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在宅介護で活用されるIotを紹介。在宅介護の負担を軽減する機器はどのようなものがある?

高齢者の家族を持ち、リハビリ施設や高齢者向けのデイサービスなどを利用している家庭でも、そういった施設やサービスを利用していない間は、在宅での介護環境を整えなければなりません。

少子高齢化が進む昨今、在宅介護の負担は高まっている一方で、介護をサポートするIoT機器やスマートホームサービスなども登場しています。

在宅介護で活用されるIoTサービスについて解説します。

在宅介護を取り巻く現状と抱える問題

出生数の減少により、少子高齢化が社会問題になって久しくなりますが、遠くない将来には「超」高齢化社会が訪れようとしています。

高齢化社会が進むにつれて膨れ上がっているのが、介護の問題です。介護ができる働き手や若者が減少し、老老介護も切実な課題となっています。在宅介護についての現状と在宅介護が抱えている問題について解説します。

国内の少子高齢化が進み介護市場は拡大傾向

下記は、内閣府が「第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題」で公表したグラフです。

内閣府資料より

引用:内閣府「第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題

戦後、日本は経済成長による所得水準の向上、社会保険制度の充実、医療技術の進歩などがあり、1975年頃まで出生率は2.1前後で推移していました。

しかし、1971年から1974年にかけての第2次ベビーブーム以降、出生率は減少し続け、1975年には2.0を下回りました(1.91)。1980年にはやや回復したものの、1980年代半ば以降は減少傾向にあります。

このような出生率の低下と平均寿命の高齢化が、近年の少子高齢化につながっています。特に2025年には、団塊の世代が75歳以上になり、人口の2割弱にあたる約2,200万人が75歳以上の超高齢社会になると予想されています。

このような状況の中で、介護市場に対する関心が高まっており、市場規模は今後さらに拡大する見通しです。

日本国内における介護市場の今後の動向について、デロイトトーマツが2017年1月25日に公表した「国内介護市場の動向について」を引用しながら見てみましょう。

デロイトトーマツ「国内介護市場の動向について」より

上の図表1のように、高齢者人口は増加が続いており、介護関連市場は拡大傾向にあります。具体的には、2014年では8.6兆円だったものが、2025年には18.7兆円になると予測されています(図表2)。

デロイトトーマツ「国内介護市場の動向について」より

従事者不足などの介護業界の課題

政府は、財政事情から社会保障費を抑えるために高齢者負担の増加や在宅サービスの充実をはかっており、介護報酬にもその方針は及んでいます。

2015年の介護報酬改定により、6年ぶりに全体改定率がマイナスとなりました。

デロイトトーマツ「国内介護市場の動向について」より

介護職員の給与は業務の負担に比して少ないといわれていて、就労希望者が少なく、人材確保に頭を悩ませる事業者が増えています。外国人人材の活用も図られているところですが、言語の問題などもあり思うようにはすすんでいません。

2025年に向けた介護人材にかかる需給推計をみると約38万人の人材不足が見込まれています。

デロイトトーマツ「国内介護市場の動向について」より

政府は在宅介護を推進

政府は財政事情もあり、また、下記データから国民の要望もあるとして、在宅介護の推進を図っています。

  • 65歳以上の高齢者数は2025年には3,657万人となり、ピークを迎える2042年には3,878万人になると見込まれる
  • 75歳以上の高齢者数については205年には2,000万人を超え2055年には全人口の25%を超えると見込まれる(表1)
  • 首都圏をはじめとする都市部では今後急速に75歳以上の人口が増加する(表2)
  • 自宅で療養しながら必要に応じて医療機関などを利用したい方を合わせると「自宅療養」を希望する方は60%以上となる
  • 要介護状態になっても自宅や子供・親族の家での介護を希望する方が4割を超えている(図1)
引用:厚生労働省「在宅医療・介護の推進について

次に、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが令和3年3月に公表した「令和2年度 老人保健事業推進費等補助金・老人保健健康増進等事業・在宅介護実態調査結果の分析に関する調査研究事業」を引用して、「介護者が不安を感じる介護」「就労継続が困難と考える介護者が不安に感じる介護」について紹介します。

