IoT活用の具体例を解説。各業界での活用法とメリット・デメリットを解説

IoTの活用事例
IoTの活用事例

近年、急速に発展を遂げているIoT(Internet of Things)技術。様々な「モノ」がインターネットにつながることで、私たちの生活や産業に大きな変革をもたらしています。IoTの基本的な概念から具体的な活用例などを幅広く解説していきます。

IoTとは?基本的な仕組みと定義

IoTとは、「Internet of Things(モノのインターネット)」の略称です。これは、身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながり、情報をやり取りする仕組みを指します。

具体的には、センサーや通信機能を搭載したデバイスがデータを収集し、そのデータをインターネット経由でクラウドなどのサーバーに送信します。送信されたデータは分析され、その結果に基づいて機器の制御や状態の監視が行われます。

IoTで実現できること

IoT技術を活用することで、様々なことが可能になります。ここでは、IoTの主な機能を4つに分類して説明します。

モノを操作する

IoT技術を使用することで、遠隔地からでもモノを操作することが可能になります。例えば、スマートフォンアプリを使って外出先から自宅のエアコンをON/OFFしたり、温度を調整したりすることができます。また、工場の生産ラインを遠隔で制御し、生産量や品質を調整することも可能です。農業分野では、IoTデバイスを使って圃場の灌漑システムを自動制御するといった活用法があります。これらの操作は、人間が直接行う必要がなく、効率的かつ正確に実行できるのが特徴です。

モノの状態を知る

IoTデバイスに搭載されたセンサーを通じて、モノの状態をリアルタイムで把握することができます。冷蔵庫内の温度や湿度をモニタリングし、食品の鮮度管理に活用したり、工場の機械設備の稼働状況を常時監視し、異常の早期発見や予防保全に役立てたりすることができます。また、車両の燃料残量や各部品の状態を把握し、適切なメンテナンスのタイミングを知ることも可能です。これにより、問題が大きくなる前に対処したり、最適なタイミングでのメンテナンスが可能になります。

モノの動きを検知する

IoTデバイスは、モノの動きや変化を検知することができます。スマートホームでは、人の動きを感知して自動的に照明をON/OFFすることができます。物流倉庫では、商品の移動を追跡し、在庫管理を効率化することが可能です。また、ウェアラブルデバイスで人の歩数や心拍数を計測し、健康管理に活用することもできます。これにより、人間の目では捉えきれない細かな動きや変化を検知し、適切な対応を取ることができるのです。

モノ同士で通信する

IoTの特徴的な機能の一つが、モノ同士が直接通信を行うことです。例えば、自動運転車両同士が位置情報や速度情報を共有し、安全な走行を実現することができます。スマートホームデバイス同士が連携し、最適な室内環境を自動的に作り出すことも可能です。工場内では、機械設備同士が生産状況を共有し、全体の生産効率を最適化することができます。このモノ同士の通信により、人間の介在なしに複雑なシステムを効率的に運用することが可能になります。

IoTでできることについてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:IoTでできること。IoT製品が家にもたらす変化とは

IoTの具体例と活用事例

IoT技術は、私たちの身近な生活から産業現場まで、幅広い分野で活用されています。ここでは、具体的な製品や活用事例を紹介します。

身近なIoT製品

我々の生活の身近な活用事例を紹介します。

スマートホームでのIoT活用

スマートホーム関連

スマートホーム分野では、様々なIoT製品が登場しています。例えば、音声認識技術とIoT技術を組み合わせたスマートスピーカーは、家庭内のIoTハブとして機能し、音声指示で家電を操作したり、情報を取得したりすることができます。

スマート照明は、スマートフォンアプリや音声指示で操作できる照明システムで、自動で明るさを調整したり、外出時に自動で消灯したりする機能も備えています。スマートサーモスタットは、室温を自動で調整するIoTデバイスで、居住者の生活パターンを学習し、最適な温度管理を行います。外出時には自動で節電モードに切り替わるなど、省エネにも貢献します。

スマートロックは、スマートフォンアプリや指紋認証で開閉できるドアロックシステムです。来訪者に一時的なアクセス権を付与したり、不審な動きを検知して通知したりする機能もあります。また、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの家電製品もIoT化が進んでおり、例えばスマート冷蔵庫は内部の食材を管理し、不足している食材を自動で注文することができます。

スマートホームの活用事例についてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:スマートホームの活用事例を紹介。スマートホームにする際のポイントも解説

ウェアラブルデバイス

ウェアラブルデバイスの分野では、スマートウォッチが代表的なIoT製品です。腕時計型のこのデバイスは、心拍数や歩数、睡眠状態などを計測し、スマートフォンと連携して通知を受け取ったり、音楽を再生したりすることもできます。

スマートグラスは、メガネ型のIoTデバイスで、視界に情報を投影したり、カメラで撮影したりすることができます。産業現場での作業支援や、拡張現実(AR)アプリケーションでの活用が期待されています。

さらに、センサーを組み込んだスマート衣類も開発されており、体温や発汗量、姿勢などを計測します。スポーツウェアや作業服など、様々な用途で開発が進んでいます。

産業別IoT活用事例

IoTは様々な産業でも活用が進んでいます。具体的な産業別にIoT活用の事例について紹介します。

製造業

製造業では、IoT技術を活用して生産性の向上や品質管理の強化を図っています。スマートファクトリーと呼ばれる取り組みでは、工場内の機械設備や製品にセンサーを取り付け、生産ラインの稼働状況をリアルタイムで把握します。これにより、生産効率の最適化や予防保全が可能になります。

