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「電子契約」がもたらす不動産業界の今と昔。何が変わる?メリットや影響について【不動産×テクノロジー】

ビジネスをする上で欠かせない契約書。企業対企業、または企業対個人などの違いはあっても、何らかの契約を結ぶ場合は契約書を取り交わすことで後のトラブルを未然に防ぐことができます
これまで契約書といえば、契約内容が記載された書面に署名や捺印をするのが一般的でした。しかし、最近では「電子契約」という新たな方法も注目されています。
今回は、契約書のやり取りが煩雑になりがちな不動産業界において電子契約を導入することでどのようなメリットが得られるのか、今後の不動産業界はどう変化していくのかについて詳しくご紹介していきます。

電子契約とは

電子契約とは、従来のように書面で契約書をやり取りするのではなく、電子データをインターネットを経由してやり取りを行う契約の方法です。

長らく日本では紙と印鑑による契約締結が当たり前とされてきましたが、電子データにタイムスタンプや電子署名を付与することを条件に、書面以外の方法で契約を結ぶことも法律で認められるようになりました。

電子データは容易に改ざんされてしまうリスクがあったため、電子契約は認められていなかったのですが、セキュリティに関する技術が発展し、それらのリスクが大幅に低下したことによって法律が改正された背景もあります。

不動産業界における電子契約の役割

不動産業界において契約書は切っても切り離せないものです。土地や建物の売買、入居者との賃貸契約と更新契約、重要事項説明など、さまざまな書類のやり取りが発生します。

従来はこれらの契約締結を書面でやり取りしていましたが、現在ではほとんどの内容をペーパーレスで実現でき、書類を印刷したり郵送したりといった煩わしい作業が不要になってきています。

電子契約のメリットとデメリット

不動産業界に電子契約を導入することによって、どのようなメリットが得られるのでしょうか。デメリットとして考えられることも併せて詳しく解説していきましょう。

電子契約のメリット

  • 入居手続きの簡素化

印鑑や書類が不要な電子契約であれば、アパートやマンションを借りるために内見してもらった後、その場で手続きをとることも可能になります。わざわざ店舗に戻って書類を作成し捺印などをお願いする必要もないため、入居手続きは大幅に簡素化されることでしょう。

  • コストの削減

書面でのやり取りが不要になるということは、紙やインクのトナーなどの経費も大幅に削減されることになります。また、書類を発送するための送料も削減されるほか、正式に契約が締結されるまでのリードタイムも大幅に短縮されるメリットもあります。

また、契約書の内容によっては収入印紙代がかかるものもありますが、電子契約であれば印紙も不要になります。

  • 働き方改革の実現

煩雑な事務手続きや書類管理の業務が多い不動産業界。電子契約によって契約そのものが簡素化すると、業務効率は大幅に向上します。社会問題化している長時間労働を是正するために、電子契約の導入によって大きなメリットが得られることでしょう。

電子契約のデメリット

  • 電子契約が認められていないものもある

不動産取引のなかでも、定期借家契約などは書類による契約のみが認められているため、電子契約には対応できません。契約の種類に応じて電子契約ができるものとできないものを判断する必要があるため、導入の際には注意が必要です。

  • 取引先企業によっては電子契約に対応してもらえない

契約という行為は自分だけではなく相手があって初めて成立するものです。自社では積極的に電子契約を進めていきたいと思っていても、なかには書類での契約にこだわるケースも多いものです。これは個人に限らず、法人として電子契約に対応していない場合も少なくありません。

  • サイバー攻撃による情報漏えい

データの管理が杜撰な状況だと、サイバー攻撃によってサーバー内のデータが外部に流出してしまう危険性もあります。最悪の場合、取引相手に対して何らかの損害を与えてしまう可能性もあるため、電子契約を検討するうえではサイバー攻撃のリスクを未然に防ぐ厳重な対策が必要となります。

電子契約で不動産業界はどう変わるのか?

長時間労働が社会問題化するなか、あらゆる業界において働き方改革が叫ばれています。不動産業界において働き方改革を実現するためには、これまで続けられてきたビジネスの仕組みやフローを根本から変えていく必要があります。電子契約によって古い慣習が破られ、より働きやすい環境が生まれるはずです。

また、煩雑な業務や契約にかかる時間が短縮されることによって、ユーザー側にとっても利便性の高いサービスになることは間違いありません。その結果、電子契約を積極的に活用する不動産会社は高い満足度を得られ、より多くの支持を得られると期待できます。

不動産業界における電子契約の事例

電子契約を導入している不動産事業者は決して多いとはいえない状況ではあるものの、例えば、「株式会社キュピ」では賃貸契約の更新手続きに電子契約を導入することによって、これまで契約締結に3週間程度の時間を要していたものが1週間に短縮。コストも4分の1に圧縮されたということです。契約書の製本作業や封入作業、さらには発送作業などの手作業も大幅に減り、人件費も抑えることにも成功しています。

テクノロジーの力によって刷新される不動産業界

電子契約という仕組みはセキュリティ上の課題や法律的な問題もあり、かつては実現が難しいとされていました。しかし、テクノロジーの進歩によって技術的な問題が解決され、それをもって法律も改正されることになりました。

まだまだ古い慣習が残る不動産業界において、一朝一夕で電子契約の仕組みが一気に広がっていくことは難しいかもしれません。しかし、そのような業界だからこそ、いち早く革新的な取り組みを行うことによって他社との差別化を図ることができ、ユーザーに対して新たな価値を提供できるのではないでしょうか。

法律的な課題もあり、全ての業務を電子契約に移行することは難しいかもしれませんが、まずは一部の業務だけでも良いので試験的に実施してみると新たな価値が見えてくるかもしれません。働き方改革にも有効な電子契約をぜひ一度検討してみてください。

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