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スマートホーム規格「Matter」への対応は進んでいる?規格の役割も解説

2022年10月にスマートホームの規格「Matter」が発表されて、しばらくの時間がたちましたが、各社の対応は進んでいるのでしょうか。
「Matter」にはどのような目的があり、その役割にとはどういったものなのかの解説や各社の対応状況について解説します。

スマートホームの規格「Matter」の役割

スマートホームの新規格「Matter 1.0」が2022年10月にリリースされました。2023年5月には「Matter 1.1」が発表されており、スマートホームシステムを今後ますます普及させる規格として期待されています。
では、Matterとは一体どのようなものなのでしょうか。その役割やリリースに至った背景についてふり返ってみましょう。

スマートホーム統一規格の重要性

従来、スマートホームシステムは各社独自の規格が乱立していました。

パソコンであればWindowsとMac、スマートフォンであればAndroidとiPhoneの例からわかるように、メーカーや規格(OS)が異なると、それぞれに対応するアプリの間に互換性は基本的にありません。

そのため、中身は同じでも別の規格に移すと、思うようにアプリを使えない・作れないといった、さまざまな不具合が生じます。
スマートホームデバイスも同様です。

これまで、「A社のスマートスピーカーに対応するスマートホームデバイスは、B社のスマートスピーカーには対応していないため、思い通りの操作ができない」といった規格が異なることが原因の問題が起きていました。

せっかくスマートホームデバイスを持っていても「どの会社のホームハブに対応しているのかわからない」とユーザーの混乱を招いたり、あるいは「対応するホームハブを持っていないから」と新たなスマートデバイスの購入を躊躇(ちゅうちょ)させる理由になっていました。

結果として、決定的な統一規格の不在は、スマートホームシステムの円滑な普及の足かせになっていたのです。

Matterとは?

スマートホームシステムは、複数のスマートデバイスを連携して動作させることが可能なところに大きな魅力があります。そのため、異なるメーカーやプラットフォームで統一的に動作する規格の開発が長年待ち望まれていました。

「Matter」は既存の通信技術を用い、さまざまなメーカーやプラットフォーム上で相互に利用できるように開発された規格です。

「Matter」を2022年10月にリリースしたのは、CSA(Connectivity Standards Alliance)という無線通信規格標準化団体です。CSAの前身はZigBee Allianceで、無線通信規格「ZigBee」を生んだ実績があります。

Matterが普及することによるメリット

既存のスマートスピーカーのほとんどがMatterに対応しているため、スマートホーム製品を買う際に規格でいちいち迷わなくて済むようになります。また、複数のスマートスピーカーを持っている場合は、どの端末からデバイスを操作するかを考えずに目的の動作を行えます。

MatterはデバイスごとのQRコードをスキャンするだけで接続可能です。また、シームレスにつながるため、すでに設定済みのスマート家電を設定し直す必要がないのも良い点でしょう。

また、Wi-Fiネットワークだけでなく、独自のIoT向けネットワーク「Thread」にも接続できるため、インターネット回線が切断されてもローカルエリアネットワークで動作可能です。

Matterが普及することによるデメリット

Matterは互換性が重視されています。他方、各社のプラットフォームがこれまで独自に提供していた機能が利用できず、複雑な操作ができなくなる場合があります。

1.0の段階ではホームセキュリティカメラには対応していないなど、使用したいデバイスがMatterで一部使えない可能性もあります。また、Matter対応製品は従来製品より価格が高くなることも考えられます。

Matterへの対応は進んでいる?

紹介してきたようなことを目的としたMatterですが、各メーカーのMatter対応状況はどうなっているのでしょうか。

Matter対応の概況

2023年時点で、Matterには世界の550社以上の企業が参加しており、Matter対応として認証された機器数は1,000種以上となっています。将来的なMatter対応に向けて、現在は多くのメーカーが調整中の段階といえます。

ホームデバイス

V1.0の段階では現状、スマートライトやスマートプラグなどの多くの種類の製品に対応しています。続くV1.1では、照明・エアコン・ブラインド・セキュリティセンサー・ドアロック・テレビを含むメディアデバイス・コントローラーなど、さまざまなスマートホーム製品をサポートしています。
また、後述するホームハブを用意すれば、デバイスをMatter対応にアップグレードできたり、単にソフトウェアアップデートによってMatterを利用することもできます。

スマートスピーカー/ホームハブ

Matter対応デバイスを制御するには、ハブとなる「Matterコントローラー」が必要です。
Matterコントローラーとしては、身近なスマートスピーカーや従来のホームハブを使用できます。

  • Amazon社のAlexaシリーズ
  • Google社のGoogle Homeシリーズ
  • Apple社のHomePod

上記のほか、IKEAやPhilips Hueなどのメーカーが「Matter」に対応しており、現行使われている多くのスマートスピーカーやホームハブ製品をカバーしています。

スマートホームサービス

あらゆる住居に導入が可能なスマートホームサービスとして全国250社・21,000戸の住宅に導入されている「SpaceCore」もMatterへの対応も進めています。「SpaceCore」 はIoT機器の制御や機器同士の連動を行うことができます。

これからスマートホームを導入するならMatterに対応予定のものがおすすめ

こうした状況を踏まえると、今後スマートホームデバイスを導入するのであれば、Matter対応のスマート製品、対応予定の製品、もしくは将来的にMatterへの対応を発表しているメーカーの製品がおすすめです。

Matter対応を選ぶメリット

Matter対応機器を選ぶことで、規格を考える面倒が省け、各種設定も格段に楽になります。
より充実したスマートホームライフを送ることができるでしょう。

Matter対応を選ばないことによるデメリット

いまMatter対応のスマート製品を選ばなければ、逆にどのような不便が想定されるのでしょうか。
スマートホームの構築はこれまでと同様、いちいち規格を確認しないとデバイスの接続すらままならない面倒な作業に逆戻りです。夢だったスマートホームシステムの構築は頓挫してしまうかもしれません。

今から構築するならMatterの検討を

ますます広がりを見せるスマートホームシステム。統一規格「Matter」の登場で、今後スマートホームがさらに普及するきっかけを得たのではないでしょうか。
今後スマートホームシステムを構築するなら、Matter対応製品による構成をぜひ検討してみましょう。

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