不動産業界で進むIoT活用。具体的な活用事例や導入機器を解説


IT化やDX化が遅いと呼ばれている不動産業界ですが、深刻な人手不足や業務効率化などを理由とした技術活用やサービス導入の流れは、どんどん強まっています。
そのひとつとして注目されているのが、不動産業界で活用されるIoT技術です。不動産業界でのIoT活用の事例や導入されている機器について紹介します。
不動産業界で進むIoT活用
今まではどちらかといえばアナログ的でIT化が遅れていた不動産業界ですが、宅建業法の改正などもあり、最近ではIoT機器の導入が進んできています。
不動産業界で導入されているIoTの活用事例を紹介します。
スマートホームの導入
不動産業界では、IoT技術を活用してスマートホーム化が進んでいます。
これにより、住宅の利便性が向上し、セキュリティやエネルギー管理が効率的になるなど、多くのメリットがあるからです。
IoT不動産の導入には、コストの低減や技術の進化が背景にあり、今後もその普及が期待されています。
たとえば、スマートロックやスマートメーター、スマートスピーカーなどのIoT機器が導入され、遠隔からの操作や管理が可能になっています。また、賃貸物件にIoT機器を導入することで、物件の価値を高め、入居率の向上にも寄与しています。
スマートビル化
不動産業界では、IoT技術を活用したスマートビルの導入が進んでおり、建物の省エネ化や利便性・安全性の向上、業務効率化など多くのメリットがあります。
スマートビルは、センサーや最先端の技術を活用して建物内のデータを統合管理し、リアルタイムで効率化を図る革新的な建物です。スマートビル化には以下のようなメリットがあります。
| 効果 | 解説 |
|---|---|
| 省エネ化 | 照明や空調などの設備が自動的に制御され、エネルギー消費が最適化されます。 |
| 安全性の向上 | セキュリティ体制の強化により、ビルの安全性が高まります。 |
| 業務効率化 | AI技術を活用した管理システムによって、業務プロセスが効率化されます。 |
| 満足度向上 | 従業員の満足度を向上させ、パフォーマンスの向上に寄与します。 |
スマートシティの構想
スマートシティの概念は、IoT技術を活用して都市の運営を効率化し、住民の生活の質を向上させることを目指しています。
不動産業界では、この技術を用いて、より持続可能で快適な都市環境を実現するための取り組みが進行中です。
日本では、スマートシティの導入に加え、内閣府が進めるスーパーシティの取り組みも開始されており、実証実験から実装へとフェーズが移行しています。
不動産デベロッパーによるスマートシティの開発が注目されており、スマートシティの具体的な例として、以下のようなプロジェクトがあります。
大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティ推進事業
エリアマネジメントをキーワードに、再開発を通じてスマートシティの機能を取り込んでいます。
千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」
ライフサイエンス、モビリティ、エネルギーの領域で、街全体がオープンイノベーションの場になることを目指しています。
公・民・学連携のデータプラットフォームづくりに取り組んでおり、ICTによるデジタル化やDXの促進を目的としています。
静岡県裾野市「Woven City」
自動運転技術、AI、ロボットなどの検証や実験を行うための街です。
宮城県仙台市「スーパーシティ構想」
映像をAIで解析し、通行量や属性を集計するシステムをデータ基盤に連携しています。
スマートシティ化は、都市OSという考え方を含め、住民にとってより良いサービスを提供するための基盤を構築することが重要です。
これにより、環境共生、健康長寿、新産業創造などの目標を実現することが可能になります。
不動産投資への活用
不動産投資におけるIoTの活用は、物件の価値を高め、賃貸経営の効率化を図るために注目されています。
IoT技術を導入することで、以下のようなメリットが期待されます。
| メリット | 解説 |
|---|---|
| 遠隔管理 | スマートロックやセキュリティカメラなどのIoTデバイスを使用して、物件のセキュリティ管理や鍵の開閉を遠隔から行うことができます。 |
| データ分析 | IoTセンサーからのデータを活用して、物件の使用状況やエネルギー消費を分析し、最適なメンテナンス計画を立てることが可能です。 |
| コスト削減 | 効率的なエネルギー管理やメンテナンスにより、運営コストの削減が期待できます。 |
| 入居者満足度の向上 | スマートホーム技術を導入することで、入居者にとって快適で便利な居住環境を提供し、入居率の向上に寄与します。 |
IoT技術を活用した不動産管理システムは、オートロックや防犯カメラ、空調、宅配ボックスなどをスマートフォンで一元管理できるため、入居者にとって安全で快適な生活環境を提供することができます。
さらに、IoTを活用した賃貸管理の事例としては、スマートホームシステムの導入や、駐車場のIoT化、共有スペースのIoT化などが挙げられます。
これらの技術は、物件の魅力を高め、賃貸市場での競争力を強化することにも繋がります。また、これらの技術は不動産投資の収益性を高めるだけでなく、持続可能な賃貸経営を実現するための重要な要素となっています。
IoT活用で不動産営業や業務が変わる?
