多岐に渡るのも、複数のセンサ―が搭載されているからです。
ネットワークの役割
ネットワークは、IoT家電の情報伝送を可能にしている設備です。インターネットのことだと思ってもらえばいいでしょう。
端末
IoT家電、PC、スマホ、タブレット、など
機器
ルーター、ハブ、無線アンテナ、LANケーブルなど
これら機器をネットワークに接続して、下記の規格を用いてインターネット上で情報の伝達を行います。
Wi-Fi
3G、4G(LTE)、5G(移動通信システム)
サーバーの役割
IoT家電から送信されたデータは直接スマホ等に送信される場合もありますが、大抵の場合、サーバーに送信されます。
このサーバーの役割は下記の2つです。
データの保存(ストレージ)
可視化、分析予測、制御(アプリケーション)
サーバーは、蓄積されたデータを基に利用者の要求に答えます。つまり、操作した通りの動きをするのです。
可視化:モノが取得したデータを画像データに変換
制御:IoT機器の操作
など
スマホ等の端末でIoT家電の機能を使用できるのも、このサーバーの働きがあればこそなのです。
IoTのメリットと活用事例
IoT(Internet of Things)は、様々な機器やセンサーをインターネットに接続し、データの収集や分析、制御を可能にする技術です。IoTを導入することで、業務の効率化やコスト削減、新たなビジネスモデルの創出など、多くのメリットが得られます。
製造業におけるIoTの活用事例
製造業では、IoTを活用した設備の遠隔監視や予知保全が行われています。機械にセンサーを取り付け、稼働状況や異常の兆候をリアルタイムで把握することで、突発的な故障を防ぎ、生産性の向上につなげることができます。また、工場内の環境データを収集・分析し、最適な条件で生産を行うことで、品質の安定化やエネルギー効率の改善が期待できます。
たとえば、自動車メーカーのトヨタは、工場内の設備や機器にセンサーを取り付け、稼働状況や異常の兆候を常時モニタリングしています。収集したデータをAIで分析することで、設備の故障を事前に予測し、計画的なメンテナンスを実施しています。その結果、不要な停止時間を削減し、生産性の向上につなげています。
農業・小売・ヘルスケアなど他産業でのIoT事例
農業分野では、圃場にセンサーを設置し、温度や湿度、日照量などのデータを収集・分析することで、最適な栽培条件を実現しています。また、家畜の健康状態を監視し、異常を早期に発見することで、生産性の向上や品質の安定化につなげています。
小売業界では、店舗内の人流データを分析し、レイアウトの最適化や在庫管理の効率化を図っています。また、顧客の行動データを収集・分析することで、パーソナライズされた商品推奨やプロモーションを実施し、売上の拡大につなげています。
ヘルスケア分野では、ウェアラブルデバイスを活用した患者の遠隔モニタリングが行われています。心拍数や血圧、活動量などのデータをリアルタイムで収集し、異常の兆候を早期に発見することで、病気の予防や治療の最適化につなげています。
スマートホーム・スマートシティでのIoTの役割
IoTは、スマートホームやスマートシティの実現に欠かせない技術です。家庭内の家電製品や設備をインターネットに接続し、スマートフォンなどから遠隔で制御することで、快適で便利な生活が実現できます。たとえば、外出先からエアコンの温度設定を変更したり、照明の点灯・消灯を制御したりすることができます。
スマートシティでは、交通システムや電力網、上下水道などの都市インフラにIoTを導入し、効率的な運用と最適化を図っています。たとえば、交通量や気象データを分析し、信号の制御や交通規制の実施、ゴミ収集の最適化などを行うことで、都市の利便性や安全性、環境負荷の低減につなげています。
IoT導入・活用の課題と対策
IoTを導入・活用する上では、セキュリティやプライバシー、データ管理、互換性などの課題があります。これらの課題に適切に対処することが、IoTの普及と発展に欠かせません。
関連記事:IoT家電が危険といわれる理由を解説。安全に利用するポイントも紹介
セキュリティとプライバシーの確保
