アパート経営で高まる防犯の重要性。サービスの導入のポイントやトラブル対策を解説

アパート経営で高まる防犯の重要性。サービスの導入のポイントやトラブル対策を解説
アパート経営で高まる防犯の重要性。サービスの導入のポイントやトラブル対策を解説

入居者の防犯意識が高まる中、セキュリティ対策は賃貸経営の重要な差別化要素となっています。防犯カメラやスマートロックなどの設備投資は、入居率向上と賃料アップの両面で効果を発揮します。

費用対効果の高い防犯対策から最新のIoT活用まで、アパート経営者が知っておくべき防犯戦略を紹介します。

なぜアパート経営に「防犯」が重要なのか

賃貸経営において、防犯対策はもはや「あれば良い」ものではなく、入居者確保と物件価値維持に直結する重要な経営戦略となっています。近年の社会情勢や入居者意識の変化により、防犯性の高さは賃貸物件選びの決定的な要素になりつつあります。

空室・退去率・物件価値への影響

防犯対策が不十分な物件は、入居率の低下や賃料下落といった直接的な経営リスクを抱えることになります。アットホーム株式会社が2024年に実施した「住まい探しと防犯意識の実態調査」では、賃貸住宅に住む4割以上の人が長期不在時に自宅の防犯について不安を感じていることが明らかになりました。

特に女性入居者の場合、防犯意識はより顕著です。一般財団法人 住宅改良開発公社と千葉大学の調査「Z世代×賃貸住宅のトレンドに関する調査研究」では、女性の58.0%がセキュリティ面を物件選びで重視していることが示されています。防犯対策が不十分な物件は、この重要な入居者層を取り逃がすことになり、結果として空室率の上昇や家賃設定の引き下げを余儀なくされるのです。

入居者ニーズの変化とセキュリティ重視の傾向

入居者の防犯意識は年々高まっています。リクルートが2025年に公表した「2024年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」によると、「防災賃貸住宅」が4年連続で魅力を感じるコンセプト賃貸住宅の1位となっており、防犯・防災への関心の高さがうかがえます。また、物件探しの際に自分でハザードマップを調べた人が48.3%に上るという調査結果も、入居者の安全意識の高まりを裏付けています。

2024年下半期にアットホーム加盟店を対象に実施された「2024年下半期 問合せが増えた条件・設備~賃貸編~」では、宅配ボックスが問合せの増えた設備の2位にランクインしましたが、その理由として「防犯対策のため」というコメントが目立ちました。置き配による個人情報の露出を避けたいという防犯意識が、設備ニーズとして顕在化しているのです。

治安・立地・物件タイプ別にみるリスク要因

防犯リスクは立地や物件タイプによって大きく異なります。警察庁の「令和5年の犯罪」によれば、住宅への侵入窃盗の侵入方法として「無締り」が46.5%と最も多く、「ガラス破り」が30.5%で続きます。これは、ちょっとした外出時の施錠忘れや、窓の防犯性の低さが実際の被害につながっていることを示しています。

1階や2階の低層階は侵入リスクが高く、特に女性の単身入居者は3階以上を選ぶ傾向があります。また、周辺環境も重要な要素です。街灯が少なく人通りの少ない立地、共用部分への死角が多い構造、管理が行き届いていない外観などは、不審者に狙われやすい要因となります。駐車場やゴミ置き場といった共用スペースも、監視の目が届きにくいため防犯上の注意が必要です。

アパート経営で採るべき防犯設備・対策の全体像

効果的な防犯対策には、ハード面の設備導入とソフト面の運用管理の両面からのアプローチが必要です。入居者のセキュリティニーズに応えつつ、コストパフォーマンスの高い対策を選択することが、賃貸経営の成功につながります。

まず押さえておきたいハード設備

基本的な防犯設備として、オートロック、防犯カメラ、宅配ボックスの3点は優先的に検討すべきです。全国賃貸住宅新聞の「入居者に人気の設備ランキング2025」では、オートロック機能が単身者で3位、ファミリー世帯で2位にランクインしており、「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」設備として認識されています。

オートロック・モニター付きインターホン

オートロックは不審者の建物内への侵入を防ぐ第一の防壁となります。エントランスでの来訪者確認により、不特定多数の立ち入りを制限でき、入居者に安心感を提供します。TVモニター付きインターホンと組み合わせることで、対面せずに来訪者を確認できるため、特に女性や高齢者に好まれる設備です。

防犯カメラ

防犯カメラは犯罪の抑止力として極めて効果的です。エントランス、共用廊下、駐車場、駐輪場、ゴミ置き場など、死角になりやすい場所への設置が推奨されます。カメラの存在自体が「監視されている」という意識を与え、不正行為を抑制する効果があります。

