不動産分野における「VR」活用術。内見利用や企業動向、導入メリットについて【不動産×テクノロジー】
不動産の賃貸契約を結ぶ上で重要な物件の内見案内。現地に手軽に出向くことができるお客さまであれば問題ありませんが、遠方からの引っ越しを検討している方にとっては内見に出向くだけでも負担になるものです。
そこで現在注目を集めているのが、「VR」を使った内見の手法です。今回はVRとはどのような技術なのか、導入メリットや各不動産事業者の導入意向なども併せて紹介していきます。
VRとは?

VRとは「Virtual Reality(バーチャルリアリティ)」の略称です。その名の通り、仮想空間を創り出し、まるでその場にいるような没入感のある体験をすることができるテクノロジーといえます。一部のゲーム機などでヘッドマウントディスプレイを装着するものも発売されていますが、まさにこれは代表的なVRです。
VRの用途としては、ゲームをはじめとしたエンタメ系のジャンルが代表的ですが、ビジネスにおいても活用が進んでいます。
VRと不動産の関係

不動産はVRのメリットを最大限活かせるビジネス分野のひとつです。
アパートやマンションの賃貸契約においては、実際に現地に行って内見をしてもらうことがほとんどですが、遠方に住んでいる人がわざわざ現地まで足を運ぶのは簡単なことではありません。いくつかの候補物件の中から間取り図や写真だけを見て判断するのではなく、VRによって現地の部屋の雰囲気や間取りがリアルに分かると、その人にとって本当に住みたい部屋がイメージしやすくなります。
また、賃貸だけではなく一戸建てや分譲マンションなどのモデルハウス・モデルルームも同様にVRを内見に利用できます。
VR内見のメリット
VRを内見に活用することによって、入居希望者だけではなく不動産事業者にとってもメリットがあります。
業務効率化につながる

アパートやマンションの賃貸契約をする場合、いくつかの候補物件を比較しながら検討することがほとんどです。しかし、あまりにも内見の数が多いと、それだけ業務時間が取られてしまい、スタッフは他の業務に手が回らなくなってしまうことも。
あらかじめ入居希望者にVRによる内見をしてもらうことによって、内見にかかる時間を短縮し業務効率化につなげられます。従業員の働き方改革にも大いに役立つツールになるはずです。
経費の削減

現地まで内見に出向くとなると、スタッフの人件費はもちろん、交通費をはじめとした経費もかかってしまいます。しかし、VR内見によって実際に現地まで内見に出向く頻度が減ると、その分の経費も削減することにつながります。
成約率の向上

事前にVR内見をしてもらうことによって、従来の間取り図や写真だけでは伝わらない魅力がその場で体験できます。そのため、実際に内見をしてもらうのは確度の高い物件のみになるため、必然的に成約率も向上することになるでしょう。
顧客満足度の向上
VR内見によって確度の高い物件を絞り込めるため、入居希望者にとっては内見に出向く手間を最大限省くことが可能になります。「内見に行ったらイメージと違ってがっがりした」ということも少なくなるため、顧客満足度の向上が期待できます。
VR内見を活用した事例
VR内見をサービスとして展開している事例をいくつか見てみましょう。
NURVE VR内見
NURVEという企業が提供しているVR内見は、専用のヘッドマウントディスプレイに映像を流して内見をしてもらうサービスです。周囲360°のパノラマ映像によってリアルに部屋の雰囲気を体感でき、現地に行かなくても実際に内見しているような感覚です。
すでに導入店舗数は3,000を突破し、150万戸以上の物件が登録されています。
VRマーケティングツール Warp
WarpはVR用の特設サイトの開設と専用のゴーグルを提供するサービスです。360°カメラで撮影した画像をVR対応のサイトとして構築することにより、自宅にいながらVR内見を楽しむことが可能になります。不動産情報サイトをはじめとしてインターネットでの集客を行っている不動産事業者も多いですが、VR内見対応のサイトを構築することによって多くの集客が見込めるようになります。また、専用のゴーグルはダンボールでできた素材で非常に安価。スマホをゴーグルにセットして利用するタイプのため、多くの人に手軽に配布できます。
https://one-stone.co.jp/service/warp/
VR活用による不動産業界の未来

これまでもVR内見のような360°画像によって物件案内を掲載している事業者は多かったですが、歪みや色合いが大きな課題となっていました。しかし、VRというテクノロジーが登場したことにより、従来のような課題がクリアされてリアルな内見画像を提供できるようになりました。
しかし、不動産業界においてVRの活用はまだまだ始まったばかりです。VRはリアリティがあるとはいえ、日当たりや近所の雰囲気、付近の騒音など、現地に行かなければ分からないことも多いのが現実です。将来的にさらに技術革新が進んでいくと、IoTなどのテクノロジーを活用したスマートホームが一般化してくることが予想されます。現在のVR内見は事前に撮影した画像をもとに案内していますが、IoTによってネットワークがつながるようになると、たとえば入居前の部屋にカメラを装着してライブ配信し、部屋の状態をいつでもVRで確認できるようになる可能性もあります。

今回紹介してきたように、VR技術をつかった内見は入居希望者はもちろん、不動産事業者にとってもメリットの大きいサービスといえます。内見に行かなければ分からなかったようなこともVR内見によって事前に判断できれば、本来行かなくても良い内見に時間を割く必要もなくなります。
また、実例として紹介したVR内見のサービスも、手軽なコストで利用できるものばかりです。成約率や顧客満足度の向上のためにも、まずは一度VR内見の活用を検討してみてはいかがでしょうか。