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家庭内での食品ロスの原因を解説。フードロスを減らすアイデアやできることとは

まだ食べられるはずの食料・食品が様々な理由によって捨てられてしまう食品ロスは、日本だけでなく世界中で起こっています。

食品ロスは飲食店の残飯やコンビニエンスストアの廃棄食品が注目されますが、実は一般の家庭でも発生しており、日本国内で廃棄される食品のなかでも大きな割合を占めています。今回は、家庭内で発生している食品ロス問題にフォーカスし、ロスを減らすアイデアや取り組みについて紹介します。

データで見る日本における食品ロス問題

食品ロスとは、まだ食べられる食べ物が捨てられていることを指します。では、食品ロスがどのくらい発生しているのか、各データをもとに見てみましょう。

食品ロスの現状は?

農林水産省「食品ロスの現状を知る」によると、2017年には世界で13億トンのまだ食べられる食料が廃棄されていました。

これは、世界の食糧生産量の3分の1に当たります。

先進国だけではなく、開発途上国でも食品ロスが発生していますが、先進国とは事情が異なります。

開発途上国ではせっかく作った食べ物が技術不足のために収穫できずに廃棄されてしまうもの、物流や保存、加工などのインフラ設備が整っていないことから市場に出ないままやむを得ず廃棄されてしまうことが原因になっています。

農林水産省「食品ロスの現状を知る」より

また、日本では2017年度推計で約612万トンの食品ロスがあったとされています。

近年、SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の1つとして2030年までに世界全体の一人当たりの食糧廃棄量を半分にすることが盛り込まれました。

日本でも第4次循環型社会形成推進基本計画(平成30年6月19日閣議決定)及び食品リサイクル法の基本方針(令和元年7月12日公表)によって、2030年度までに2000年度の半分にする目標が設けられています。

これらの取り組みによって、以下の表のように食品ロスの量は減少傾向がみられます。

食品ロスの発生量の推計結果食品ロスの発生量(単位:万トン) 事業系 家庭系 合計
令和2年度 275 247 522
令和元年度 309 261 570
平成30年度 324 276 600
平成29年度 328 284 612
平成28年度 352 291 643
平成27年度 357 289 646
環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和2年度)の公表について」より集計

しかし522万トンと、今もなおたくさんの食品ロスが発生していることがわかります。

また、令和2年度の食品ロスを見てみると、522万トンのうち約47%に当たる247万トンが家庭系で発生していることがわかります。

原因は家庭内にもある

先の表にもあるように、食品ロスには事業によるものだけではなく、家庭から発生するロスの割合も大きく占めています。

事業系食品ロスにはスーパーやコンビニなど小売り店での売れ残り、飲食店での食べ残しなどがあり、家庭系では料理を作りすぎたための食べ残し、買ったものの消費期限がすぎて廃棄したもの、料理の際に野菜の皮をむきすぎているために発生するものなどが含まれています。

下の表は食品ロスの原因別に分類したものです。

食品ロスは事業系がほとんどだろうというイメージがありますが、下表では事業系と家庭系とでほとんど差がないことにおどろきます。

また、食べ残しや利用されないまま廃棄される食品が多いことにも気づかされます。

環境省「消費者向け情報 | 食品ロスポータルサイト」より

食品ロスにはどのような問題がある?

食品ロスが多く発生すると食べ物が無駄になりもったいないことです。

さらに食品ロスは地球環境にも悪影響を及ぼし、将来の人口増加による食料危機にも対応できなくなってしまいます。

環境への影響

廃棄された食べ物は、ゴミとして出され処理工場で可燃ごみとして焼却されます。

そのため焼却場へ運ぶ際に二酸化炭素を排出し、さらに焼却時にも二酸化炭素を排出します。

また、焼却した後の灰も埋め立てることになるため、環境負荷となってしまうのです。

食料危機

地球上に住む約77億人のうち、発展途上国など8億人以上の人が十分な食料をとれずに苦しんでいます。

他方先進国ではたくさんの食べられる食品が食べられないまま捨てられている状況です。

国連による世界人口推計(2019年版)では2050年には世界の人口が約97億人になると予測されています。

現状のまま食品ロスの問題を放置すれば人口増加に伴ってますます十分な食料がとれずに苦しむ人が増えてしまうことでしょう。

家庭内で発生している食品ロス・フードロスの原因

下記の表は平成20年に農林水産省が公表した「食品ロスの現状」についての報告書にある家庭における食品廃棄物の組成例です。

手つかずの食品や食べ残しで4割を占めているのがわかります。

農林水産省「食品ロスの現状」より

食品ロスの原因

家庭で食品ロスが発生した原因について農林水産省が資料を公表しています。

下記の表では、次の3つの原因が多いことに気がつきます。

「消費・賞味期限内に食べられなかった」(70.5%)

「購入後、冷蔵庫や保管場所に入れたまま保存を忘れてしまった」(51.1%)

「必要以上に買いすぎてしまった」(29.7%)

農林水産省「図7 – 6 食品ロスの原因」より

これらの原因は先に紹介した「家庭系」食品ロス(247万トン)のうちの直接廃棄(109万トン)に含まれるもので、その他の食品ロスの原因となる過剰除去(33万トン)や食べ残し(105万トン)にも注意しなければなりません。