IoTの活用は不動産業界において、営業や業務のあり方を大きく変えています。
ここでは、IoT機器を導入すると不動産従事者の日常業務がどのように変わるのかを紹介します。
不動産業界におけるIoTの活用は、今後もさまざまな形で進化し続けることが予想されます。
無人内見
スマートロックやそれと連動したシステムなどを活用することで、入居検討者が一人で物件を訪れて内見する「無人内見」が可能になりました。
無人内見のメリットには以下のようなものがあります。
| メリット | 解説 |
|---|---|
| 非接触・非対面の実現 | IoT技術を用いた無人内見システムにより、顧客は自分の都合に合わせて物件を内見でき、非接触・非対面でのサービス提供が可能になります。 |
| 営業効率の向上 | 物件の内見にスタッフが同行する必要がなくなるため、営業担当者は他の業務に集中でき、業務効率が向上します。 |
| 顧客体験の向上 | 顧客は自分のペースで物件を内見できるため、プレッシャーを感じることなく、より快適な体験が提供されます。 |
| コスト削減 | スタッフの常駐が不要になるため、人件費やその他の運営コストの削減が見込まれます。 |
| セキュリティとトラブル対応 | スマートカメラなどのセキュリティ機器を用いて、内見中のトラブルやセキュリティ問題をリアルタイムで監視し、対応が可能です。 |
このような無人内見システムは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて非接触サービスの需要が高まる中、さらに注目を集めています。
無人内見についてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:無人内見はスペース・コアが実現、導入のメリットやポイントとは
VRデバイスを活用した遠隔内見

VR内覧とは、仮想現実(Virtual Reality)技術を活用して、物件の内部を360度カメラで撮影し、その映像をVRゴーグルやスマートフォン、パソコンなどで見ることができるサービスです。
IoTとVRデバイスを活用した遠隔内見は、不動産営業や業務に革新をもたらしています。
この技術により、顧客は物理的な距離や時間の制約なく、物件を内覧できるようになりました。
VR内覧にすることで以下のようなメリットが期待できます。
| メリット | 解説 |
|---|---|
| 時間と場所を選ばない | 自宅やオフィスからでも、遠隔地の物件を内覧できます。 |
| 詳細な体験 | 360度の視点で物件を見ることができ、実際に訪れたような感覚を得られます。 |
| 効率的な物件選び | 多くの物件を短時間で比較検討できます。 |
| 営業効率の向上 | 内見のためのスケジューリングや物件の準備にかかる時間が削減され、より多くの顧客に対応できるようになります。 |
| 安全性の確保 | 特に感染症予防といった観点からは、非接触での内覧が可能となり、安全性が高まります。 |
実際の事例としては、VR内覧を提供することで、物件の魅力を高め、顧客の関心を引きつけ、最終的には成約率を向上させることが報告されています。
また、VR技術を活用することで、物件の内覧が必要ないほど詳細な情報を提供できるようになり、不動産業界の業務プロセスが大きく変化しています。
このように、IoTとVRデバイスの活用は、不動産業界における営業や業務の効率化、顧客体験の向上、そして新しいビジネスモデルの創出に寄与しています。
VR内見についてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:VR技術は、物件内見・内覧に活用できる?費用相場や効果について解説
スマートロックを活用した鍵の受け渡しのスマート化
スマートロックの導入は、鍵の受け渡しをスマート化し、以下のようなメリットをもたらしています。
| メリット | 解説 |
|---|---|
| 非接触での鍵の受け渡し | スマートロックを利用することで、物理的な鍵を直接手渡す必要がなくなります。これにより、内覧者が自分のスマートフォンを使用して、事前に設定された時間に物件にアクセスできるようになります。 |
