高齢の親が一人暮らし。遠方に住む親を持っている子どもたちができることとは


高齢者世帯が増加している日本において、高齢者の一人暮らしや孤独死などは、今後大きな社会問題となると考えられています。
では、子ども世帯の我々はどのような対策を講じれば、一人暮らしをする高齢者が安心・安全に生活することができるのでしょうか。今回は、遠方の親が一人暮らしをしているケースにおいて、子どもたちができるトラブル対策や対処方法について紹介します。
一人暮らしの高齢者世帯は増加傾向
ご存知のとおり、日本は高齢化社会です。
一方で、高齢者世帯が全人口のどれくらいの割合を占めているのかまで把握している人はあまり多くないでしょう。日本では高齢者人口に加えて、一人暮らしの高齢者世帯数も増加傾向にあります。
高齢者人口の増加
一人暮らしの高齢者世帯は、年々増加しています。
内閣府が発行している「令和3年版高齢社会白書」によると、2019年時点において日本の全世帯(5,178万5千世帯)のうち、65歳以上の方がいる世帯は2,558万4千世帯存在し、全体の約49.4%にもなります。
全体の半数近くが高齢者で構成されており、まさに高齢社会になっていると言えるでしょう。
1980年代時点での高齢者がいる世帯の割合は約24%程度と低かったのですが、それ以降、多少増減しながらも高齢者世帯の割合は増加し続けてきました。
今までの人口推移を鑑みても、日本における高齢者人口はこれからも増え続ける傾向にあると推察できます。
一人暮らしの高齢者人口の増加
高齢者全体の人口に加えて、現在一人で生活している高齢者の人数も増加傾向にあります。
1980年時点では、一人暮らしをしている高齢者は男性が約19万人、女性が約69万人でした。
しかし、それ以降も単身高齢者世帯数は増え続けており、2020年時点では男性が約192万人、女性が約400万人と大幅に増加しています。

この増加傾向は今後も続くと見られ、対策が必要になるでしょう。
高齢者の所得について
「令和3年版高齢社会白書」によると、経済的な観点において生活に困っていないと回答した人は全体の約63%を占めており、高齢になるほどこの割合は増えていきます。
年金の受給に加えて、企業年金や現役世代に蓄えていた貯蓄などで十分な暮らしを送れる人が多いことがわかります。
また、厚生労働省の「平成30年 国民生活基礎調査」によると高齢者世帯の平均所得額は312.6万円となっており、全世帯の平均所得額である552.3万円の約6割ほどの収入があるようです。
既に子育てや住居購入が済んでいることもあり、上記の収入で十分に暮らせることがわかるでしょう。このように経済的に自立して生活できていることも、一人暮らしの高齢者数の増加の要因の1つになっているといえるでしょう。
一人暮らしの高齢者人口に関係する社会問題とは
一人暮らしをしている高齢者が増えるに伴い、様々な社会問題が起きつつあります。
孤独死や認知症の件数も増えており、さらに高齢者を狙った詐欺や消費者契約のトラブル数も増加しています。高齢になるにつれて人間の判断能力は低下してしまうので、これらの問題の発生を防止することはできません。よって、これらの問題への対策をとる必要があるでしょう。
一人暮らしの親を持つ子ども世帯の懸念点とは
社会人になると親が高齢であるケースも多く、子供世帯の心配事項も増えつつあります。
2022年2月、遺品整理や特殊清掃を行うTRUST・CORPが65歳以上の高齢者の親をもつ20〜50代の人に行った親の孤独死についてアンケートによると、具体的には以下のような懸念点が挙げられています。
訪問に時間がかかる
回答者の約70%が親の訪問に1時間以上かかると回答しており、約46%の方も2時間以上かかるという結果が出ました。

社会人になる段階で都心部へ引っ越して就職し、その土地で家庭を築く若者が多いです。
その関係で都心部と親が住んでいる地元の距離が離れてしまうのも、親の訪問に時間がかかることの要因の1つでしょう。
親との連絡頻度
回答者の約57%が1週間に1度以上の頻度で親に連絡しており、約85%が月に1回以上、親に連絡している結果となりました。

