賃貸物件の設備故障は誰が負担する?故障しやすい設備には何がある?

賃貸物件に設置されている設備が故障した場合、オーナー・大家と入居者どちらが負担しなければならないのでしょうか。
今回は、賃貸における設備故障について解説します。
賃貸物件で故障しやすい設備とは
賃貸物件に備え付けてある設備は、オーナーが自身で利用しないで入居者が利用しているものである特性から、どういった設備がどうして故障するのか、把握しづらいこともあります。まずは、賃貸物件の設備でどういったものに故障が多いのかを紹介します。
故障が多い設備ランキング10位
GMO賃貸DX編集部が、2021年に不動産管理業に勤務する方200名に対して「故障が多いと思う設備」についてアンケート調査を独自に行い、公表しています。
結果は以下のようになっており、いずれも毎日利用する生活に欠かせないものであり、故障すればすぐに対応しなければならないものばかりでした。
- エアコン 36%
- 給湯器・エコキュート 30%
- 水道・蛇口 25.5%
- 窓・網戸 25.5%
- 温水洗浄便座 18%
- 排水口 17.5%
- インターフォン 13%
- トイレ 12.5%
- 天井の雨漏り 10.5%
- ドア 8%

故障した設備のトラブルとは
エアコンは夏の暑い時期や冬の寒い時期には欠かせない設備です。特に、夏には故障したままにしておけば入居者が熱中症になることがあるなど、大きな被害になってしまうおそれがあります。
水回りでは、寒い地域であれば水道管の凍結による破損など、設備の老朽化や使用する方の不注意とはいえない理由で設備が利用できなくなることもあります。
窓の破損を放置していれば空き巣被害など二次被害を招くおそれがありますし、水漏れを放置しておけば被害が広がり物件自体の価値が下がってしまうことが考えられます。
いずれにしても、故障の連絡があれば速やかに対処することが求められます。
故障の連絡を放置したときのトラブルとは
故障したことの連絡があってもそのまま対応しないで放置していれば次のような事態を招くおそれがあります。
- クレーム対応におわれてしまい本来の業務ができなくなる
- 退去者が増えてしまう
- 物件オーナーからの信頼がなくなる
- ネット上に悪い口コミが広がる
- 法的な対応を請求されるおそれがある
このように故障したことを放置することによって、さらに悪い事態を招くおそれがあるため、故障があればそれぞれの故障に速やかに対応し、故障がないように事前にトラブルを防止する姿勢が大切です。
賃貸物件の設備の故障は誰が保証する?
賃貸物件の設備の故障は、どれだけメンテナンスを行っていても経年による劣化などで、避けることはできません。
当然ながら、設備が故障すると修理費用がかかります。ここでは、設備が故障したときには誰が保証することになるのか、また2020年4月に民法が改正され修理費用の負担の扱いがどのように変わったかを解説します。
故障の原因によって負担する方が決まる
設備の修理費用は故障の原因によって誰が負担するかが決まります。
ただし、設備には「初期設備」と「残置物」とで取り扱いが異なりますので注意しましょう。
「残置物」とは以前の入居者が善意で残していったもので、本来は退去時に撤去して原状回復をすべきですが、物件オーナーが了承して次に入居する方の利便性のために利用してもらうものです。
このような残置物は、オーナーの所有ではないので基本的にはオーナーの責任ではなく入居者が自分で修理することになります。
どのような設備が初期設備か残置物になるのかは契約時に渡される「重要事項説明書」に記載されているので確認しておきましょう。
初期設備の場合には、経年劣化や使用者に過失がなく一般的な利用による故障であればオーナーや管理会社が修理責任を負担します。
修理費用が入居者負担になるケース
使用している方がわざと壊したり不注意によって故障や破損したりした場合は使用している方の責任となり修理費用も負担しなければなりません。
また、物件オーナーや管理会社に故障があることを連絡しないで勝手に修理をした場合には、後から修理費用の弁償を求めても認められないことがあります。
さらに、故障していることがわかっているのに、オーナーや管理会社に連絡をしないで放置していたためにさらに悪化させたような場合も、入居者が修理費用を負担しなければならなくなります。
たとえば、雨漏りしていることがわかっているのにそのまま放置していて床が傷んだり、他の部屋に被害が及んだりするようなことがあります。
2020年4月の民法改正
2020年4月に民法が改正され、建物の賃貸借契約に関しても変更されました。
入居者は、設備に故障があればなるべく早くオーナーや管理会社に連絡をし、速やかに修理をしてくれるように依頼しなければなりません。
入居者に落ち度がなく使用していて故障したものであればオーナーに修理責任があります。
しかし、場合によってはなかなか修理をしてくれないために、日々の生活に不便が生じることもあります。そういった場合には、入居者が修理を依頼し後から支払った修理費をオーナーに請求できるようになりました。
改正後の民法607条の2には以下のように規定されています。
(賃借人による修繕)第六百七条の二 賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。二 急迫の事情があるとき。民法 | e-Gov法令検索 |
また、故障があることを連絡してもすぐに修理をしてくれなかったために、入居者の生活に困難が生じた場合には、家賃の減額が認められることになりました。
(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)第六百十一条 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。民法 | e-Gov法令検索 |
改正前は「減額請求できる」とされていたものが、当然に「減額される」となったのです。
これはエアコンや給湯器、お風呂やトイレなどが故障して使えない状態だと入居者は普段の生活に困ってしまいます。
設備の故障が、「賃借人の責任」に問えない場合に、オーナーは速やかに修理して入居者が「普通に」生活できるようにする義務があります。そこで、入居者が被った被害額の弁償を受けやすく規定されたものです。
入居者の満足度を底上げするスマートホームサービス
少子高齢化や人口減少といった日本の社会的問題や、先ほど紹介した民法の改正に現れているように、近年では賃貸物件は「貸してあげる」から「借りてもらう」市場に変わっているといえます。借りてもらい、満室経営を求めるならば入居者の満足度をあげることが必要です。
スマートホームサービスが入居者の満足度を上げ、長期的に住んでくれる要因になるらしい
顧客満足度をあげるためには、故障があれば速やかに対応するほかに物件の設備を入居者が求めているものにしていく積極的な姿勢も必要です。
下の表は、全国賃貸住宅新聞が集計した「周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」設備についての調査結果です。
単身者向けでもファミリー向けでも「インターネット無料」が第1位になっています。
また、「エントランスのオートロック」が単身者向けでは第2位に上昇、ファミリー向けでは第3位となっています。
その他、「防犯カメラ」「ホームセキュリティ」など単身者向け、ファミリー向けともセキュリティに関心が高いことがうかがえます。

