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賃貸物件の空室期間は平均してどれくらい?埋まらない空室への対策も紹介

空室は、賃貸経営において最も悩ましい問題です。長期間にわたって空室が発生すれば、当然ながら賃料収入が得られない期間が長期になり、キャッシュフローや資金計画にも大きな影響を与えます。

では、賃貸物件の空室期間は、平均してどのくらいなのでしょうか。埋まらない部屋への空室対策のアイデアについても紹介します。

賃貸物件の空室期間の平均はどのくらい?

賃貸物件を管理するうえで、空室期間をいかに短くおさえるかは大きな課題となります。

入居者が退去したあとには必ず空室期間が発生しますが、平均空室期間はどれくらいなのでしょうか。

主要都府県の平均空室期間

タスが2022年12月に発表した「賃貸住宅市場レポート」によると、2022年10月期の平均募集期間は4〜5カ月でした。

都府県平均募集期間(カ月)
東京都4.85
神奈川県5.05
埼玉県4.64
千葉県4.57
大阪府4.91
京都府4.73
兵庫県5.26
愛知県6.06
静岡県7.03
福岡県4.89
タス「賃貸住宅市場レポート」2022年10月期より

一番短かったのは千葉県で4.57カ月、最も長いのは静岡県で7.03カ月と半年以上もの空室期間がありました。現在の入居者が退去してしまうと、家賃収入が最低でも4カ月間入らない状況になってしまいます。

しかし、あくまでも民間住宅情報会社が公開した情報を用いて算出した平均数値のため、当然ながら物件の条件や繁忙期などによって違いがあることは留意しておきましょう。

平均入居期間はどれくらい?

では反対に、入居期間の平均はどれくらいになるのでしょうか。

2021年6月に日本賃貸住宅管理協会が発表した「第25回住宅市場景況感調査」によると、2020年下半期の全国平均では2年〜4年の入居期間が多い結果となりました。

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「第25回住宅市場景況感調査」より

上記の表を見てわかるように、利用者によって入居期間に違いがあるとわかります。

学生は在学期間に合わせ、入居期間が2〜4年が86.9%と圧倒的に多く、ファミリーや高齢者は4年以上の長期間入居が多くなっています。

ファミリーは子どもの成長やマイホーム購入などに合わせた入居期間になっていると予想されます。高齢者になると、金銭面や引っ越しに対する負担がかかるため入居期間が長くなるのでしょう。管理している物件の間取りや設備によって、利用者にあわせた空室対策を考える必要があります。

空室期間が長い物件・短い物件、それぞれの特徴

空室期間が長い物件と短い物件には、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

空室期間が長い物件の特徴

空室期間が長いと賃料が入ってこないため、管理費だけがかかってしまう状況になってしまいます。空室期間が長くならないように特徴を把握して、しっかりとした対策を取るようにしましょう。

  1. 相場より高い賃料
  2. 入居条件がきびしい
  3. 外観や設備が古い

相場より高い賃料

周辺の物件と比べて賃料が高い場合、よほどの好条件でない限り入居者はいつまでたっても決まりません。

賃貸物件の賃料を決める際は、周辺の家賃相場に合わせるのが基本です。

最近の物件探しはポータルサイトで行う場合が多く、賃料が高いと検索条件から外れてしまいます。

まずは周辺の家賃相場と比較してみましょう。

周辺相場を調べるには、「立地条件や築年数、設備内容」を照らし合わせてポータルサイトで調べるか、近隣の不動産会社へ相談してみるといいでしょう。

入居条件が厳しい

入居者の属性にこだわるあまり、入居条件が厳しいことも、空室期間が長くなる要因です。

高齢者不可・外国人不可・夜勤仕事不可など、入居条件を厳しくしすぎてしまうと入居者候補の絶対数が減ってしまいます。現状の入居者にあたえる影響を考えつつ、条件を緩和し入居者候補の範囲を広げる検討もしてみましょう。

外観や設備が古い

入居を検討する際に、まず目にするのは外観です。

築年数が経過し老朽化してしまうのは仕方がありませんが、共用部やゴミ置き場・室内の清掃状況などの清掃やメンテナンスはしっかりしておきましょう。内覧時に室内のスリッパを準備しておくのも、大事な心づかいです。

