IoT機器のデメリットと解決策を解説。安全に使う注意点と製品選びのポイント

IoTのデメリット
IoTのデメリット

インターネットを介して様々な機器が繫がり連動することで、これまでとは異なった制御や活用が可能となったIoT機器。一見すると便利な側面ばかりが目立ちますが、当然ながら機器を利用する上でデメリットとなる部分も存在します。

具体的なIoT機器のデメリットや解決策について解説します。

IoT機器を利用する上でのデメリットやリスクとは

IoT機器がもっているデメリットやリスクについて紹介します。

IoT機器の利用に関連するデメリットやリスク

IoT機器の利用に関連するデメリットやリスクとして次のようなことがあげられます。

IoTデバイスの接続不安定

多くのIoT機器が同時に使用されることで、電波干渉や通信遅延が発生する可能性があります。

セキュリティリスク

IoT機器はインターネットに接続されているため、外部からの攻撃や情報漏洩のリスクがあります。

プライバシー侵害のリスク

IoT機器の普及により、個人の生活に関わるデータが収集されることで、プライバシーの侵害が懸念されます。

データの安全性

データの改ざんや個人情報の流出などのおそれがあります。

操作の複雑さ

ディスプレイに表示される文字が小さかったり複雑な操作が必要な機器だったりすると、IoT機器ははじめからとりつきにくいものに感じられてしまいます。

IoT機器を利用するにはコスト・費用もかかる

IoT機器を利用する際には以下のような費用・ランニングコストがかかります。

IoT機器を導入するために必要なことだとはいえ、デメリットともいえるでしょう。

維持費用

IoT機器は、センサーや通信モジュールなどの維持に定期的な費用がかかります。これには、デバイスの電力消費や通信料金が含まれます。

更新と交換のコスト

技術の進歩に伴い、IoT機器や関連ソフトウェアの更新が必要になることがあります。古くなった機器の交換やソフトウェアのアップデートには追加のコストが発生します。

システム統合の費用

既存のシステムとIoT機器を統合するためには、追加の設計や開発が必要になることがあり、これにはコストがかかります。

これらのコストは、IoT機器の導入と運用を検討する際に重要な考慮事項となります。

効果的な計画とコスト管理が、IoT機器利用お重要なポイントかもしれません。

国内企業におけるIoTデバイスの活用とサイバーセキュリティ対策の実態

国内企業におけるIoデバイスの活用とサイバーセキュリティ対策の実態について、サイバーセキュリティ企業のパロアルトネットワークス社から発表された「IoT/OTサイバーセキュリティジャパンサーベイ 2020年版」の調査結果を引用して紹介します。

国内企業のIoT/OTデバイスの活用・セキュリティ対策に関する実態調査:5割がサイバー攻撃被害を経験

「業務効率化」や「既存ビジネス強化」を目的に6割がIoTデバイスを活用し、8割が自社のIoTデバイスとIoT投資の増加を予測

同調査によると、国内企業の6割強の企業がすでにIoTデバイスを社内で活用しているそうでうs(図1)。

活用の目的としてあげている理由は次のようになっています。

「業務効率化・最適化」(63.7%)

「既存ビジネスの強化」(48.9%)

「コスト削減」(37.0%)

このことから、実際に業務効率化や競争優位性の確保のためにIoTの採用が定着し始めていることがわかります。

IoTデバイスを活用している企業の割合 「IoT/OTサイバーセキュリティジャパンサーベイ 2020年版」より

また、約82%の企業が今後社内のIoTデバイスの数が増加し、78%が自社のIoT分野への投資が増加すると予測しており、国内企業でのIoTデバイスの活用、ビジネスのIoT化が加速していくと予想されています。    

5割がIoT/OTデバイスに対するサイバー攻撃被害を経験

IoT/OTデバイスのビジネスでの重要度が高まる一方で、国内企業の約48%が社内で活用するIoT/OTデバイスに対するサイバー攻撃の被害を経験しており(図2)、被害の内容は以下のようになっています。

  1. マルウェア感染(27.0%)
  2. 不正操作・誤操作(23.3%)
  3. システム停止(21.1%)
  4. ランサムウェア被害(20.0%)
  5. アカウント乗っ取り(15.2%)
IoT/OTデバイスに対するサイバー攻撃被害発生状況
IoT/OTデバイスに対するサイバー攻撃被害発生状況「IoT/OTサイバーセキュリティジャパンサーベイ 2020年版」より

このように、企業が利用するIoT機器の活用においてもサイバー攻撃による被害が発生していることを鑑みると、一般家庭でのIoT機器利用においても相応の対策や予防策を検討する必要性があるようです。

IoT機器のセキュリティについてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:IoT機器のセキュリティに問題はある?リスクや機器選びのポイントを解説