下の図は主な介護者が現在の生活を継続していくにあたって不安に感じている介護についての回答を求めたものです。

在宅介護実態調査結果の分析に関する調査研究事業【報告書】より

要介護3以上では「認知症状への対応」「夜間の排泄」についての不安が大きいことがわかります。

次に、就労継続が困難と考える介護者が不安に感じる介護は「認知症状への対応」と「夜間の排泄」「日中の排泄」が高くなっています。

このように、在宅介護をするにあたって「認知症状への対応」や「排泄」の管理が介護をするにあたって介護者を不安にさせる大きな要素であるといえるでしょう。

在宅介護で活用されるIoT機器を紹介

高齢化社会がすすむことで財政を圧迫すること、また生活者の多くが在宅での介護を望んでいることを受けて、政府は在宅介護を推進しています。

しかし、在宅介護をするには不安や課題が山積しています。在宅介護をするために、家族は仕事を辞めなければならず、介護者の生活を追い詰める実態があることもわかりました。

介護者の負担を軽減し不安を解消するためにIoT技術がどのように活用されており、活用が期待されているかを解説します。

在宅介護で期待されるIoT技術

在宅介護を支える介護者の多くは「認知症状への対応」と「排泄」の管理について不安を持っています。

そこで、在宅介護では以下のようなサポートが重要であり、IoT技術の活用が期待されます。

  • 見守りのサポート
  • コミュニケーションのサポート
  • 排泄支援

見守りのサポート

IoT技術を活用して見守りサポートをすると、高齢者の安全や健康状態を離れていても確認できます。つきっきりで見守る必要がなくなり、看護者の負担をやわらげることができます。

具体的には、以下のようなメリットがあります。

  • 家族が離れて暮らしていても見守りができる
  • 看護者が就労できるようになる
  • 夜間も看護のために何度も見守るために起き上がる必要がなくなる

見守り型のシステムには、接触型と非接触型の2種類があります。

接触型

ベッドやベッドから降りた位置において利用するセンサーマットや身に着けるバイタルセンサーなど

非接触型

ドアや壁、エアコン、ベッドの下、家電など身近なものにセンサーやカメラを搭載して高齢者の動きを察知する

見守りセンサーが高齢者に異常があれば感知して、直ちにスマートフォンやパソコンに通知します。また、付属のカメラを通して、高齢者の状態をその場で確認できます。

このように、センサーとカメラ、スマートフォンなど複数のIoT技術を連携させて高齢者の見守りをサポートしてくれます。

コミュニケーションのサポート

高齢者のコミュニケーションをサポートする役割を介護ロボットが担っています。

「ロボット」と聞けば角張っていて大仰なイメージがありますが、毛足が長いペット型のロボットもあり高齢者の気持ちを癒してくれます。

介護ロボットは、高齢者に声掛けをしてコミュニケーションを図るだけでなく、内蔵されたセンサーで高齢者を見守る役目も果たしてくれます。

音楽を流したり、音楽と一緒に体を動かす遊びを促したり、クイズを出したりと高齢者のレクリエーションを促す機能もあります。

また、モニターを搭載している機種であれば、離れていて直接会うことができなくても家族と話せるため、高齢者も家族も安心して生活ができます。

排泄支援

介護者の不安は「排泄支援」に多く向けられていました。IoT機器を高齢者が身につけておくことで排泄支援ができ不安をやわらげることができます。

たとえば、超音波センサーで膀胱の大きさの変化をとらえ排尿のタイミングを検知します。適切なタイミングでおむつの交換やトイレへの誘導ができるため、介護者の負担を軽減してくれます。

また、トイレへの誘導ができることから高齢者の自立が促されることで、高齢者の生活の質を向上できます。さらに、長時間おむつをつけ続けることによる肌のトラブルも軽減されるでしょう。

IoT技術の活用例

IoT技術を活用すると、高齢者の動きを検知でき、「いつもは起き上がる時間なのに起きてこない」「夜間に理由がないのに外出した」「熱中症の危険があるのにエアコンが動作していない」などの異常があればすぐに知ることができるので、介護者の負担をやわらげることに貢献してくれます。