窓・玄関・専有部における対策

共用部分だけでなく、専有部分の防犯性を高めることも重要です。窓への補助錠設置は、施錠忘れを防ぎ、こじ開けに対する抵抗力を高めます。防犯フィルムはガラス破りに対する有効な対策で、ガラスを割っても侵入に時間がかかるため、犯行を諦めさせる効果があります。

センサーライトは、人の動きを感知して自動点灯する照明で、夜間の不審者対策として効果的です。玄関や駐車場への設置により、侵入者に「見られている」という心理的プレッシャーを与えます。

管理・運用面での配慮

ハード設備の導入だけでなく、適切な運用管理も不可欠です。「防犯カメラ作動中」などのステッカー掲示は、設備の存在を明示し、犯罪抑止効果を高めます。入居時には防犯設備の使い方や注意事項を丁寧に説明し、入居者の防犯意識を高めることが大切です。

防犯カメラの映像データ管理については、プライバシー保護の観点から慎重な取り扱いが求められます。撮影範囲は共用部分に限定し、居室内やベランダが映り込まないよう配慮が必要です。映像の閲覧権限を限定し、警察からの要請などイレギュラーな場合を除き、むやみに公開しないルールを定めておくことが推奨されます。

IoT・スマートホームを活用した防犯戦略

室内の見守りカメラ

スマートデバイスの活用は、従来の防犯設備では実現できなかった高度なセキュリティ機能を提供し、入居者の利便性向上と物件の差別化を同時に実現します。防犯性能を高めるための主要なIoT機器とその活用方法を解説します。

スマートロック

スマートロックは、スマートフォンアプリや交通系ICカード、暗証番号などで施錠・解錠できるシステムで、防犯性能を飛躍的に高める中核的なIoT設備です。最大の防犯メリットは、物理的な鍵の紛失や複製リスクを軽減できる点にあります。従来の鍵では、紛失時に鍵穴ごと交換する必要がありましたが、スマートロックでは権限を削除するだけで対応できます。

外出先からスマートフォンで施錠状況を確認でき、もし施錠し忘れていても遠隔操作で施錠できるため、入居者の安心感が大きく高まります。

解錠履歴の記録機能も重要な防犯要素です。いつ誰が解錠したかが記録されるため、不審な解錠があった場合にすぐに気付くことができます。また、一時的なアクセス権限を発行できる機能により、内見時や修繕業者の立ち入り時にも物理的な鍵の受け渡しが不要になり、鍵の管理リスクを低減できます。

さらに、スマートロックの多くはピッキングに強い構造を持ち、こじ開けなどの不正な解錠を試みると警報音が鳴る機能を備えています。ハンズフリー機能を搭載したモデルでは、ドアに近づくだけで自動的に解錠されるため、両手に荷物を持っている際の利便性と防犯性を両立できます。

スマートセンサー

スマートセンサーは、窓やドアの開閉、人の動き、温度・湿度などを検知し、異常があればスマートフォンに通知するIoT機器で、防犯の「目」として機能します。開閉センサーを窓やドアに設置することで、不正な侵入をリアルタイムで検知できます。在宅時・外出時を問わず、センサーが作動すると即座に入居者や管理者のスマートフォンに通知が届くため、早期発見と迅速な対応が可能になります。

人感センサーは、共用部分や駐車場などでの不審な動きを察知します。特に深夜の時間帯に人の動きを検知した場合に通知する設定にしておけば、不審者の侵入や徘徊を早期に発見できます。照明と連動させることで、人が近づくと自動的に点灯するセンサーライトとしても機能し、侵入者に「見られている」という心理的プレッシャーを与える抑止効果があります。

スマートカメラ

スマートカメラは、従来の防犯カメラにネットワーク機能とAI分析機能を加えたもので、より能動的な防犯対策を可能にします。最大の特徴は、外出先からスマートフォンでリアルタイムの映像を確認できる点です。不審者の動きを察知した際、その場で状況を把握し、必要に応じて警察への通報や入居者への連絡といった迅速な対応が取れます。

AI機能を搭載したモデルでは、人物を検知すると自動的に録画を開始したり、通知を送ったりする機能があります。動物や車などとは区別して人物のみを検知するため、不要な通知が減り、本当に重要な異常を見逃しません。顔認証機能を持つカメラでは、登録された入居者と不審者を識別し、不審者が映った場合のみ警告を発することも可能です。