IoTのリスク・デメリットの具体的な解決策

IoT機器導入についてのリスクやデメリットについて、先に紹介しましたが、リスクやデメリットに対してどのような解決策があるのでしょうか。

一つのリスクやデメリットへの対応策が、同時に他のリスクやデメリットの解決策にもなることに注目しましょう。

IoTデバイスの接続不安定

IoTデバイスの接続不安定に対する具体的な解決策として以下のような方法があります。

メッシュネットワーク

IoTのリスクやデメリットに対する解決策としてのメッシュネットワーク(Wi-Fi ルーターなどの複数の接続デバイスからなるグループが 1つのネットワークとして動作する仕組み)は、その柔軟性と耐障害性により注目されています。

メッシュネットワークは、ノード(パソコンやルーター、プリンターなどの一つ一つのデバイス)が互いに直接通信を行い、複数のパスを通じてデータをやり取りするため、一部のノードや接続がダウンしてもネットワーク全体が機能し続けることができます。

具体的には、IoTデバイスの増加による通信負荷の問題を解決するために、エッジコンピューティングを利用してデータ処理を分散させることができます。

これにより、中央のサーバーへの負荷が減少し、通信の遅延を防ぐことが可能になります。

また、セキュリティの観点からは、メッシュネットワークは暗号化技術を組み合わせることで、データの安全性を高めることができます。

ネットワーク内の各ノードが独立してセキュリティ機能を持つため、一箇所が侵害されても他のノードへの影響を最小限に抑えることができるのです。

電力供給の問題に関しては、メッシュネットワークは省電力のIoT端末と組み合わせることで、電力消費を抑えることができます。

さらに、ソーラーパネルなどの再生可能エネルギー源を活用することで、持続可能なネットワークを構築することも可能です。

これらの特徴により、メッシュネットワークはIoTのリスクやデメリットを軽減する有効な手段となっています。

中継器の利用

IoTデバイスのリスクやデメリットに対する中継器の利用は、ネットワークのカバレッジを拡大し、信号の強度を向上させることで、通信の安定性を高める効果があります。具体的には、以下のような解決策が考えられます。

通信範囲の拡大

中継器を使用することで、IoTデバイス間の距離が離れていても、信号を中継することで広範囲にわたるネットワークを構築できます。これにより、デバイスが直接接続できない場合でも通信が可能になります。

信号強度の向上

中継器は、信号を受信して増幅し、再送信することで、信号の強度を向上させます。これにより、壁や障害物による信号の減衰を補い、より安定した通信を実現します。

ネットワークの冗長性

複数の中継器を設置することで、一つの中継器が故障しても他の中継器が通信を継続できるため、ネットワークの冗長性が向上します。

エネルギーハーベスティング

電力供給の問題に対しては、中継器にエネルギーハーベスティング技術を組み込むことで、太陽光や振動などから電力を得て自己給電することが可能です。

セキュリティの強化

中継器にセキュリティ機能を備えることで、データの暗号化やアクセス制御を行い、ネットワークのセキュリティを強化することができます。

これらの措置により、IoTデバイスのリスクやデメリットを軽減し、より信頼性の高いネットワークを構築することができます。

Wi-Fi 6対応製品の利用

IoTデバイスのリスクやデメリットに対してWi-Fi 6対応製品を利用することで以下のような効果があります。

高密度環境での通信改善Wi-Fi 6は、多数のデバイスが同時に接続される環境でも、データ転送の効率を向上させる技術を採用しています。これにより、通信の遅延や混雑を減少させることができます。
セキュリティの強化Wi-Fi 6は最新のセキュリティプロトコルであるWPA3をサポートしており、データの暗号化とユーザー認証を強化しています。これにより、IoTデバイス間の通信がより安全になります。
省エネルギーWi-Fi 6は、デバイスのバッテリー寿命を延ばすための省エネルギー機能を備えています。これにより、IoTデバイスの電力消費を抑えることが可能です。
高速データ転送Wi-Fi 6は、以前のWi-Fi規格に比べてデータ転送速度が大幅に向上しています。これにより、大量のデータを扱うIoTアプリケーションのパフォーマンスが改善されます。