予知保全は、機械設備の稼働データを常時監視し、故障の予兆を事前に検知することができます。また、品質管理の自動化も進んでおり、製造工程の各段階でセンサーを使用し、製品の品質をリアルタイムでチェックします。

さらに、サプライチェーン管理にもIoTが活用されています。原材料の調達から製品の配送まで、サプライチェーン全体をIoTで可視化することで、在庫の最適化や納期の短縮が可能になります。

農業

農業分野では、IoT技術を活用してスマート農業の実現を目指しています。環境モニタリングは、圃場に設置したセンサーで気温、湿度、土壌の状態などを常時監視する取り組みです。

自動灌漑システムは、土壌の水分量を監視し、必要に応じて自動で灌漑を行うシステムです。水の無駄を省き、効率的な水管理が可能になります。農作業の自動化も進んでおり、GPSと連動したトラクターやドローンを使用し、播種や農薬散布などの作業を自動化しています。

家畜管理の分野でも、IoTが活用されています。家畜にセンサーを取り付け、健康状態や行動をモニタリングすることで、病気の早期発見や、最適な飼育環境の維持に役立てています。

医療・ヘルスケア

医療分野では、IoT技術を活用して患者のケアや医療機器の管理を行っています。遠隔医療は、ウェアラブルデバイスで患者の健康データを収集し、医師がリモートで診断を行うシステムです。

服薬管理では、IoT対応の服薬ボックスが、正しい薬を正しいタイミングで服用するよう患者に促します。服薬履歴も自動で記録されるため、適切な治療管理に役立ちます。医療機器の管理も重要な活用分野です。病院内の医療機器をIoTでネットワーク化し、稼働状況や位置情報を一元管理します。

高齢者見守りシステムは、センサーやカメラを使用して、高齢者の生活状況をモニタリングするシステムです。異常を検知した場合は、家族や介護者に通知を送り、迅速な対応を可能にします。

物流・小売

物流・小売業では、IoT技術を活用して在庫管理や顧客サービスの向上を図っています。在庫管理の最適化では、RFIDタグやセンサーを使用して、商品の位置や数量をリアルタイムで把握します。これにより、適切な在庫レベルの維持や、商品の破損・紛失の防止が可能になります。

交通・自動車

交通・自動車分野では、IoT技術を活用して安全性の向上や効率的な運行管理を実現しています。コネクテッドカーは、車両をインターネットに接続し、リアルタイムの交通情報や車両の状態を把握するシステムです。

自動運転技術も、IoTと密接に関連しています。各種センサーやカメラ、GPS技術を組み合わせて、車両の自動運転を実現します。これにより、安全性の向上や渋滞の緩和が期待されています。

スマートパーキングは、駐車場にセンサーを設置し、空き状況をリアルタイムで把握するシステムです。ドライバーはアプリで最寄りの空き駐車場を探すことができ、駐車時間の短縮や都市部の交通渋滞の緩和につながります。

IoTを支える技術

IoTシステムは、様々な要素技術の組み合わせによって成り立っています。ここでは、IoTを支える主要な技術について解説します。

センサー技術

センサーは、IoTシステムの「目」や「耳」の役割を果たす重要な要素です。温度、湿度、圧力、加速度、光、音など、様々な物理量を電気信号に変換し、データとして取得します。近年のセンサー技術の進歩により、小型化、高性能化、低消費電力化が進み、多様な用途でのIoT活用が可能になっています。

例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた超小型センサーは、スマートフォンやウェアラブルデバイスに搭載され、動作や環境の検知に利用されています。また、画像センサーの高性能化により、顔認識や物体検知などの高度な機能が実現しています。

通信技術(5G、LPWA)

IoTデバイスが収集したデータを効率的に伝送するための通信技術も、IoTの発展に大きく寄与しています。特に注目されているのが、5GとLPWA(Low Power Wide Area)です。

5Gは、高速・大容量、低遅延、多数同時接続という特徴を持ち、IoTの可能性を大きく広げます。例えば、自動運転車の制御や遠隔手術など、リアルタイム性が求められる用途での活用が期待されています。

一方、LPWAは、低消費電力で広範囲をカバーする通信技術です。バッテリー駆動の小型IoTデバイスに適しており、農業や環境モニタリングなど、広域に分散したセンサーからのデータ収集に利用されています。代表的な規格としては、LoRaWANやNB-IoTなどがあります。

クラウド・エッジコンピューティング

IoTで収集された大量のデータを処理し、有用な情報を抽出するためには、強力な計算能力が必要です。クラウドコンピューティングは、インターネットを通じて計算リソースを提供し、IoTデータの保存、分析、可視化を可能にします。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどの大手クラウドプロバイダーは、IoT向けの専用サービスも提供しています。

一方、エッジコンピューティングは、データの処理をネットワークの端(エッジ)で行う技術です。IoTデバイスの近くでデータを処理することで、クラウドへの通信量を削減し、リアルタイム性を向上させることができます。例えば、監視カメラの映像をその場で分析し、異常検知時のみクラウドに通知するといった使い方が可能です。

クラウドとエッジの適切な組み合わせにより、効率的かつ柔軟なIoTシステムの構築が可能になります。