既に自分が子育てをしていると、親への連絡が疎かになってしまうこともあるでしょう。
ただ、親が高齢の場合などは心配なのでより頻繁に連絡する人もいるようです。
親の孤独死について
「親の孤独死について考えたことがある」と回答したのは全体の68.8%と、多くの人が親の孤独死について考えている、考えたことがあることがわかりました。
コロナ禍で実際に会うのが難しくなってから、親の孤独死について考え始めた人もいるようです。
また、親の孤独死対策をしている回答者は全体の58.9%となっています。
日常的な連絡を心がけている、訪問サービスを利用している、スマホやカメラといったテクノロジーを利用している人もいます。
高齢者の中には、訪問サービスや自治体サービスによる人との交流を好まない人も一定数存在します。
そういった方に対しては、スマホやカメラ、センサーなどのテクノロジーによる対策が効果的になるでしょう。
遠方の親を見守る様々なサービス

前述の通り、遠方に住んでいる親への頻繁な訪問が難しいと答えている子供世代は多いです。そういった際におすすめなのが、IoT機器を利用した見守りサービスです。
具体的なサービスや製品を確認していきましょう。
スマートカメラ
親側に抵抗がなければ、親の住居にカメラを取り付けるのが効果的です。
メールやラインでは、相手の返事が遅い時に心配してしまいます。また、電話では時間帯によっては連絡しづらいことがあるでしょう。
しかし、カメラであれば手元のスマホやパソコンですぐに親の状態を確認できるので安心です。
さらに双方向でのコミュニケーションが可能であるため、電話やテレビ通話のような使い方も可能です。孫の顔が見たい、話をしたいという親側のニーズにも応えてくれるため、双方にメリットがあるでしょう。
特にコロナ禍で対面でのコミュニケーションが難しい現在、特におすすめのツールになります。
人感電球・スマートライト
人感電球・スマートライトは、人の動きに反応して自動的に電気をつけてくれます。
そのため、荷物を持って帰宅した時や、夜間でも便利に使えるツールです。
さらに、一部の人感電球には人の動きの記録をアプリに登録する機能を持つものも存在します。過去の履歴の紹介はもちろん、リアルタイムでの通知も設定できるので安心して使用できるでしょう。
カメラよりもプライバシーが確保されますし、見守りのみでなく防犯機能も期待できます。人感電球を用いて家をスマートホーム化すれば、「ただいま」等の声かけをすることで家中の電気を点灯させられるようにもなるので便利でしょう。
扉や窓に設置するスマートセンサー
スマートセンサーの中には、ドアや窓に取り付けられるものも存在します。
ドアや窓の開閉をセンサーが感知し、アプリで使用者に通知してくれます。
窓やドアの開け閉めは日常的に行う動作なので、これらの通知を受け取ることで親の安否を確認できるでしょう。
さらに、カメラよりもプライバシーを確保できますし、取り付けもドアにセンサーを貼るだけなのでとても簡単です。
スマートホームセンサーについてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:ドアの開閉を感知するスマートホームセンサーの活用法・仕組みを解説
スマートLEDシーリングライト
家に設置しているシーリングライトを、スマート機能付きの者に変更するだけで自動点灯はもちろん、外出や帰宅の時間も把握できます。
基本的には上記のスマート電球と同じように使用できるため、見守りをしたい方におすすめです。
これらのスマート家電を使用することで、現在の住まいのスマートホーム化を簡単に実現できます。工事が必要なものも一部存在しますが、電球やセンサー、カメラ等は設置も運用も簡単に行えます。親側の意向も確認したうえで、上手にこれらのスマート家電を導入して、住居のスマートホーム化を進めて皆が安心して暮らせる環境を構築してください。
遠方に住む高齢の親の安全を確認する方法を用意する
遠方に住む親は見守りだけでなく、双方向でのコミュニケーションや安否を確認する方法をいくつか用意しておきましょう。