これらの特徴により、Wi-Fi 6対応製品はIoTのリスクやデメリットを軽減し、より信頼性の高いネットワーク環境を実現するための有効な手段となっています。

IoTデバイスのセキュリティリスク

IoTデバイスのセキュリティリスクに対する具体的な解決策として以下のような対策があります。

解決策解説
ソフトウェアへのセキュリティ対策の組み込みIoTデバイスのファームウェアやソフトウェアにセキュリティ機能を組み込むことで、外部からの攻撃に対する耐性を高めます。
機器の基盤へのセキュリティ対策モジュールの組み込みハードウェアレベルでセキュリティ対策を施すことにより、ソフトウェアの脆弱性を突かれるリスクを減らします。
サイバー攻撃に対する予測精度の向上と予測による未然防御AIなどを活用してサイバー攻撃を予測し、事前に対策を講じることが重要です。
デバイスのセキュリティ更新を常に確認する定期的にファームウェアやソフトウェアを更新し、最新のセキュリティパッチを適用することが重要です。
強固なパスワードと認証システムの利用デフォルトのパスワードは変更し、二要素認証などの追加的なセキュリティ層を設定することが推奨されます。

これらの対策を適切に実施することで、IoTデバイスのセキュリティリスクを大幅に軽減することができます。

IoTデバイスにおけるプライバシー侵害のリスク

IoTデバイスにおけるプライバシー侵害のリスクに対する具体的な解決策として以下のようなアプローチがあります。

プライバシー保護には、利用者側の対応だけでなく運営する企業側の対策も大事なので、そのような対策を十分にとっているかを確認しましょう。

解決策解説
データの最小化デバイスが収集するデータの量を最小限に抑えることで、プライバシー侵害のリスクを減らすことができます。必要なデータのみを収集し、不要な情報は収集しないように設計します。
アクセス制御データへのアクセスを厳格に管理し、必要な人にのみアクセスを許可することで、プライバシーを保護します。これには、強力な認証メカニズムの使用が含まれます。
データの匿名化収集したデータから個人を特定できる情報を削除または変更することで、プライバシーを保護します。これにより、データが漏洩しても個人が特定されるリスクを減らすことができます。
透明性の向上ユーザーに対してどのようなデータが収集され、どのように使用されるかを明確に伝えることで、信頼を築きます。プライバシーポリシーや利用規約を明確にし、ユーザーが理解しやすい形で提供することが重要です。
セキュリティの強化データの暗号化やセキュリティパッチの定期的な適用など、データを保護するためのセキュリティ対策を強化します。
法規制の遵守GDPRなどのデータ保護法規を遵守し、プライバシー侵害のリスクを管理します。法的要件に沿ったデータ管理を行うことが求められます。
ユーザーのコントロール性の向上ユーザーが自分のデータに対するコントロールを持てるようにすることも重要です。データの開示請求や利用停止の手続きを簡単に行えるようにすることで、ユーザーのプライバシーを尊重します。

これらの解決策を適切に実施することで、IoTデバイスのプライバシー侵害のリスクを軽減し、ユーザーの信頼を獲得することができます。

IoTデバイスにおけるデータの安全性のリスク

IoTデバイスにおけるデータの安全性のリスクに対処するための具体的な解決策として次のような方法が考えられます。

解決策解説
セキュリティが組み込まれたデバイスの選択信頼できるメーカーからセキュリティ機能を優先してIoTデバイスを購入します。
ファームウェアとソフトウェアの定期的な更新既知の脆弱性から保護するために、デバイスを常に最新の状態に保ちます。
強固な認証の導入各機器に強力でユニークなパスワードを使用し、利用可能な場合は多要素認証を有効にします。
セキュリティ対策の組み込みIoT機器組込みソフトウェアへのセキュリティ対策の組み込みや、機器の基盤へのセキュリティ対策モジュールの組み込みを行います。
サイバー攻撃に対する予測精度の向上AIを活用してサイバー攻撃を予測し、事前に対策を講じます。
IoTセキュリティガイドラインの遵守経済産業省/総務省の「IoTセキュリティガイドライン」に従い、セキュリティ対策を行います。

これらの解決策を適切に実施することで、IoTデバイスのデータの安全性を高め、リスクを軽減することができます。

IoTデバイスの操作の複雑さに関するリスク

IoTデバイスの操作の複雑さに関するリスクを軽減するための具体的な解決策は以下の通りです。導入を検討するときには、以下のような対策がとられているのかを確認しましょう。

確認事項ポイント
ユーザーインターフェースの改善シンプルで直感的なユーザーインターフェースを設計することで、操作の複雑さを減らし、ユーザーがデバイスを容易に操作できるようにします。
デバイス管理プラットフォームの利用専用のデバイス管理プラットフォームを使用することで、デバイスの登録、監視、遠隔制御、データの収集と分析、セキュリティ管理などを一元化し、管理の複雑さを解消します。
自動化とリモート管理遠隔監視とリモート制御を組み合わせることで、IoTデバイスの管理を効率化し、現地に行かずともデバイスの管理やメンテナンス作業を効率的に行うことができます。
教育とトレーニングIoTデバイスの操作に関する教育とトレーニングを提供することで、ユーザーがデバイスの使用方法を理解し、操作の複雑さを感じにくくなります。
カスタマイズ可能な設定ユーザーが自分のニーズに合わせてデバイスの設定をカスタマイズできるようにすることで、操作の複雑さを個々のユーザーに適応させることができます。