IoT機器は、インターネットに常時接続されているため、サイバー攻撃のリスクが高くなります。不正アクセスや情報漏洩を防ぐため、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。具体的には、機器の認証や暗号化、ファームウェアの定期的なアップデート、ネットワークの分離などが挙げられます。
また、IoT機器から収集されるデータには、個人情報が含まれる場合があります。プライバシーを保護するため、データの匿名化や暗号化、適切なアクセス制御、利用目的の明確化などが求められます。
大量データの管理と処理
IoT機器から収集されるデータは膨大な量になるため、効率的な管理と処理が必要です。クラウドサービスやビッグデータ基盤を活用し、データの保存や分析を行うことが一般的です。また、エッジコンピューティングを導入し、データの一次処理をIoT機器側で行うことで、ネットワーク負荷の軽減やレスポンスの向上が期待できます。
IoT機器の互換性と標準化
IoT機器やシステムは、メーカーや通信方式が多岐にわたるため、相互接続性や互換性の確保が課題となります。業界団体や標準化団体が中心となって、通信プロトコルやデータフォーマットの標準化が進められています。代表的なものとして、IoTの標準化を目指す国際団体であるIoT-Aや、産業用IoTの標準化を進めるIndustrie 4.0などが挙げられます。
法規制とコンプライアンス
IoTの普及に伴い、関連する法規制の整備が進んでいます。たとえば、国内では「改正個人情報保護法」が2022年4月に施行され、IoT機器から収集されるデータの取り扱いに関するルールが定められました。また、国外では、EUの「一般データ保護規則(GDPR)」が代表的な法規制です。IoTシステムを構築する際は、各国・地域の法規制を遵守し、コンプライアンス体制を整える必要があります。
IoTの将来展望と可能性
IoT市場は今後も拡大が予測され、新たな技術との組み合わせにより、様々な分野での革新が期待されています。
5Gなど新技術がもたらすインパクト
5Gの普及により、IoTの可能性がさらに拡がることが期待されています。5Gは、高速・大容量、低遅延、多数接続という特徴を持ち、IoTに最適な通信インフラと言えます。たとえば、自動運転車では、車両間通信や遠隔制御において、5Gの低遅延性が重要な役割を果たします。また、スマートファクトリーでは、大量のセンサーデータをリアルタイムで収集・分析することで、生産性の向上や品質の安定化が期待できます。
また、AIやブロックチェーンなどの新技術とIoTを組み合わせることで、新たなイノベーションが生まれると予想されています。AIを活用することで、IoTデータの分析精度や予測精度が向上し、様々な分野での意思決定の最適化につながります。ブロックチェーンは、IoTデータの改ざん防止や真正性の担保に役立ち、サプライチェーンの透明性向上などに活用できます。
IoTが実現する未来社会のビジョン
IoTは、人々の生活やビジネス、社会インフラなどあらゆる分野に革新をもたらし、新たな価値を創出すると期待されています。たとえば、スマートシティの実現により、都市の効率化や最適化が進み、快適で持続可能な社会の実現につながります。また、農業や漁業、製造業などの第一次産業では、IoTを活用した生産性の向上や品質管理の高度化が進み、食料問題の解決や地域経済の活性化に貢献します。
ヘルスケア分野では、IoTを活用した予防医療や遠隔医療が普及し、患者の QoL(Quality of Life)の向上や医療コストの削減が期待できます。また、高齢者の見守りや介護支援にIoTを活用することで、安心で快適な社会の実現につながります。
モビリティの分野では、自動運転車やドローンの普及により、交通事故の削減や物流の効率化が進むと予想されています。また、MaaS(Mobility as a Service)の普及により、シームレスで快適な移動が実現し、都市の渋滞緩和や環境負荷の低減につながります。
このように、IoTは様々な分野に革新をもたらし、豊かで持続可能な社会の実現に貢献すると期待されています。IoTの可能性を最大限に引き出すためには、技術の進歩とともに、社会的な受容性の向上や倫理的な課題の解決が求められます。産官学が連携し、IoTの利活用を推進していくことが重要です。




