玄関をキーレスにするデメリットとは?注意点と対策を解説


スマートロックやキーレス玄関の普及が加速しています。日本のスマートロック市場は2024年に4億5,113万米ドル規模に達し、2030年には6億5,888万米ドルに成長すると予測されています(出典:マーケットリサーチセンター)。利便性の高さから注目を集める一方で、導入前に知っておくべきデメリットや注意点も存在します。
今回は、キーレス玄関の種類や仕組みを理解した上で、主なデメリットとその対策方法を解説します。
キーレス玄関の種類と仕組み
キーレス玄関には複数の種類があり、それぞれ異なる仕組みで動作します。自分のライフスタイルや住環境に合ったタイプを選ぶことが、快適な利用の第一歩となります。まずは主要なタイプについて理解を深めましょう。
カードキー・リモコンキー・暗証番号錠・スマートロック
キーレス玄関の解錠方法は多岐にわたります。カードキーは、ICカードやNFCカードをかざすだけで解錠できるタイプで、交通系ICカードと同様の使い勝手の良さが特徴です。リモコンキーは、ボタン一つで遠隔操作できる車の電子キーのようなシステムです。
暗証番号錠は、テンキーで数字を入力して解錠するタイプで、物理的な鍵を持つ必要がありません。スマートロックは、スマートフォンアプリを使って施解錠を制御する最先端のシステムで、Bluetooth、Wi-Fi、NFCなどの通信技術を活用します。
最新のスマートロックでは、指紋認証や顔認証といった生体認証機能を搭載したモデルも登場しています。
電池式/電源式/機械構造式
玄関をキーレスにする際のスマートロックの電源供給方法も、製品選びの重要なポイントです。電池式は最も一般的なタイプで、配線工事が不要なため賃貸物件にも設置しやすい利点があります。電池寿命は使用頻度や機種によって異なりますが、一般的に6カ月から1年程度です。
電源式は、外部電源から電力を供給するタイプで、電池交換の手間がない反面、設置工事が必要となります。主にオフィスビルやマンションの共用部など、頻繁に使用される場所で採用されています。

機械構造式は、電気を使わず機械的な仕組みで動作するタイプです。テンキー式の暗証番号錠の中には、ボタンを押す圧力で内部機構を動かすメカニカルタイプがあり、電池切れの心配が一切ありません。停電時や災害時にも使用できる信頼性の高さが特徴です。
玄関をキーレス化する際の主なデメリット
キーレス玄関には多くのメリットがある一方で、導入前に理解しておくべきデメリットも存在します。主なデメリットを紹介します。
電池切れ・停電時に操作できなくなるリスク
電池式スマートロックの最大の懸念は、電池切れによる締め出しリスクです。スマートロック本体の電池が切れると、外部からの施解錠操作ができなくなります。室内からは手動で操作可能ですが、外出先から帰宅した際に開けられなくなる事態は避けたいものです。
多くの製品では、電池残量が少なくなるとスマートフォンに通知が届いたり、機器本体が警告音を発する機能が搭載されています。しかし、通知を見逃したり、長期不在中に電池が切れてしまうケースもあります。また、スマートフォン自体の電池が切れた場合も、アプリを使った解錠ができなくなります。
なお、電池式のスマートロックは停電の影響を受けないため、停電時でも通常通り使用できます。一方、電源式の製品は停電時に動作しなくなる可能性があるため、非常用電源や物理鍵での解錠手段を確保しておく必要があります。
閉め出し・鍵を忘れるリスク
オートロック機能を搭載したキーレス玄関では、スマートフォンや解錠デバイスを室内に置いたまま外出してしまうと、締め出されるリスクがあります。従来の物理鍵でも同様の問題は起こり得ますが、スマートフォンは日常的に持ち歩くものであるため、「鍵を持つ」という意識が薄れがちです。
特に、ゴミ出しや郵便物の確認など、ほんの数分の外出時に「すぐ戻るから」とスマートフォンを持たずに出てしまい、ドアが自動施錠されて戻れなくなるケースは頻繁に起きています。また、家族の誰かが室内にいると思い込んで外出したものの、実は全員外出していたという状況も起こり得ます。
暗証番号漏洩・不正解除の可能性
暗証番号式のキーレス玄関では、番号が第三者に知られてしまうリスクがあります。入力中の様子を背後から覗き見られたり、テンキーの押された箇所の指紋や汚れから推測されたりする可能性があります。
また、誕生日や電話番号など推測しやすい番号を設定してしまうと、不正侵入のリスクが高まります。家族や友人に一時的に暗証番号を教えた後、番号を変更し忘れることで、意図しない人物がアクセス可能な状態が続いてしまうケースもあります。
カードキーやリモコンキーについても、紛失や盗難によって不正使用されるリスクがあります。物理的な鍵と同様、管理には十分な注意が必要です。
故障・誤作動・認証エラーのリスク
キーレス玄関は電子機器であるため、故障や誤作動のリスクがあります。Bluetooth通信を使用するタイプでは、スマートフォンとの接続が不安定になり、解錠に時間がかかったり、反応しなかったりすることがあります。