以下は、IoT技術を利用した活用例です。

  • トイレのドアなどに赤外線センサーを設置して高齢者の「動き」や「動きがないこと」を検知します。高齢者の転倒や転落、トイレでの長時間のうずくまりなどの異常を知ることができます。
  • 動きが少ない寝たきりの高齢者にはレーダーが利用できます。少しの動きも感知でき、装置を身につけなくても高齢者の心拍数や呼吸、寝返り回数などを確認できます。
  • 温度や湿度センサーとエアコンが連携していれば、いつでも高齢者の部屋を快適な状態にしておけるので安心です。また、エアコンや消臭器などと連動することで部屋のにおいの軽減にも役立ちます。
  • 腕時計型など身につけることができるデバイスを高齢者が身につけることで、脈拍や心拍数、位置情報などを知ることができます。
  • AIカメラによって、高齢者の動きを見守ることができます。転倒などの事故、顔色に異常がないか、食事のカロリー解析、遠隔地からの会話などができます。

介護予防・自立支援のためのIoT活用

超高齢化社会に向けて重要なのは、介護が必要にならないような、介護予防や高齢者の自立支援です。介護が必要になってからでは、自立可能な状態にもどるには相当な困難が伴います。

そのために、まずは介護が必要な状態を招かないようにすることが大切です。日常生活が不活発ではないか、病気やケガをしたことによって過度に安静にしていないか、などの見守りが必要です。

IoT技術を活用して、高齢者の生活のリズムを観察できます。湯沸かしのポットやカメラモニター、ベッドの見守りセンサー、スマートロックなどで、高齢者の起床から就寝、外出や日々の生活を知ることができるため、離れていても高齢者に適切なアドバイスができます。

介護や見守りにも活用できるスマートホームサービス

身近にあるスマート家電でも、介護や見守りに活用できるデバイスがあります。

スマートホーム化なら介護に役立つだけでなく防犯・防災にも活躍

一つひとつの家電がインターネットによって相互につながっているスマートホームなら、介護や介護予防になるホームヘルスケアに利用できるだけでなく、防犯や防災にも活躍します。

先に紹介したように、今後迎えようとしている超高齢化社会では人材や施設の不足により充実した介護サービスが期待できない懸念があります。

そのような状況で、あらゆるセンサーやAIカメラ、スマートフォンなどが連携して情報を管理、通知してくれるスマートホームがある暮らしに期待が高まっているのです。

住まいのスマートホーム化で見守りや生活の利便性が向上

Wi-FiやBluetoothを活用すれば比較的費用をかけず、簡単に自宅をスマートホーム化できます。工事が不要で後付けできるので、古い家でも賃貸住宅でもスマートホーム化は可能です。

  • スマートリモコンを使えば家中の電気製品がスマートフォンから操作が可能になり、温湿度計のセンサーと連動させれば自動でエアコンのON-OFFが設定できます。
  • スマートカメラを玄関、廊下、キッチンやリビングなど普段の生活圏に設置しておけば万一転倒事故などが起きてもてもすぐにわかりますし、声掛けもできるので普段の会話や「暑くなりそうだからエアコンのスイッチを入れてね」などのアドバイスもできます。
  • トイレなどにセンサーを設置しておけば、高齢者がトイレに入れば手元のスマートフォンに通知がくるようにできるので万一トイレから出てこないアクシデントがあってもすぐにわかります。
  • スマートロックを玄関に設置しておけば、訪問者があればスマートフォンに通知が届きますし、夜間に予定がないのに外出するようなことがあってもわかるので安心です。
  • スマートフォンからテキストメッセージを送れば音声で再生してくれるロボットがあれば話しづらいときでもメッセージを送れるので、回りをきにすることなくいつでも離れた場所から声掛けができます。
  • スマートスピーカーは音声を再生するだけでなく、高齢者が忘れやすいことをメモすることにも利用できます。また、天気や交通情報なども調べてくれるので高齢者が活動するのに役立ちます。

スマートスピーカーなら、スマートフォンやタブレットに入力するのが難しい高齢者でも普段通りに話しかければ利用できるので導入しやすいでしょう。画面付きのスマートスピーカーなら会話もできるので、さらに便利です。

スマートホームサービス提供会社に相談しましょう

自宅のスマートホーム化を検討しても、いろいろなデバイスがあるだけにかえって悩んでしまうこともあるでしょう。

実は、いろいろとある機器同士で、中には相性が悪くてうまく連携できないこともあります。

スマートホーム化を考えているなら、スマートホームサービス提供会社に相談することをおすすめします。スマートホームサービス提供会社ならいろいろな機器を扱っているので、住まいの現状を聞きながら希望がかなうような最適な提案をしてくれるでしょう。

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