常日頃からのコミュニケーションを取ることで、親の健康状態や精神的なサポートを心がけましょう。
様々な手段で定期的な連絡を取る
電話やビデオ通話の活用
遠方に住む高齢の親との定期的な連絡は、その安全を確認する上で非常に重要です。電話やビデオ通話を活用することで、親の声色や表情から健康状態を把握することができます。週に1〜2回程度、決まった曜日や時間に連絡を取ることで、コミュニケーションを習慣化しましょう。また、ビデオ通話を利用すれば、部屋の様子や身なりから生活環境の変化にも気づきやすくなります。
SNSやメッセージアプリの利用
電話やビデオ通話以外にも、SNSやメッセージアプリを活用して、日常的な連絡を取りましょう。親がスマートフォンに慣れている場合は、LINEやFacebookメッセンジャーなどを利用して、気軽に近況を報告し合いましょう。文字だけでなく、写真や動画を共有することで、より具体的に親の生活の様子を知ることができます。ただし、高齢者の中にはSNSやアプリの使用に不慣れな人もいるため、操作方法をわかりやすく説明するなどのサポートが必要です。
近所の人や地域社会の協力を得る
親の住む近隣や地域の人と関係性を築くことも、遠方に住む親を持つ家族にとっては非常に重要です。
民生委員や町内会との連携
遠方に住む子どもだけでは、高齢の親の安全を完全に確認することは難しいものです。そこで、民生委員や町内会など、地域の支援組織と連携することが大切です。民生委員は、高齢者の生活状況を定期的に確認し、必要に応じて行政や地域包括支援センターと連絡を取ってくれます。また、町内会に加入することで、近所の人々と顔見知りになり、緊急時の助け合いが期待できます。親の住む地域の支援体制について、事前に情報を集めておくことをおすすめします。
近所付き合いを大切にする
親や子ども、家族が近所の人々と良好な関係を築いていれば、異変があった際に早期発見につながります。子どもが遠方に住んでいても、近所付き合いを大切にしていれば、周囲の人々が見守りの目を向けてくれるでしょう。親が近所の行事に参加したり、回覧板を回したりするなど、コミュニティとの交流を続けられるよう、子どもからも働きかけていくことが大切です。
一人暮らしの親を遠方からサポートする方法
また、遠方に住む高齢者の生活をサポートするために、行政や自治体、民間企業の様々なサービスを利用することも検討しましょう。
行政や地域の支援制度を活用する
行政や地域の支援制度は、遠方に住む親を持つ家族にとって心強い存在です。
地域包括支援センターに相談
一人暮らしの高齢者を支援するために、各自治体には地域包括支援センターが設置されています。センターでは、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門スタッフが、高齢者やその家族からの相談に応じています。介護や医療、福祉サービスの利用方法から、認知症や虐待の防止まで、幅広い課題について助言を得ることができます。遠方に住む子どもも、親の住む地域の地域包括支援センターに連絡を取り、サポート体制について相談してみましょう。
高齢者向けサービスの利用
行政や社会福祉協議会では、一人暮らしの高齢者を対象とした様々なサービスを提供しています。たとえば、緊急通報システムは、高齢者の自宅に設置されたボタンを押すことで、24時間体制で救急車の手配や家族への連絡ができます。
また、自治体によっては、高齢者の見守りを兼ねた配食サービスや、定期的な訪問による安否確認サービスを実施しているところもあります。親の住む地域で利用可能なサービスを調べ、必要に応じて申請手続きを進めましょう。
生活支援サービスを利用する
民間事業者も、高齢者の生活を支援する様々なサービスを展開しています。
家事代行サービス
一人暮らしの高齢者にとって、掃除や洗濯、食事の準備などの家事は大きな負担となります。家事代行サービスを利用することで、日常生活をサポートすることができます。サービスの内容や料金体系は事業者によって異なるため、親の住む地域で利用可能なサービスを比較検討することが大切です。また、サービスの利用開始前に、親の同意を得ることを忘れないようにしましょう。