指紋認証式では、指の怪我や乾燥、汚れによって認証精度が低下することがあります。子どもの成長に伴って指紋が変化し、認証されにくくなるケースも報告されています。顔認証式では、メガネの有無や化粧、マスクの着用などによって認証精度に影響が出る場合があります。
また、極端な気温や湿度の変化、結露などの環境要因によって、機器が正常に動作しなくなることもあります。特に屋外に設置する場合は、防水・防塵性能が重要になります。
登録・再設定や合鍵発行の手間
キーレスの玄関を作るには、ある程度の技術的な知識が必要です。スマートフォンアプリのインストール、デバイスの登録、各種設定などを行う必要があり、デジタル機器に不慣れな方には負担となる場合があります。
家族が増えたり、ペットシッターや訪問介護サービスなど一時的なアクセス権限を付与する必要が生じた際にも、それぞれのデバイスを登録する手間がかかります。スマートフォンを機種変更した場合は、再設定が必要になるケースもあります。
また、製品によっては登録可能なデバイス数に上限があり、大家族や複数の関係者がアクセスする環境では制限となる場合があります。
コスト面・メンテナンス負担
キーレス玄関の導入には、初期費用とランニングコストの両方がかかります。スマートロック本体の購入費用は、機種によって1万円から10万円程度と幅があります。取り付け工事が必要な場合は、さらに工事費用が加算されます。
ランニングコストとしては、電池交換費用、クラウドサービスの月額利用料(製品による)、定期的なメンテナンス費用などが発生します。電池式の場合、年に1〜2回の電池交換が必要で、製品によっては専用の電池を使用するため、コストが割高になることもあります。
また、製品のサポート期間が終了した場合、セキュリティアップデートが受けられなくなり、使用継続が困難になる可能性があります。実際に、2015年に発売された某メーカーのスマートロックが、2023年5月にサービス終了が発表され、利用継続を控えるよう案内されたことがありました。
キー紛失・落下・盗難のリスク/h3>
カードキーやリモコンキーは、物理的なデバイスであるため、紛失や盗難のリスクがあります。スマートフォンと異なり、これらのデバイスは専用の機能しか持たないため、紛失に気づきにくい場合もあります。
特にカードキーは薄型で軽量なため、バッグやポケットから落ちやすく、紛失しやすいという特性があります。磁気不良によって読み取りができなくなるケースもあります。リモコンキーについては、電池切れや水濡れによる故障のリスクもあります。
紛失した場合、デバイスを無効化する手続きが必要ですが、悪意ある第三者に拾われた場合、その間に不正侵入される可能性があります。デバイスの再発行には費用と時間がかかることも負担となります。
誤操作・誤作動による勝手な開錠・セキュリティ不安
ハンズフリー解錠機能を搭載したスマートロックでは、意図しないタイミングで解錠されてしまう誤作動のリスクがあります。GPS位置情報を利用するタイプでは、マンションの場合に正確な階数を判定できず、室内にいるのに解錠されてしまったり、逆に玄関前にいるのに解錠されなかったりすることがあります。
Bluetooth近接検知を使用するタイプでは、玄関の外で立ち話をしている際や、隣の部屋の前を通過する際に誤って解錠されることもあります。オートロック機能についても、ドアが完全に閉まる前に施錠されてしまう半ドア状態や、逆に閉まっているのに施錠されないといった誤作動の可能性があります。
デメリットの対策と注意点
キーレス玄関のデメリットは、適切な対策を講じることで大幅に軽減できます。事前の準備と日常的な管理により、安全で快適な利用環境を構築しましょう。
非常用鍵・バックアップ手段の併用
締め出しリスクを回避する最も確実な方法は、複数の解錠手段を用意することです。多くのスマートロックは、既存の鍵穴をそのまま残せる設計になっており、物理鍵を併用できます。物理鍵を常に携帯するか、信頼できる家族や友人に預けておくことで、万が一の際も安心です。
また、暗証番号や指紋認証など、スマートフォンに依存しない解錠方法を設定できる製品を選ぶことも効果的です。複数の認証方法を組み合わせることで、一つの方法が使えなくなっても別の方法でアクセスできる体制を整えられます。
予備の解錠手段として、キーボックスを活用する方法もあります。ドアノブや物置などに暗証番号式のキーボックスを設置し、その中に物理鍵を保管しておけば、緊急時の対応が可能になります。ただし、キーボックスの暗証番号は忘れにくく、かつ推測されにくい番号を設定することが重要です。
電池切れアラートや予備電源対策
電池切れによるトラブルを防ぐには、電池残量の定期的な確認が不可欠です。多くのスマートロックには、電池残量が少なくなると通知する機能が搭載されています。この通知を見逃さないよう、スマートフォンの通知設定を確認しておきましょう。
予備の電池を常備しておくことも基本的な対策です。特に、製品専用の特殊な電池を使用する場合は、入手に時間がかかることがあるため、予備を用意しておくと安心です。また、モバイルバッテリーを携帯し、スマートフォンの電池切れに備えることも有効です。