これらの解決策を適切に実施することで、IoTデバイスの操作の複雑さに関するリスクを軽減し、ユーザーの利便性を高めることができます。

IoTデバイスのランニングコスト

IoTデバイスのランニングコストを管理しリスクを軽減するためには、電力会社の見直しやスマートプラグの利用が有効です。

電力会社の見直しでは、より低い料金や再生可能エネルギーを提供する会社への切り替えを検討することができます。

また、スマートプラグを使用すると、デバイスの消費電力をリアルタイムで監視し、不要な電力消費を削減することが可能になります。

これにより、コスト削減だけでなく、エネルギー使用の最適化にも寄与します。

IoTデバイスのランニングコストに関するリスクを軽減するための具体的なその他の解決策は以下の通りです。

解決策解説
エッジコンピューティングの採用データ処理をデバイス側で行うことで、通信負荷を減らし、クラウドへのデータ送信量を削減します。これにより、通信コストを抑えることができます。
省電力のIoT端末の採用電力消費を抑える設計のIoTデバイスを選択することで、電力コストを削減します。特に、バッテリー駆動のデバイスでは、省電力設計が重要です。
暗号化技術とNIDD・LPWAの導入データの暗号化と低電力広域ネットワーク技術の利用により、セキュリティを確保しつつ、通信コストを抑えることができます。

これらの解決策を適切に実施することで、IoTデバイスのランニングコストに関するリスクを軽減し、長期的な運用を安定させることが可能です。

海外でも進むIoT機器の法規制。安全な機器を選ぶポイントは?

IoTを活用した快適な住まい

IoT機器のリスクとして、データ保護やプライバシー保護などのセキュリティはとても重要なことです。ここでは、昨年EUで成立した「欧州データ法」を紹介し、安全なIoT機器を選ぶポイントについて解説します。

「欧州データ法」とは

「欧州データ法」は、IoTデバイスを含むデータ生成製品に関する新しい規制で、2023年11月に欧州議会で成立しました。この法律は、データへの公平なアクセスと利用を促進し、IoTビジネスモデルに大きな影響を与えることが予想されます。

主なポイントは以下の通りです。

データアクセスと共有

IoT製品の利用者は、自身の利用によって生成されたデータへのアクセス権を持ち、必要に応じて第三者とデータを共有できるようになります。

データポータビリティ

利用者は、サービスの切り替えを容易に行えるように、データの移行をスムーズに行うことができます。

非常時のデータ提供

一定の非常事態や緊急事態において、公共機関へのデータ提供が義務付けられることがあります。

契約前の情報提供義務

製造者や関連サービス提供者は、IoT製品を販売またはリースする際に、必要な情報を明確に伝えることが求められます。

この法律は、データの自由化と市場活性化を目指し、EU内でのデータ流通を促進することを目的としています。

IoT製品や関連サービスを提供する事業者にとっては、製品・サービスでの生成データの取り扱いに関して根本的な見直しが必要となる可能性があります。

参考:

欧州データ法:データへの公平なアクセスと利用に関する規則ーIoTビジスモデルに対する衝撃 | PwC Japanグループ

IoTデバイスを選ぶ際に安全な機器を選ぶためのポイント

IoTデバイスを選ぶ際に安全な機器を選ぶためのポイントは以下の通りです。

  • 信頼できるメーカーからの購入

安全性に関する実績があるメーカーから購入することで、信頼性の高いデバイスを選ぶことができます。

  • セキュリティ機能の確認

デバイスが持つセキュリティ機能を確認し、必要なセキュリティ対策が施されているかをチェックします。

  • 更新ポリシーの確認

メーカーが定期的なファームウェアの更新を提供しているかどうかを確認し、セキュリティパッチが適時に適用されることを確かめます。

  • 評価とレビューの参照

他のユーザーの評価やレビューを参照し、実際の使用感や問題点を把握します。

  • 規格と認証の確認

IoTデバイスが特定の安全規格や認証を取得しているかを確認します。たとえば、CEマークやUL認証などがあります。

  • プライバシーポリシーの確認

デバイスが収集するデータの種類とその使用方法について、メーカーのプライバシーポリシーを確認します。

  • サポート体制の確認

購入後のサポート体制が整っているかどうかを確認し、問題が発生した際に迅速に対応を受けられるかを確かめます。

これらのポイントを踏まえてIoTデバイスを選ぶことで、リスクを軽減し、安全な運用を心がけましょう。