管理戸数を増やす方法|賃貸管理会社が管理受託を伸ばす戦略と成功のポイント

管理戸数の拡大は、賃貸管理会社にとって経営の根幹をなす重要な要素です。新規オーナーとの接点づくりから解約防止まで、課題は多岐にわたります。
管理受託を着実に伸ばすための営業戦略・差別化施策・解約防止策を体系的に解説します。
管理戸数が増えない賃貸管理会社の共通課題
管理戸数が思うように伸びない会社には、新規獲得と既存維持のどちらかが機能していないケース、あるいは両方が停滞しているケースに大別されます。個別の原因を丁寧に把握することが打開策の第一歩です。
新規オーナーとの接点が少ない
管理受託を増やすには、まず「オーナーに知られる」ことが前提です。しかし多くの管理会社では、既存の紹介ルートや長年の関係顧客に依存しており、新規オーナーとの接触機会が体系的に設計されていません。チラシや飛び込み営業といった従来型のアプローチが機能しにくくなっている今、ウェブやイベントを通じた集客導線の整備が急務となっています。
管理替えの提案ができていない
賃貸市場に流通する物件の多くはすでにいずれかの管理会社が受託しており、新たな管理受託の実態は「管理替え」の獲得にほかなりません。他社管理物件を持つオーナーへの積極的な働きかけができていない会社は少なくなく、「既存顧客対応で手いっぱい」という状況が攻めの営業を阻んでいます。
業務が忙しく営業に時間を割けない
入居者対応、設備トラブル、契約更新…といった日常業務に追われるなかで、新規営業に充てられる時間は自然と削られていきます。この構造的な問題を解消しない限り、管理戸数の増加と業務負荷の増大がトレードオフになり続けます。業務効率化と営業力強化は、切り離せないセットで考える必要があります。
既存オーナーからの解約が発生している
新規受託を積み重ねても既存オーナーからの解約が続けば管理戸数は増えません。空室の長期化、対応の遅さ、コミュニケーション不足…オーナーが解約を決断する背景はさまざまですが、その多くは不満の蓄積です。攻めと守りの両輪を機能させることが、管理戸数を本当の意味で「増やす」ことにつながります。
管理戸数を増やすための営業戦略
管理戸数を増やすための打ち手は、「既存オーナーからの深掘り」「管理替え獲得」「紹介ネットワーク構築」「ウェブ集客」の4つに大別できます。自社の現状と強みを踏まえながら、優先順位をつけて取り組むことが重要です。
既存オーナーから追加物件を受託する
最も効率的な管理戸数の拡大方法のひとつが、既存オーナーへのアプローチです。信頼関係がすでに構築されているため、新規開拓に比べて受託につながりやすく、提案コストも低く抑えられます。定期的な面談やレポーティングの機会を通じて、オーナーの保有物件や今後の購入・相続の意向を把握し、「資産状況を継続的に見てくれる管理会社」というポジションを確立することが追加受託への近道です。
管理替え提案で他社管理物件を獲得する
管理替えを促すには、オーナー自身が「今の管理会社では不十分だ」と感じている状況を捉えることが肝心です。オーナーが抱える悩みに寄り添うコンテンツや提案の入口を用意し、自社の管理品質を具体的に示すことが、獲得への道を開きます。
空室対策を切り口にした提案
「空室が続いている」「入居者がなかなか決まらない」という状況は、管理替えを検討するきっかけになりやすく、同時に提案の入口としても機能します。自社の空室対策の実績や手法を具体的に示しながら、現在の管理会社との違いを分かりやすく伝えることが管理替え提案の核心です。
リフォーム・リノベーション提案
築年数の経過した物件を抱えるオーナーに対して、リフォームやリノベーションの提案を切り口にすることも有効です。設備の刷新や間取り変更によって物件の競争力を高めることは、空室解消や賃料維持に直結します。管理会社がリフォーム提案まで担える体制を整えることで、「総合的な資産活用のパートナー」としての存在感を高められます。
不動産会社・建築会社からの紹介ネットワークを作る
