HEMSを後付けすることはできる?必要な機器や費用相場、活用できる助成金も紹介

住宅のエネルギー消費量を見える化できる「HEMS」は、近年新築住宅への導入が進んでいます。
では、HEMSを既存の住宅に後付けすることはできるのでしょうか。HEMSが後付けできるのか、利用できる助成金についても紹介します。
HEMSを後付けすることは可能
結論からいえば、HEMSは既存住宅に後付けすることが可能です。
後付けする際の費用や流れを紹介する前に、そもそもHEMSとはどういったものなのか、概要を解説します。
HEMSとは
HEMSとはHome Energy Management Service(ホーム・ エネルギー・マネジメント・システム)の略称です。自宅のエネルギー消費量をモニターで管理・制御することができるシステムや機器を指します。
近年数多くの住宅に設置され始め、政府としても2030年にはすべての住宅に設置することを目標としています。
HEMSのメリット
HEMSのメリットは「エネルギー消費量の見える化」と「一元管理が可能」という点です。
HEMSでは自宅で使用したエネルギー消費量を見ることができ、使用電気量を把握できます。
昨今ウクライナ情勢などによって、日本の電気代やエネルギーコストが高騰しています。HEMSで使用エネルギー量を確認し、節電・省エネを意識することが注目されています。
また、自宅の家電をネットワークでつなげると、スマートフォン1台で機器を遠隔操作でき、スマートホームとも連動させることが可能です。
家電が多くなるとリモコンの数も増えるうえ、家電がある部屋で操作する必要があります。しかしスマートホーム環境にすれば、どの部屋からでも操作可能です。HEMSによって家全体の電気使用量を事前に設定しておけば、自動で消費量に合った電気をコントロールし、管理することも可能です。
なぜHEMSが普及しているのか?
世界各国ではSDGsや2015年のパリ協定など、地球温暖化や環境破壊防止への対策を行っています。
日本でも2030年までに温室効果ガス排出量を2013年度比-26%の水準とするINDC(約束草案)を決定しました。INDCでは家庭部門においても温室効果ガス排出量を削減する目標を掲げているため、各家庭のエネルギー消費量を削減する努力が求められています。
そのため政府は各家庭にHEMS導入を推進し、エネルギー消費の見える化やエネルギーの使用量を抑制することを目論んでいます。このような背景もあり、昨今「省エネ」というワードが意識されるようになりました。近年の住宅業界では省エネ性能を持ち合わせた住宅(ZEHや長期優良住宅など)を建築する際、補助金や税額控除などを受けられます。
HEMSに関しては平成23年と25年に補助金の交付を行っています。2030年までに各家庭へ導入することを目標としていることを考えると、この先補助金交付がある可能性は十分あります。補助金に関しては後ほど詳しく紹介しますが、HEMSの普及は今後も高まっていくと推測できるでしょう。
HEMSを後付けする費用相場
ではHEMSを後付けする場合、どれくらいの費用が発生するのでしょうか。費用相場とおすすめのHEMS機器を紹介します。
約15万円~20万円
HEMSの設置費用はメーカーや施工会社によって価格が異なるものの、約15万〜20万円になるケースが多いです。HEMS本体機器が10万〜15万円、分電盤が2万〜3万円、施工費用が約3万円となります。
とはいえ、実際HEMSと取り付ける際は、施工会社に見積もりを取ってから判断しましょう。
対応家電も購入する必要がある
近年の家電はHEMSに対応しているものが数多くあります。しかし、どの家庭でも常に最新家電を使っているわけではありません。
HEMSの機能を最大限に活用するには、HEMSに対応している家電の設置が必要です。そのため、取り付け費用の他に、家電の入れ替えに関わる費用がかかります。
しかし、家電も決して安い価格ではありません。そのため、少しずつ入れ替えをすることが一般的でしょう。
おすすめの家電の費用
HEMSと相性のよい家電は以下の3つが挙げられます。
エアコン
スマートフォンで遠隔操作ができるため、どの部屋からでもオンオフが可能です。特に冬場は、寝室からリビングに行く際にエアコンをつけて温めておけるのはメリットです。
また、電気料金もHEMSによって見える化されるため、節電を意識することにもつながります。
蓄電池
太陽光パネルを設置している家庭には、ほとんどのケースで蓄電池を設置しています。
HEMSと連携させることで、天気と電気量を把握してくれます。その結果1日に必要な電気量が分かり、停電時に備えて電力を蓄えてくれるメリットがあります。東日本大震災などの大災害が発生した時は電力復旧まで数週間かかった事例もあるため、蓄電池の強みは大きいです。
エコキュート
HEMSとエコキュートを連携させると、お湯の使用量や温度を学習してくれるため、効率よく光熱費を抑えられます。
また、スマートホーム化すると、外出先から帰宅時間に合わせて、スマートフォンでお風呂を沸かすことができます。冬場など寒い時期や雨に打たれて風が引きそうな時、すぐに体を温められます。
HEMS導入で活用できる補助金

HEMSを導入する際には、さまざまな補助金や助成を受けることができます。
国の補助金
HEMSの補助金は一般社団法人環境共創イニシアチブが請け負っています。過去2回ほど補助金を行っておりましたが、東日本大震災への復興を優先したこともあり2013年に打ち切りとなっています。
しかし、2022年には次世代HEMS実証事業として、HEMSを導入した次世代ZEH住宅の建築に対する補助金を行っております。
当時の補助金上限額は定額112万円でした。2023年度でも以下のとおり、次世代HEMS実証事業として公募しています。
(1)提案応募期間2023年4月17日(月)10:00 ~ 2023年7月28日(金) 17:00締切(2)提案移行期間2023年4月17日(月)10:00 ~ 2023年5月31日(水)17:00締切(3)次世代HEMS実証事業の公募期間2023年4月28日(金)10:00 ~ 2023年11月10日(金) 17:00締切 |
本補助金はHEMSを導入したZEH住宅の建築を行った場合に交付されます。HEMSだけの設置は該当しないため注意してください。
とはいえ、2030年に各世帯へHEMSの導入を検討しており、既存住宅へのHEMS導入の補助金が交付される可能性もあります。政策の動向に注視しておく必要があるでしょう。
地方公共団体(自治体)の補助金
各地方公共団体では、HEMSの導入に関する補助金を交付しているケースがあります。ここではいくつか紹介します。
申請可能地域 | 申請期間 | 補助金額 |
---|---|---|
東京都江東区 | 令和5年4月3日(月曜日)~令和6年3月15日(金曜日) | 設置に要する経費の5%(上限1設備あたり2万円) |
埼玉県熊谷市 | 令和5年4月3日(月曜日)~令和6年3月8日(金曜日) | スマートハウスを新築または購入した人は一律30万円 |
愛知県豊田市 | 令和5年4月3日(月曜日)~令和6年3月29日(金曜日) | 5万~20万円 |
大阪府東大阪市 | 令和5年6月1日(木曜日)~令和6年2月29日(木曜日) | 4万~25万円 |
補助金の一例を紹介しましたが、細かな条件が求められるケースが多いです。HEMSを導入すればよいというわけではないため、地方公共団体のホームページで確認するか、施工会社に聞いてから工事を行うようにしましょう。