過剰除去

過剰除去とは、調理する過程で食べられる部分も捨ててしまうことです。

過剰除去は次のような例でみられます。

  • 野菜や果物の皮を厚くむきすぎてしまう
  • 野菜や果物のヘタやタネをとるときに食べられる部分まで切り取ってしまう
  • 肉の脂身を捨ててしまう

過剰除去をする原因は、衛生面が気になってしまうこと。

例えば店頭に置いてあるキャベツやレタスを不特定多数の方が触っているのではないかと外側の葉を捨ててしまうようなことです。

また、レシピ本などでは、調理の仕方は書いてありますが、使わずに残った芯や茎の料理方法は少なく、切り取った部分をそのまま捨ててしまうことがあります。

食べ残し

調理の際にたくさん作りすぎてしまって食べ残してしまうことがあります。

また、外食をしたときにも食べられると思って注文したものの、量が多くて食べきれないこともあります。

家庭内での食品ロスをなくすアイデア・できること

食品ロスは事業性のものだと考えがちですが、見てきたように半分は家庭から発生しています。家庭から食品ロスを少なくするにはどうすればいいのか考えてみましょう。

家庭内で食品ロスをなくすためにどうすればいい?

次の場面ごとに食品ロスを少なくする工夫をしましょう。

  • 買い物のとき
  • 調理の時
  • 保存する時
  • 余った食材の有効活用

買い物のとき

  1. 買い物に出かけるまえに冷蔵庫や保管してある食材をチェックして出かけましょう
  2. 買い物メモやスマートフォンを活用して買物をするときの判断材料にしましょう
  3. 使う分だけ、食べられるだけの量を買う習慣をつけましょう
  4. 期限表示を確認して買物をしましょう
  5. すぐに使う食材は食品棚の手前にあるものを買いましょう

なお、食品の期限は以下のように分類されています。

<賞味期限>

賞味期限はおいしく食べられる期限の目安で、期限を過ぎたら食べられなくなるものではありません。

煮る、焼くなどして加熱するなど料理の方法を工夫してみましょう。

<消費期限>

消費期限が過ぎても、食品によっては十分に食べられるものもありますが、原則として期限内に食べきれる量を買い、期限内に消費しましょう。

調理の時

残っている食材から利用しましょう。

食べきれなかった料理はアレンジして別の料理にできないかリメイクレシピを工夫してみましょう。

保存する時

食品に記載されている保存方法に沿って保存しましょう。

野菜は冷凍したり、下処理をしたりして保存すると長持ちします。

家庭では料理を作りすぎないことが大切ですが、食べ残してしまったときには、冷凍するなど食品が傷みにくい方法で保存すれば食品ロスを少なくできます。

また、冷蔵庫に保存するときには忘れてしまわないように置き場所を工夫して配置しましょう。

余った食材の有効活用

余った食材はフードバンクに寄付するという方法もあります。

地方自治体や大型スーパー、学園祭などでも寄付を受け付けていることがあります。

また、インターネットサイトやスマートフォンアプリでもフードシェアリングが行われていますから賞味期限内で使わない食材があれば、このような有効活用も可能です。

スマート冷蔵庫の活用

冷蔵庫に保管してある食品や調味料などが、どれくらい残っているか確認できる冷蔵庫が開発されています。

インターネットに接続された冷蔵庫で、庫内の専用トレーにあるセンサーで食品の有無を一定間隔で感知して、残っている量や保存期間をスマートフォンで確認できるようになっています。

食品が残り少なくなるとスマートフォンに通知されて、家族の誰かが買い物をすると家族全員に通知される機能があり、重ねて買ってしまうロスを防げます。

今ある冷蔵庫に取り付けられる専用トレーも販売されていますから、冷蔵庫を新しく買い替える必要もなく、導入しやすくなっています。

IoT・アプリを活用してフードロス削減

家庭で食品ロスを削減するためのアプリには食材管理、賞味期限の管理、冷蔵庫内の撮影、買物支援、メニュー提案、レシピ検索などいろいろな機能が提供されています。

食材管理には直接入力や食品のバーコード読み取りから登録でき、同時に賞味期限を登録しておけば賞味期限が近づくと通知が届いて便利です。一度登録した食材は買い物リストに転記できますから、買い物リスト作成も苦になりません。

冷蔵庫にある食材から作る料理をAIが提案してくれるアプリがあれば献立作りに悩まされずにすみます。作った料理のカロリーや栄養バランスのグラフも作ってくれるので家族の健康管理にも役立ちます。

経済産業省ではIoT技術を活用して食品ロスを削減する取り組みをしています。

具体的には以下の実証実験を行っています。

経済産業省「IoT技術を活用した食品ロス削減の事例創出

青果物の多様なIoT技術を活用した食品ロス削減の事例創出情報を発信して消費者に訴求する試み

  • 収穫時の状態、色、形、生産者情報など
  • 流通状況をリアルタイムで把握して流通状況に応じた販促活動

店舗業務の効率化

  • 電子棚札を活用してバックヤードから値札の差替え、値引きラベルの更新を行う
  • 賞味期限、消費期限別に複数の価格に分類、電子棚札を活用して細かな価格変更を行う

食品の購入、調理、保管の支援

  • 購買データを活用した購買支援
  • 消費・廃棄データを取得して在庫管理
  • データを活用した調理支援(レシピの提供など)
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