仲介会社、建築会社、司法書士、税理士など、不動産オーナーと接点を持つ業種は多く、それぞれが「管理会社を探しているオーナー」と日常的に関わっています。定期的な情報交換や勉強会の開催、相互紹介の仕組みづくりなど、地道なリレーション構築が中長期的な受託増加につながります。紹介に応えられる管理品質を維持することが、このネットワークを機能させ続ける前提条件です。
ウェブ集客でオーナーからの問い合わせを増やす
管理会社を探しているオーナーが検索エンジンで情報収集する際に、自社のウェブサイトや記事コンテンツが上位に表示されることは大きな集客機会です。空室対策や賃貸管理にまつわるコンテンツを継続的に発信し、問い合わせへの導線を整備することが重要です。セミナーやウェビナーをウェブ上で告知・開催する手法も、オーナーとの新たな接点づくりとして有効です。
そのほか、賃料査定のウェブ媒体に掲載するなども、費用をかけて集客を強化する手段としては有効です。
オーナーに選ばれる管理会社になるための差別化ポイント
管理受託の競争が激化するなかで、「選ばれる管理会社」になるには明確な差別化が必要です。価格競争に巻き込まれず、オーナーから長期にわたって信頼を得るためには、サービス品質と提案力の両面を磨き続ける必要があります。
空室対策の提案力
賃料設定の見直し、ターゲット入居者の分析、掲載媒体の最適化、設備改善の提案など、多角的な空室対策を提供できる管理会社は、オーナーからの評価が高くなります。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点での賃貸用空き家は全国で443万戸に達しており、競争環境は徐々に厳しくなっています。

こういったデータを提示しながら、具体的な空室解消の実績と提案プロセスをオーナーに示せるかどうかが、選ばれるかどうかを分けます。
トラブル対応・入居者サポートの充実
管理品質の高さを示すのが、トラブル発生時の対応速度と丁寧さです。入居者から「困ったときに頼れる」と思われることが満足度を左右し、長期入居につながります。オーナーにとっても、トラブルが適切に処理されることは安心感の源泉であり、解約防止にも直結します。24時間対応の体制整備や、入居者とのコミュニケーション手段のデジタル化は、対応品質の底上げに有効です。
そういった対応が、ウェブ上で口コミを集め、結果的に集客に大きな影響を与えます。
入居者満足度を高める設備・サービスの導入
入居者に「この物件に住み続けたい」と思わせる環境をつくることは、長期入居の実現と空室発生の抑制に直結します。管理会社が主導して物件の付加価値を高める提案ができれば、オーナーからの信頼も自然と高まります。近年注目されているのが、IoTやスマートホーム関連の設備導入です。
スマートロックなどのIoT設備による利便性向上
スマートロックや宅配ボックス、インターネット無料といった設備は、入居検討者が物件を選ぶ際の重要な判断材料になっています。スマートロックは鍵の紛失リスクの排除やセキュリティ性の向上に加え、管理会社にとっても内見時の鍵受け渡し業務が不要になるなど、業務効率化の観点でもメリットがあります。
遠隔管理や設備監視による管理品質の向上
IoTを活用した遠隔管理の仕組みを導入することで、共用部の状態確認やクラウド防犯カメラの映像確認をオフィスから行えるようになります。現地訪問の頻度を減らしながら管理品質を維持・向上できるため、人手不足が深刻化する管理業界において有効な手段です。対応の迅速化とコスト削減を同時に実現できる点も、導入を後押しする理由のひとつです。
スマートホーム化による物件価値の向上
照明・エアコン・施錠のアプリ操作や顔認証入室といったスマートホーム体験は、入居者にとって「生活の質が上がる」という実感をもたらし、競合物件との差別化要素になります。スマートホーム設備は、家賃の上昇や空室率の改善につながるため、管理会社がオーナーに提案できる「収益改善策」としての価値も高まっています。
管理戸数を減らさないための解約防止戦略