食事宅配サービス
バランスの取れた食事は、高齢者の健康維持に欠かせません。食事宅配サービスを利用することで、栄養価の高い食事を手軽に取ることができます。配食サービスには、自治体や社会福祉協議会が実施するものと、民間事業者が提供するものがあります。それぞれのメニューや価格、配達頻度などを確認し、親の嗜好や健康状態に合ったサービスを選びましょう。
移動支援サービス
一人暮らしの高齢者にとって、通院や買い物など、外出の機会を確保することは重要です。しかし、公共交通機関の利用が困難な場合、移動手段の確保が課題となります。自治体や社会福祉協議会、NPO法人などが提供する移動支援サービスを利用することで、高齢者の外出をサポートすることができます。また、民間事業者が提供するタクシー利用料金の助成制度などもあるため、親の住む地域で利用可能なサービスを探してみましょう。
医療面のサポート体制を整える
年を重ねるごとに、健康面での不安が増えていきます。ましてや親が遠方で一人で暮らしているのであれば尚更です。医療面でのサポート体制も整えておく必要があります。
かかりつけ医との連携
高齢者にとって、かかりつけ医との信頼関係は欠かせません。遠方に住む子どもも、親のかかりつけ医と連絡を取り、日頃の健康管理や治療方針について情報共有することが大切です。また、かかりつけ医から、親の健康状態について定期的に報告を受けることで、遠方からでも医療面のサポートを行うことができます。
遠隔診療の活用
近年、ICT技術の発展に伴い、遠隔診療サービスが普及してきています。スマートフォンやタブレット端末を使って、自宅にいながら医師の診察を受けることができます。特に、移動が困難な高齢者にとって、遠隔診療は大きなメリットがあります。ただし、すべての疾患に対応できるわけではないため、かかりつけ医と相談の上、適切に活用することが大切です。
服薬管理の支援
高齢者の中には、複数の疾患を抱え、多くの薬を服用している人もいます。服薬管理の誤りは、健康状態の悪化につながるため、注意が必要です。遠方に住む子どもは、親の服薬状況を定期的に確認し、飲み忘れや重複服用がないか、電話やビデオ通話で確認することが大切です。また、薬局と連携し、薬の一包化や自動配薬ロボットの利用など、服薬管理を支援するサービスの活用も検討しましょう。
災害時や緊急時に備える
災害時や緊急時に備えて、親との連絡手段や、避難場所などの情報共有、確認もしておきましょう。
緊急連絡先の共有
一人暮らしの高齢者にとって、緊急時の連絡先を周囲の人々と共有しておくことは非常に重要です。親の住所や電話番号、かかりつけ医の連絡先などを、近所の人や民生委員、地域包括支援センターなどに伝えておきましょう。また、親の家の見やすい場所に、緊急連絡先を記載したメモを貼っておくことも有効です。
キーボックスやスマートロックの設置
一人暮らしの高齢者が急病や事故で倒れた際、救急隊が家に入るために玄関のカギを壊さなければならないことがあります。キーボックスを設置しておけば、緊急時に救急隊が迅速に家に入ることができます。
またスマートロックであれば、家族が遠隔から解錠も可能です。
避難場所や避難経路の確認
地震や台風などの自然災害に備えて、親の住む地域の避難場所や避難経路を確認しておきましょう。また、親自身にも、避難場所への行き方を説明し、理解してもらうことが大切です。避難時の持ち出し品については、リュックサックなどにまとめて準備しておくと安心です。非常食や飲料水、常備薬、ラジオ、懐中電灯などを揃えておきましょう。
遠方の親とのコミュニケーションを大切に
遠方に住む親とのコミュニケーションを大切にするためには、定期的な帰省や訪問が欠かせません。帰省の際は、親の日常生活の様子を直接確認し、必要なサポートを行いましょう。また、親と一緒に過ごす時間を大切にし、思い出作りにも努めましょう。帰省の頻度は、親の健康状態や家族の事情によって異なりますが、少なくとも年に数回は訪問することが望ましいでしょう。