また、室内設備が古いのも敬遠される要因の一つです。最近ではキッチンや浴室、インターネット環境などが重視される傾向にあります。

空室期間が短い物件の特徴

反対に、空室期間が短い物件の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。

入居者のニーズを満たしている物件は人気があり、空室期間が短い傾向にあるため参考にしましょう。下記の3つのポイントを紹介します。

  1. インターネットが無料で使える
  2. セキュリティーがしっかりしている
  3. 宅配BOXが設置してある

インターネットが無料で使える

単身向け・ファミリー向け共にインターネットが無料で使える物件は人気があり、多少賃料が高くても入居者が決まりやすくなっています。

近年ではコロナ禍の影響もあり、リモートワークやインターネットでの動画視聴などの需要が増えているため、必須の設備といえます。

高速インターネットであれば他の物件との差別化ができるため、さらに入居希望者の獲得につながるでしょう。

セキュリティーがしっかりしている

セキュリティーが充実している物件も、空室期間が短くなっています。

特にエントランスのオートロックは、入居希望者の条件に含まれるケースが多いようです。

特に単身女性の場合には、誰でも玄関まで入って来られるような物件は不安に感じるのではないでしょうか。

構造上難しい場合には、防犯カメラの設置はセキュリティー対策として重要な設備になります。

また、TVモニター付きインターホンが設置してあると訪問者の顔が確認できるため、入居希望者に安心感を持ってもらえます。

宅配BOXが設置してある

宅配BOXの設置もコロナ禍の生活で需要が増えました。

宅配サービスの利用やインターネットショッピングの利用者が増え、一時期は「置き配」が流行りましたが、トラブルも多かったため宅配BOXの需要が増えました。

また、不審者対策やコロナ禍での衛生面を考慮し、対面での受け取りを避けたい意識があるようです。

空室期間を縮める、埋まらない空室の対策とは

空室期間が長い物件と短い物件、それぞれの特徴を紹介しました。

他にも、空室期間を縮める工夫や選ばれる物件になるための対策をしておきましょう。

入居者特典を設ける

空室期間をつくらないようにするために、長期間更新してもらうのも対策のひとつです。

たとえば、更新するたびに特典を豪華にしていくなどすると効果的かもしれません。

1回目は商品券、2回目は家電、3回目は更新料減額、4回目はキッチンなどのクリーニングサービスのようにすると、喜んでもらえるのではないでしょうか。長期間入居者は、特典を選べるようにしてもいいかもしれません。入退去のタイミングでアンケートをとり、ニーズを把握しておくようにしましょう。

設備の点検や修繕工事の実施

設備の点検や修繕工事は、空室期間に実施しておきましょう。

内装はもちろんですが、特にトイレやバスルーム、キッチンなどの水まわりが新しいと入居者を獲得する重要なポイントになります。

ただし、水まわりの設備交換には高額内容がかかるため、費用対効果を考えながらバランスよく行う必要があります。

他にも、高速インターネット回線の導入なども検討するといいでしょう。

スマートホームサービスの導入

スマートホーム化をして、周辺の賃貸物件と差別化を図るのも大きな空室対策になります。

空室期間の短い物件の特徴にもありましたが、インターネット環境とセキュリティー対策は、入居条件にとって必須項目です。

そこで、スマートロック(玄関キー)や玄関人感センサーなどスマートホーム化をすると、他の物件にはない安心感をアピールできるようになります。

スマートホーム化はセキュリティー対策だけではなく、照明やエアコンの操作がスマートフォンアプリで操作できるようになるため、入居者の利便性が向上する効果もあります。

「スマートホーム化」と聞くと少しむずかしく感じますが、スマートホームサービスを導入すると様々なサポートをしてもらえます。

入居者とのコミュニケーションを円滑に行えるように、アプリを使用して書面や封書のやり取りができるため、お互いの負担が軽減されるでしょう。

入居者が対面では伝えにくい、不満や要望なども気軽に伝えられるようになるため、退去の抑制にもつながります。