管理戸数の純増には、新規受託と同じくらい「解約を防ぐ」取り組みが欠かせません。一件の解約は収益損失であるだけでなく、オーナーの不満が周囲に伝わるリスクも伴います。解約防止は守りであると同時に、紹介獲得という攻めにも直結する施策です。
オーナーとのコミュニケーション強化
オーナーが解約を決断する背景の多くに「管理会社との距離感」があります。定期レポートの送付、収益状況のタイムリーな共有、改善提案の実施報告など、オーナーが「きちんと管理されている」と実感できるコミュニケーションの設計が重要です。連絡がなければ不安が募り、他社への乗り換えを検討する誘引になってしまいます。
入居率を維持するための施策
入居率は管理会社への評価に直結します。退去が発生した際にいかに早く次の入居者を確保できるかが問われますが、そのためには繁忙期を見据えたリーシング計画の策定、複数の仲介会社との連携、物件情報の精度向上など、募集力そのものを高める継続的な取り組みが必要です。
トラブル対応スピードの改善
入居者からのクレームや設備故障への対応が遅れると、オーナーへの報告も後手に回り、信頼を損なう原因になります。問い合わせ窓口のデジタル化や、対応状況をリアルタイムで把握できる仕組みの整備が対応速度の向上に有効です。チャット形式での入居者対応は履歴管理が容易であり、対応漏れや認識のズレを防ぐ効果もあります。
入居者満足度向上による長期入居の実現
退去が少なければ原状回復費用や空室期間のロスが減り、管理会社への評価が高まります。快適な住環境の提供、困ったときに頼れる対応体制、生活を豊かにする設備・サービスの充実が、入居者満足度向上の柱です。入居者が満足していれば更新率も上がり、オーナーの収益安定と管理会社への信頼強化の好循環が生まれます。
これからの賃貸管理会社に求められる「管理の付加価値」
賃貸住宅管理業法の全面施行(2021年6月)以降、管理業者への登録義務付けが進み、2025年7月末時点で賃貸住宅管理業者の登録数は9,987社あります。登録済み事業者の管理戸数は2022年度末時点で約790万戸であったため、現在はさらに増加していると見られます。業界全体の規模が拡大するなかで管理品質の「見える化」が進み、オーナーが管理会社を比較・選別しやすくなっています。こうした環境変化は、管理会社に対してより高い付加価値の提供を求める圧力にもなっています。
管理業務は「物件管理」から「資産価値管理」へ
これまでの賃貸管理は家賃回収・入居者対応・設備メンテナンスといった「物件の維持管理」が中心でした。しかし、オーナーが管理会社に期待する役割は変わりつつあります。長期的な資産価値をどう守り高めるか。そうした観点を持ったアドバイスを提供できる会社が「パートナー」として選ばれ続けます。収益シミュレーションや市場分析、リノベーション提案など、「資産価値管理」の視点を取り入れた業務への転換が求められています。
IoT・スマートホームが賃貸管理の差別化要素になる理由
スマートロック、遠隔監視カメラ、自動通知システムといったIoTの活用は、業務効率化と管理品質向上を同時に実現します。管理会社にとっては現地訪問回数の削減や対応の自動化につながり、オーナーにとっては透明性の高い管理の実感に、入居者にとっては生活の利便性と安心感の向上につながります。三者すべてにメリットをもたらすIoT活用は、「差別化のための付加機能」から「標準装備すべき管理インフラ」へとシフトしつつあります。
入居者体験を高める管理会社が選ばれる時代
最終的に管理戸数を増やし続けられる管理会社は、入居者にとって「住んでよかった」と思われる物件を提供し続けられる会社です。オーナーに選ばれ、入居者に選ばれ、その結果として市場での評判が高まる。この好循環を生み出すことが、管理受託拡大の根本的な原動力です。空室対策や業務効率化は手段であり、その先にある「入居者体験の向上」こそが管理会社の存在価値を定義します。管理の付加価値を高め続ける会社が、これからの賃貸市場を牽引していくでしょう。