夜間撮影に強い赤外線機能や、逆光補正機能を持つモデルでは、24時間いつでも鮮明な映像を記録できます。パン・チルト・ズーム機能を備えたカメラなら、遠隔操作で撮影範囲を変更でき、広いエリアを1台のカメラでカバーすることも可能です。

スマートインターホン

スマートインターホンは、従来のTVモニター付きインターホンにネットワーク機能を追加したもので、外出先からでも来訪者に対応できます。防犯面での最大のメリットは、在宅・不在を悟られずに応対できる点です。空き巣犯は事前に下見を行い、インターホンを押して反応を確認することが多いため、外出中でも応答できることで「留守を狙われる」リスクを大幅に低減できます。

録画機能により、来訪者の顔や服装を記録できます。不審な訪問が繰り返される場合、映像を証拠として警察に提供することも可能です。モーション検知機能を備えたモデルでは、インターホンを押さずに玄関前に立っている人物も自動的に録画し、通知を送ります。これにより、不審者が玄関周辺を下見している様子も記録できます。

宅配業者への対応も便利になります。外出中でも応対し、宅配ボックスへの投函を依頼したり、再配達の日時を指定したりできます。特にIoT宅配ボックスと連携させることで、業者にQRコードを表示して宅配ボックスを解錠させ、荷物が投函されると通知が届くという一連の流れを遠隔で管理できます。

トラブル防止・万が一の対応策

防犯対策は予防だけでなく、万が一の事態への備えも含まれます。適切な対応体制を整えることで、入居者の安心感を高め、オーナーとしての責任を果たすことができます。

空き巣・不審者侵入の予防と早期発見

先述したとおり、侵入窃盗の約半数が「無締り」、つまり施錠忘れによるものです。入居者への防犯意識啓発が最も基本的かつ重要な対策となります。入居時の説明では、短時間の外出でも必ず施錠すること、窓の補助錠の活用、不審者を見かけた場合の連絡先などを明確に伝えます。

定期的な防犯チェックリストの配布や、季節の変わり目ごとの注意喚起メールなども効果的です。長期不在となる入居者からは事前連絡を受ける体制を整え、必要に応じて巡回頻度を上げるなどの対応を取ります。

早期発見のためには、防犯カメラの定期的なチェックと、近隣住民との良好な関係構築が有効です。管理人や清掃スタッフに不審者情報の報告を徹底させ、小さな異変も見逃さない体制を作ります。スマートセンサーを導入している場合は、異常検知の通知設定を適切に行い、迅速な対応ができるようにしておきます。

事件・事故発生時の映像活用・警察対応・オーナー責任

万が一、侵入窃盗などの事件が発生した場合、防犯カメラの映像は重要な証拠となります。警察から映像提供の要請があった際は速やかに対応しますが、その際も入居者のプライバシーに配慮し、事件に無関係な部分は編集して提供するなどの配慮が必要です。

オーナーには、物件の安全性を確保する管理責任があります。防犯設備の適切な維持管理を怠り、それが原因で入居者が被害に遭った場合、損害賠償責任を問われる可能性があります。防犯カメラの作動状況の定期確認、照明の点検、死角の解消など、継続的な安全管理が求められます。

事件発生時には、被害を受けた入居者への迅速なサポートと、他の入居者への適切な情報提供が重要です。過度に不安を煽ることなく、事実を伝え、追加の防犯対策を実施する姿勢を示すことで、入居者の信頼を維持できます。

管理会社・入居者とのコミュニケーション体制構築

効果的な防犯対策には、オーナー、管理会社、入居者の三者間での円滑なコミュニケーションが不可欠です。管理会社とは定期的に防犯状況を共有し、課題があれば迅速に対策を協議します。防犯カメラの映像チェック、設備の保守点検、不審者情報の共有など、具体的な役割分担を明確にしておきます。

入居者とのコミュニケーションでは、防犯に関する情報提供と意見交換の場を設けることが効果的です。掲示板やメール配信を活用した注意喚起、年に1~2回の防犯アンケートの実施などにより、入居者の防犯意識を高めつつ、現場の声を収集できます。

IoT設備を導入している場合は、使い方の説明動画や問い合わせ窓口を用意し、入居者が気軽に相談できる体制を整えます。特にスマートロックなどの新しい設備については、トラブル時の24時間サポート体制があると入居者の安心感が高まります。

防犯対策は一度導入して終わりではなく、継続的な改善が必要です。犯罪手口は進化し続けており、入居者のニーズも変化します。定期的に防犯体制を見直し、必要に応じて設備のアップグレードや運用方法の改善を行うことで、長期的に物件価値を維持し、入居者に選ばれ続けるアパート経営を実現できます。