最新の製品では、トリプル給電システムなど、電池切れを回避する設計が採用されているものもあります。製品選びの際には、このような機能の有無も考慮すると良いでしょう。
暗証番号の定期更新・複雑化・管理方法
暗証番号のセキュリティを高めるには、定期的な番号変更が効果的です。少なくとも半年に一度、できれば3カ月に一度の頻度で番号を更新することをお勧めします。特に、一時的に番号を他人に教えた後は、速やかに変更することが重要です。
暗証番号は、誕生日や電話番号など推測しやすい数字の組み合わせを避け、ランダムな数字を設定しましょう。可能であれば、4桁ではなく6桁以上の長い番号を設定すると、セキュリティレベルが向上します。
覗き見防止対策としては、入力時に手で覆うようにしたり、覗き見防止仕様のテンキーを採用した製品を選んだりすることが有効です。また、テンキーを定期的に清掃し、特定のボタンだけが汚れている状態を避けることも重要です。
暗証番号の管理には、パスワード管理アプリの利用も検討できます。ただし、アプリ自体のセキュリティ設定を適切に行い、他人がアクセスできないようにすることが前提となります。
定期メンテナンスと故障予防
キーレス玄関を長期間安定して使用するには、定期的なメンテナンスが欠かせません。機器本体の清掃、ネジの緩みチェック、動作確認などを月に一度程度行うことをお勧めします。
特に、粘着テープで取り付けるタイプの製品は、テープの粘着力が経年劣化します。定期的に取り付け状態を確認し、必要に応じてテープの交換や増し締めを行いましょう。落下による故障や破損を防ぐため、しっかりと固定されているか確認することが重要です。
ソフトウェアのアップデートも重要なメンテナンス項目です。セキュリティパッチや機能改善が含まれるアップデートは、配信され次第すぐに適用しましょう。アプリの自動更新設定を有効にしておくことで、常に最新の状態を保てます。
通信環境の最適化も故障予防につながります。Wi-FiやBluetoothの接続が不安定な場合は、ルーターの位置を調整したり、中継器を導入したりすることで改善できます。
それでも玄関のキーレス化が有用な理由

様々なデメリットや注意点がある一方で、キーレス玄関には従来の物理鍵では得られない多くのメリットがあります。適切な製品選択と運用により、これらのメリットがデメリットを大きく上回る価値を提供します。
利便性の向上
キーレス玄関の最大のメリットは、圧倒的な利便性です。重い荷物を持っている時、子どもを抱いている時、雨の日など、従来は鍵の出し入れに苦労していた場面でも、スマートフォンをかざすだけ、あるいはハンズフリーで自動解錠できる快適さは、一度体験すると手放せなくなります。
家族それぞれがスマートフォンで解錠できるため、合鍵を作る必要がありません。一時的な来客やペットシッター、訪問介護サービスなどには、期限付きのデジタルキーを発行することで、物理的な鍵の受け渡しが不要になります。鍵の返却忘れや紛失の心配もなくなります。
外出先から鍵の施錠状況を確認できることも大きな利点です。「鍵を閉めたかな?」という不安から解放され、実際に閉め忘れていた場合も遠隔操作で施錠できます。子どもの帰宅時には通知を受け取れる製品もあり、安心して仕事に集中できます。
施錠忘れ防止
オートロック機能により、鍵の閉め忘れを完全に防止できます。日本の住宅侵入窃盗の約4割は無施錠の玄関からの侵入というデータもあり、オートロックによる防犯効果は非常に大きいと言えます。
忙しい朝の出勤時、急いで外出する際、子どもの送り迎えなど、つい鍵を閉め忘れてしまいがちな場面でも、自動的に施錠されるため安心です。ドアが閉まってから施錠されるまでの時間を調整できる製品では、ゴミ出しなど短時間の外出時には施錠を遅らせる設定も可能です。
一時的にオートロック機能を停止できる製品もあり、荷物の搬入時や庭の手入れなど、頻繁に出入りする作業の際にも柔軟に対応できます。作業終了後は再度オートロックを有効にすることで、セキュリティを確保できます。
防犯性能の強化
キーレス玄関は、従来の物理鍵と比較して防犯性能が高いという特徴があります。鍵穴がないタイプの製品では、ピッキングによる不正侵入のリスクが完全に排除されます。暗号化された通信を使用する製品では、電子的な不正アクセスも困難です。
入退室の履歴が記録される機能により、いつ誰が解錠したかを後から確認できます。不審な解錠があった場合、すぐに気づくことができ、被害の拡大を防げます。リアルタイム通知機能があれば、不在時の不正侵入を即座に検知できます。
鍵の複製リスクも大幅に軽減されます。物理鍵は合鍵屋で容易に複製できますが、デジタルキーは権限を持つ人しか発行できません。解錠権限の付与や取り消しもアプリから簡単に行えるため、権限管理が容易です。
世界のスマートロック市場は2024年に29億1,000万米ドルと評価され、2025年から2032年の予測期間中に21.2%のCAGR(年平均成長率)で成長すると予測されています(出典:FORTUNE BUSINESS INSIGHT)。この急成長は、セキュリティと利便性を両立できるキーレス玄関への世界的な需要の高まりを示しています。