賃貸物件のセキュリティ向上はスマートホーム化することで実現できます。
賃貸物件をスマートホーム化すれば、防犯面だけでなく入居者の生活利便性や快適性が高まり、一人暮らしを始める女性や家族で暮らす方たちにも物件の魅力をアピールすることができるでしょう。
導入にかかるコストも、付加価値向上による賃料アップで回収できる可能性も
アパートメーカーのレオパレスが発表した、2018年「若手社会人のひとり暮らし」に関する意識・実態調査を見てみましょう。2018年と少し古い調査結果ですが、全国のひとり暮らしをしている入社5年目までの社会人男女計600名を対象とした調査です。
「IoT化された賃貸住宅に住んでみたいと思いますか?」という質問では、「ぜひ住みたい」「住みたい」と答えた割合は、45%以上に上っており、「IoT化された賃貸住宅に住むことができるなら、現在の家賃にプラスいくら払ってもよいと思いますか?」という設問では、IoT化された物件であれば、1,000円以下(22.8%)、5,000円(22.4%)、3,000円(21.7%)と、数千円単位の家賃アップであれば前向きに検討している入居者が多いことがわかりました。

つまり、賃貸物件をスマートホーム化する際に初期コストが発生したとしても、賃料に上乗せすることで回収できる可能性があります。入居者の属性やターゲットを明確にすることで、どのようなサービスが求められているのかを考え、導入を検討しましょう。
スマートホームサービス提供会社に相談しましょう
今ある賃貸物件のスマートホーム化を検討するときには、スマートホームサービス提供会社に相談してみましょう。
スマートホーム機器はいろいろなメーカーから様々な商品が販売されているので、どれをどういうふうに導入すれば効果的なのか迷ってしまいます。
また、機器同士には相性があり導入してからうまく接続できないおそれもあります。
スマートホームサービス提供会社では、スマートホーム家電に精通していて、いろいろな賃貸物件を扱っているので賃貸物件に最適なスマートホーム化を提案できます。