| セキュリティの向上 | スマートロックは、不正アクセスに対するセキュリティ機能を備えており、鍵の紛失やコピーのリスクを減らします。 |
| 効率的な管理 | 鍵の開閉履歴をデジタルで記録し、管理者がリアルタイムで追跡できるため、物件のセキュリティ管理が容易になります。 |
| 利便性の向上 | 入居者や訪問者は、スマートフォンアプリを通じて簡単に鍵を操作できるため、利便性が向上します。 |
これらのメリットにより、不動産業界ではスマートロックを活用したサービスが増えており、無人内見や遠隔での物件管理など、新しいビジネスモデルが生まれています。
電子契約
IoTではありませんが、物理的な書類を使用せずに、契約書をデジタル形式で作成・交換・保管する電子契約も、不動産業務に大きな変化を与えています。
2022年5月18日より宅地建物取引業法(宅建業法)施行規則の一部改正により、重要事項説明書(35条書面)と不動産売買契約書(37条書面)の電子化が認められました。
これにより、宅地建物取引士の押印義務が廃止され、電子署名で契約を進めることが可能になりました。電子契約の導入により営業や業務プロセスに大きな変化をもたらしています。電子契約の導入には以下のようなメリットがあります。
| メリット | 解説 |
|---|---|
| 効率化 | 契約プロセスがデジタル化されることで、書類の準備や署名、送付などの時間が大幅に削減されます。 |
| コスト削減 | 紙の契約書にかかる印刷コストや郵送費用が不要になります。 |
| アクセス性の向上 | 遠隔地にいる顧客とも簡単に契約を交わすことができ、物理的な距離の制約を受けません。 |
| セキュリティ | 電子署名技術を用いることで、契約書の改ざん防止や本人確認が強化されます。 |
不動産テック市場は拡大中
少し前までは紙による契約や重要事項説明が法律で求められていたことや物件内覧には現地での案内が必須だったことなどからデジタル化が進んでいない不動産業界でしたが、宅建業法の改正やコロナ禍により求められた非対面などにより、近年不動産業界でもDXやテック化の動きが顕著になってきています。
不動産業界でのIT化・DX化を進める不動産テックの市場動向から、不動産業界でのIoT化の動きを紹介します。
IoTやスマートホームをはじめとした不動産テック市場は現在も拡大中
矢野経済研究所が公表している2021年の国内の不動産テック市場を調査した結果を見ると、不動産テック市場はこれからも拡大傾向にあるようです。
不動産テック市場に関する調査を実施(2021年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
消費者向けサービスと事業者向けサービスを合算した2020年度の不動産テック市場規模は前年度比108.6%の6,110億円と推計しています。

不動産業界における人手不足を起因とした業務効率化や省人化といったトレンド加え、不動産事業者と一般消費者の間にある情報の非対称性などを解消することを目的としたサービスや技術活用が期待されています。
スマートホームサービス会社との連携でIoT化をスムーズに
スマートホームサービス会社と連携することで、IoT技術の導入をスムーズに進めることが可能になります。
不動産業界でIoTを活用する上でスマートホームサービス会社に相談するメリットは、以下の通りです。
これらのメリットは、不動産業界における競争力の強化と持続可能なビジネスモデルの構築に貢献します。
専門知識の提供
スマートホームサービス会社は、IoT技術に関する専門知識を持っており、最適なシステムの選定や導入方法を提案してくれます。
効率化とコスト削減
IoT技術の導入により、物件管理や運営の効率化が図れ、長期的にはコスト削減にもつながります。
物件価値の向上
スマートホーム化された物件は、利便性や快適性が高まるため、物件の価値を高めることができます。
顧客満足度の向上
住宅の利便性やセキュリティが向上することで、入居者の満足度を高めることができます。
差別化とブランディング
スマートホームサービスを導入することで、他の物件との差別化が図れ、ブランドイメージの向上にも寄与します。
アフターサポート
導入後のフォローアップやトラブル対応など、継続的なサポートを受けることができます。




